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老後いくらあれば満足? 60歳でリタイアできる人の“枯渇しない資産”の築き方

PHPオンライン衆知 / 2023年4月3日 11時50分

FIRA60

42歳時点の貯金はゼロ。しかし独自の株式投資手法で資産を増やし、いつでも仕事を辞められる「経済的自立」を実現。昨年、定年までの任期を9年残し自主退職した、元青山学院大学大学院教授の榊原正幸氏。

同様に、経済的自立を実現し、60歳前後でお金の不安なくリタイアすることを「FIRA60」と呼んでいる。「FIRE」ではなく「FIRA60」であれば普通の会社員でも十分可能という同氏に、その達成に必要な考え方、手法を教えてもらった。

※本稿は、『THE21』2022年9月号特集「普通のサラリーマンが60歳までに『お金の自由』を手に入れる方法」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

生活費を稼ぐための労働から脱却

榊原正幸1

「私たちの世代は、60歳以降も働かなくてはいけないんだろうな……」。漠然とそう思っている40~50代の人は多いでしょう。

年金の支給開始年齢は、60歳から65歳に引き上げられ、近い将来、70歳まで引き上げられると予想されています。支給額も下がるでしょう。年金が当てにならない以上、生活費を稼ぐには、60歳以降も働く必要があるというわけです。

しかし、私自身が実感したのですが、60歳以降もバリバリ働くのは現実的ではありません。還暦を超えると体力が落ちてきますから、働くのが億劫になってきます。

それに、人生100年時代と言われていますが、60歳以降の人生の残り時間はあまり多くありません。寿命は男女共に80歳代ですが、元気に動ける健康寿命の平均は女性が75歳、男性が72歳と言われています。つまり、60歳から数えると12~15年しかないのです。

その残り15年を、生活費を稼ぐための労働に費やしたいでしょうか。趣味や旅行、ボランティアなど好きなことに時間をつかいたい。そう思いませんか。

そこでお勧めしたいのが 「FIRA(ファイラ)60」を目指すことです。FIRA60とは「Financial Independence Retire Around 60」の略。60歳前後でリタイアするための経済的自立を意味します。

要は、60歳以降に働かなくてもいいように、60歳までに「仕事を辞めても困らないだけの資産」を築くということです。

ただ、60歳までに人生に必要な生活費をすべて貯金で用意するのは極めて困難です。将来、枯渇する心配も拭えません。

理想的なのは「エターニティ」を築くこと。「自分の金融資産残高が永久に枯渇しないようなシステム」を60歳までに構築することです。

数千万円~1億円の資産を築き、それを運用すれば、配当金などの収入を継続的に得られるようになります。すると生活費のために働く必要がなくなりますし、資金が枯渇する心配も少なくなるわけです。

 

仕事・副業・運用で「エターニティ」を築く

エターニティを築くためには、60歳までに数千万円以上の資産を築くことが不可欠です。

例えば、毎月20万円、年間240万円の収入を資産運用で得るためにはいくら必要だと思いますか。年率5%で運用できたとしても、4,800万円が必要になります。年率3%だとしたら8,000万円が必要です。

こう言うと、「60歳までにそんなに資産を築くのは難しい……」と思うかもしれません。

しかし、数年程度だと厳しいですが、15年、20年かければ、数千万円どころか、1億円を超える資産を築くことができます。

具体的には、「仕事」に加えて、「資産運用」と「副業」をセットで行なうことが必要です。

60歳までは仕事を続けて、給料の一部を投資に回して、運用します。できれば、月10万円以上は投資用の資金に回します。さらに、副業をして、その稼ぎをすべて投資に回しましょう。

そして、投資で生まれた利益は、消費につかうことなく、再投資します。すると、複利の効果が働き、資産が増えるペースが上がっていきます。

例えば、100万円の元手を年平均5%で増やせたとしましょう。儲けた分を消費につかうと年間5万円ずつしか増えませんが、再投資すると、2年目は元手の105万円が110万2,500円に、3年目は115万7,625円と運用残高が増えていきます。これを15年、20年と続けることで、複利の効果を最大限に発揮でき、資産を効率よく増やせるのです。

エターニティを築くには、時間を味方につけることが欠かせません。早速、今日から行動に移しましょう。

 

「FIRA60」を達成するにはいくら必要か?

榊原正幸2

エターニティ達成の第一歩は、自分がどれぐらいの生活費を得たいかを明確にすることです。すると、60歳時点でどのくらいの資産額を築く必要があるかがわかり、具体的に何をすべきかが見えてきます。

まずは以下の金額を書き出してください。

(1) リタイア後に、自分の世帯が満足する生活費は毎月いくらか?
(2) 自分が長期的に達成可能な運用利回りは年率何%か?(※税引き後)
(3) 自分の世帯が受け取れる年金の手取り額は毎月いくらか?

(2)について現状ではわからなければ、予測で構いません。そのうえで、

{((1) ― (3))×12}÷ (2)をすると、60歳時点で必要な資産額が割り出せます。

例えば、

(1) 生活費 40万円
(2) 運用利回り 5%
(3) 年金手取り額 25万円

としたら、

{(40万円―25万円)×12}÷5%なので、必要な資産額は「3,600万円」となります。

図2を参考にして、読者の皆さんもぜひ必要な資産額を計算してみてください。どの程度の生活費が必要かわからなければ、ざっくりで構わないので、現在の生活費を現金出納帳に記録することから始めましょう。

必要な生活費は人によってまちまちですが、運用資産の総額は4,000~5,000万円では物足りなく感じるかもしれません。

読者の中には、「私はすでに50歳。10年でそこまでの資産を作るのは厳しい……」と感じた人もいるでしょう。そうした人は、遅れを取っている分、目標となる年齢を65歳や70歳に上げたり、目標資産額を理想の金額より下げたりしましょう。

 

個別株への投資でインカム&キャピタル両取り

榊原正幸3

目標資産額が決まったら、投資によって資産を増やします。

安定収入が得られるエターニティを築くためには、税引き後の利回りが5%、最低でも3%は必要です。税引き前の利回りに直すとそれぞれ約6.25%、約3.75%になります。

毎年これだけの利回りを維持するのは簡単ではありませんが、しっかり株式投資を学び続ければ、誰でもチャンスはあります。

安定した高利回りを実現できる可能性が最も高いのは、個別株に投資することです。

個別株は、毎年配当が得られる「インカムゲイン」と、値上がり後の売却益である「キャピタルゲイン」が期待できます。インカムゲインに関しては、毎年4~5%の配当が得られる銘柄も少なくありません。キャピタルゲインと合わせて、5%以上の利回りも十分可能です。

基本戦術は、安全・安心な投資先を選び、その会社の株価が一定の基準を満たして安くなったら購入すること。そのまま保有し続けて配当を得ます。そして、一定の基準を満たして値上がりしたら売却して、売却益を得ましょう。

まずは銘柄選びについてです。株式投資というと、「経営者がテレビによく出ていて、会社が成長しそうだから」「最近、ヒット商品が出たから」といったイメージで銘柄選びをする人がいます。

しかし、そうした定性的な要素は必ずしも株価を動かすとは限りません。それを基準に選ぶと、当たるも八卦当たらぬも八卦のギャンブル的になり、投資の確実性が下がります。

また「これが伸びそう」とあなたが思ったなら、他の人も考えているものです。

例えば、新型コロナの初期の頃に「マスクが売れるからマスクの会社が伸びる」「ワクチンの会社が伸びる」と考えた人はたくさんいました。そうした銘柄はちょっとでも買うタイミングが遅れると、高値で買ってしまう可能性が大です。

失敗をしないためには「定量分析」で銘柄を選びましょう。定量分析とは、データに基づいて銘柄の良しあしを判断すること。

具体的には、企業の経営成績や財政状態などを分析するファンダメンタル分析や、チャートの値動きを見て買い時・売り時を見定めるテクニカル分析のことです。

定量分析をすれば、その銘柄が「買い」かどうか、客観的な判断ができます。定性分析だけのときよりも、失敗する確率が一段と下がります。

ちなみに私の場合は、判断基準の9割が定量分析です。「不祥事を起こした」「少子化が進んでいるからこの業種は難しい」といった定性的な見方も多少はしますが、1割程度です。

 

「利回り5%以上の銘柄」を選ぶ方法

榊原正幸4

長期保有をすることを想定すると、銘柄選びは、「財務的に安全かつ健全な企業に絞ること」が鉄則です。

東証プライム市場に上場している「国際優良企業」か「財務優良企業」を選びましょう。

図4のような条件のある「国際優良企業」「財務優良企業」のどちらかに当てはまる銘柄は200以上あるので、ぜひ調べてみてください。

その中でも、安定して配当の高い銘柄を選ぶとよいでしょう。配当が高いかどうかは「配当利回り」をチェックします。配当利回りとは、株価に対してどのぐらいの配当が支払われるかを示した率です。

例えば、株価が1,000円で配当が30円なら、配当利回りは3%となります。配当利回りが3~4%台の銘柄はたくさんありますし、5%以上も珍しくありません。

もっとも、いくら優良企業でも、高値のときに買えば、配当利回りが低く、売却益も期待できなくなります。割安になるのを待ちましょう。毎日、大量の銘柄をウォッチするのは難しいので、3~7銘柄に絞ります。

割安かどうかを判断するには、以下の基準で「目標株価」を決めてチェックしましょう。

まずは、ローソク足の週足チャートを過去5年間ほど見ながら、「過去5年間に2~5回程度示現している安値圏」を探し、実際に買えそうな範囲の安値を「目標株価」にします。

ただし、目標株価は、昨年来安値より少しだけ高い株価であることを満たし、配当利回りが3.75%以上になる株価にしてください。それぐらい利回りがないと、投資をする旨味がありません。

 

分散投資を基本に最大7銘柄まで

株式投資をするときの鉄則は、複数の銘柄に分散投資をすることです。1つの銘柄に資金を集中投下すると、リスクが上がります。

ただ、投資する銘柄数をあまり増やしすぎると目が行き届かなくなるので、多くても7銘柄にしましょう。目標株価に達した銘柄を1つずつ買い進めてください。

株式の分散投資をするには、ある程度まとまった元手が必要です。私が勧める優良企業は最低でも数十万円ないと買えない銘柄ばかりですし、そもそも、1銘柄に何十万円、何百万円と投資しないと、エターニティは築けません。

株式投資を始めるときは、投資で自由に使ってよい資金を最低でも150~200万円は用意しましょう。50代ならば400~500万円は欲しいところです。そこまで貯まっていなければ、まずはミニ株投資で経験を積みながら、元手を貯めることに専念しましょう。

 

「副業×運用」を勉強して最大化しよう

エターニティを確実に作るためには、投資と共に、副業を行ないましょう。月数万円でも副業で稼げれば、かなり資産形成の足しになります。

仕事はネットビジネスでも何でも構いませんが、最も重要なのは「イヤではない仕事」をすることです。収入が良さそうでも本業の忙しい合間を縫ってイヤな副業をするのは続きません。

また、副業は、60歳を過ぎて本業を退職したあとの「ヒマ対策」になります。老後で最もキツイのはお金がないことではなく「ヒマなこと」です。

しかし、副業をしていれば、ヒマになるのを防げます。60歳過ぎから新たな副業を探すのはなかなかハードルが高いので、副業もまた、40~50代の頃から準備しておきましょう。

以上で「FIRA60」を実現する方法をお伝えしてきましたが、このような話を聞いても、ほとんどの人は投資や副業を始めようとはしません。

しかし、それで良かったのは20世紀の話。21世紀は、投資や副業をしなければ、老後の資金を作るのは不可能です。

「副業といってもすることがない」「投資は難しいからね」と逃げていては明るい老後が迎えられません。幸い、投資や副業は、特殊な能力がなくても、勉強すれば誰でも成功をつかめます。ぜひ勇気を持って挑戦してください。

 

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