『舞いあがれ!』葵揚がIWAKURAのピンチを救う 浩太が残した“人”という財産

『舞いあがれ!』葵揚が会社のピンチを救う

 舞(福原遥)が持ち帰ってきたのは新規受注の報告だった。『舞いあがれ!』(NHK総合)第75話ではIWAKURAがネジの設計に取り組む。

 素人の舞が営業に励む様子を遠巻きに見ていたIWAKURAの社員たち。期待と不安が入り混じる中で舞の帰りを待っていたが、知らせを聞いて喜びが弾けた。浩太(高橋克典)の急逝から続く不安な日々がようやく好転の兆しを見せた。

 しかし、問題はここからだった。IWAKURAでネジの設計ができるのは亡くなった浩太と退社した結城(葵揚)だけ。威勢よく名乗りを上げた尾藤(中村凛太郎)の金型は使い物にならず、残り1カ月の納期に一同は頭を抱える。悩んだ末、舞は結城に電話をかける。「章兄ちゃん、助けてもらえませんか」。結城が姿を見せたのは、日も落ちて暗くなった時刻だった。

 最初に発した「ごめんな」に結城の思いが凝縮されていた。直接的には舞の電話に応答せず、待ち合わせ場所の「うめづ」に行かなかったことを指しているが、経営が傾く中でIWAKURAを去ったことや浩太の力になれなかったことを詫びているように見えた。生え抜きの職人である結城はIWAKURAの窮状を目にして、ひそかに心を痛めていたに違いない。「この試作、俺に任してもろてよろしですか?」と自ら申し出た。

 めぐみ(永作博美)としては結城に手伝ってもらえるのはありがたい限りだが、そうは言っても結城は他社の人間。簡単に首を縦に振るわけにはいかない。その壁を乗り越えたのは結城の熱意だった。結城も加わり有志で試作品の設計に取り組む社内には、浩太がいた時のような一体感が感じられた。

 結城の献身を美談として済ませることはできない。受注した製品情報を競争相手に渡すことは技術流出の危険があるし、ライバル会社で働くことは利益相反になりかねない。かなりハードルが高いのだが、そのために必要な手続を結城はクリアしたと思われる。勤め先の了承を得て、終業後、無償のボランティアという立場を貫くことで義理も通した。そうまでして結城はIWAKURAの力になりたかったのだ。

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