最近、遠方にある機械を使って、人間の自由意思に介入するというテーマが頻出しています。この機械の基本特許は、米国特許3951134号、米国特許7150715号になります。
この機械は、対人レーダーの一種であり、同時に自動追尾レーダーの一種になるのですが、対象者の頭部に電磁波ビーム、マイクロ波ビームを照射することになります。
この電磁波ビーム、マイクロ波ビームは、特定の一人にのみ照射されることが求められ、その隣に人がいるときであっても、隣の人に照射されないことが求められます。
言い換えると、電磁波ビーム、マイクロ波ビームの直径は人の頭部より遥かに小さくなることが求められるのです。直径1cm以下とか、直径1mm以下ということです。
ここで、レーダーの基本に関する復習になるのですが、対人レーダーであっても、自動追尾レーダーであっても、それ以外のレーダーであっても、レーダーでは、送信機から特定の一つの方向にのみ電波を発射します。その方向に対象があれば、電波が対象で反射することになり、レーダーの受信機で反射波を受信します。送信機から電波を発射してから、受信機が電波を受信するまでの時間を計測し、この時間から距離を求めます。
例えば、下記の図は東芝の特許公開公報から引用していますが、ヒトの頭部に照射されたマイクロ波が反射するときの模式図になります。
また、レーダーでは電波の直進性を利用しているので、マイクロ波のような直進性のある電波がレーダーに用いられます。
ここで、送信機を中心とする円を描き、北方向が0度であり、東方向が90度であり、南方向が180度であり、西方向が270度とします。
レーダーの送信機からマイクロ波を北方向に発射して、1ミリ秒(1秒の1000分の1の単位)経過後にレーダーの受信機が反射波を受信したとき、電波は往復で300キロ飛翔しています。ここで、電波は1秒で30万キロ、進むとしています。
往復で300キロとなると、片道で150キロになるので、北方向に150キロのところになにかがあるが分かります。
一方、日常生活で身近な電波となると、テレビ放送や携帯電話に使われている電波になりますが、これらの電波は特定の一つの方向にのみ発射するという使い方はしていません。
東京スカイツリーからテレビ放送に用いられるマイクロ波が送信されているのですが、このマイクロ波は、東京都全域、神奈川県東部、秩父以外の埼玉県、南房総以外の千葉県などに届いています。要するに、これらの地域では、地上デジタル放送が視聴できるということです。
東京スカイツリーを中心として、360度、どの方向にもマイクロ波が送信されているのです。
携帯電話の基地局も同様です。基地局を中心として、360度、どの方向にもマイクロ波が送信されています。
さて、一つの方向にのみマイクロ波を発射するとともに、このマイクロ波ビームを細くするのには、どうしたらよいかというと、実は下記の文献に詳述されています。
小池誠,マイクロ波聴覚効果を応用したマイクロ波通信におけるマイクロ波ビームの形成,情報処理学会研究報告,vol. 2018-MUS-119, no. 35, pp. 1-8, 2018年6月.
この文献は、情報処理学会の電子図書館から無料でダウンロードできますので、興味がある読者は閲覧ください。
ドメインネーム中のipsjは情報処理学会Information Processing Society of Japanの頭文字になります。