最新記事

災害報道

そのとき、記者は......逃げた<全文>

2011年4月5日(火)13時40分
横田 孝(本誌編集長/国際版東京特派員)、山田敏弘(本誌記者)

 実際、それが現実になっている。津波や原発事故の派手な部分だけがクローズアップされ、被災者の切実な状況は二の次だ。今も行方が分からない家族を必死に捜している被災者や、高齢の避難民に十分な医療が行き渡っていないこと、復興に向けた様子などは、ほとんど報じられていない。

 もちろん、例外もある。かつて日本に関してステレオタイプな記事を掲載し続けた米ニューヨーク・タイムズ紙は記者を増員し、今も被災地から良質な報道を続けている。また、一部外国人記者が日本から退避するなか、パンク寸前の東京支局を応援しようと自ら志願して日本に駆け付けた記者もいる。

 しかし、「チェルノブイリ級」とあおられたことで、日本全体が風評被害を受けた事実に変わりはない。世界各国が放射能を恐れるあまり、貨物船が東京や横浜に寄港することを避けたり、被害状況の現地調査を行う専門家が現地入りできないケースもあり、復興への妨げとなっている。まさに、メディアによる「二次的災害」だ。

 東日本大震災という試練に、日本は耐えている。外国メディアは、お世辞にもそうとは言えない。

[2011年4月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ロシア著名ブロガー爆死で女を逮捕、過去に侵攻反対で

ビジネス

HSBC、アジア事業分離改めて反対 香港個人株主に

ビジネス

再送-インタビュー:米国戦略「緩めず」 事業単位の

ワールド

欧州委員長、5─7日に訪中 EUとの協力に焦点=中

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析

2023年4月 4日号(3/28発売)

戦争の「天王山」/ウクライナ戦車旅団/プーチンの正体......。日本有数のロシア通である2人の特別対談・前編

メールマガジンのご登録はこちらから。

メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング

  • 1

    仲間を襲うニシキヘビにたかるマングースの群れ、皮膚をも剥ぎ取る

  • 2

    生地越しにバストトップが... エムラタ、ばっさりショートに「透け過ぎ」衣装でベッドにごろり

  • 3

    19歳のロシア女性「ヒグマが私を食べている!」と実況 人肉の味は親熊から仔熊に引き継がれる

  • 4

    泣いて助けを求めても、撮影を続ける少年たち...流行…

  • 5

    北朝鮮軍の「エロい」訓練動画に世界が困惑!

  • 6

    「見られる価値のない体なんてない」 車椅子に乗った…

  • 7

    金融のドミノ倒し、次はドイツ銀行か

  • 8

    女性兵士50人が犠牲に...北朝鮮軍が動揺した「鬼畜事…

  • 9

    大丈夫? 見えてない? テイラー・スウィフトのライ…

  • 10

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中