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バ〇オRe4、周回のために攻略とか動画を完全解禁しましたけど、また色々と見えてきて面白いですね

その代わり連載書く時間がどんどん削れていく……

第七部 偽りの仮面
第百七十四話 仮面の向こう


「やぁ。浮かない顔をしているね、フィン」

「アイン王子……」


 フィンが顔を上げると、やたらとさわやかな顔をしたアイン王子がこちらに近寄ってくるところだった。


「また、レクスたちのことを考えているのかい?」

「それは……まあ」


 レクスは、フィンの師匠で恩人だ。

 フィンとしては、恩人のレクスのために隣で戦うつもりだったのだけれど……。


(レクスさん、三週間で帰ってくるって言ってたのになぁ)


 向かった先で予想外のことが起こったらしく、もう何ヶ月も帰ってきていない。

 アイン王子の護衛も重要なのは分かっているけれど、フィンとしては一緒についていきたかった。


(……まあ、剣士としては王子から学ぶことは多くて助かるんだけど)


 単純な剣術の才能で言えば、師匠のレクスよりも、そして今は亡きフィンの兄であるルインよりも上だろう。

 その王子の教えを乞うことが出来ているので、フィンの剣の腕も数ヶ月前と比べるとずいぶんと上がった。


(ルインの代わりに世界一の剣士になる、という目標を掲げていた頃なら、それも嬉しかっただろうけれど……)


 もう自由に生きていい、となってから望みが叶うなんて、なんとも上手くいかないものだ、とフィンは思う。

 正直今は剣術を学ぶより、師匠と一緒に冒険をしたかった、というのが本音だった。


(王子も完全にわたしを当てにして、護衛の人数絞っちゃうしなぁ)


 一国の王子が外を歩くのに、今の護衛はフィンを含めてたったの三人。

 ほか二人も凄腕とはいえ、とても王族の護衛にふさわしい人数だとは思えない。


(……まあ、気持ちはわかるけど。王子を狙った襲撃なんて、結局全然なかったし)


 レクスさんは、暗殺者ギルドが王子を狙っている可能性については話していたが、やっぱり杞憂だったんだろう。

 そんな風に、フィンが判断した、矢先だった。


 アイン王子の背後に、光るものが見えた。


「アイン王子!!」


 叫びながら前へ飛び出すとアイン王子を背後に庇い、放たれた白光を弾く。

 キィン、と耳に響く音と共に地面に落ちたのは、鋭く尖ったナイフだった。


 何とか防げたとホッと息をついた直後、


「フィン!!」


 アイン王子の鋭い声。

 その視線の先を見ると、ぬるりと地面から浮かび上がるように、仮面をつけた黒装束の人影が現れる。



「――暗殺者」



 それも、一人ではない。

 二人、三人、四人……。


 どこに隠れていたのか、前後を挟むように十人を超える黒装束がアインとフィンの周りを取り囲んでいた。


「……まいったね。完全に囲まれているようだ」


 アイン王子は小さく嘆息をして、それが戦いの合図になった。

 四方八方から、暗殺者が一斉に向かってくる。


「ふっ!」


 気合の声と共に、向かってくる飛び道具を一刀のもとに切り伏せると、時間差で迫ってきた暗殺者たちに応戦する。


(こいつら、なかなかやる!)


 王都にいる冒険者のトップ層と比べても遜色のない実力。

 それに……。


「くっ! 邪魔を……」


 何よりも、連携が上手い。


 膂力では完全にフィンが勝っているため、攻撃を押し返して隙を作るところまでは出来る。

 なのにそういう状況になると、すぐに別の誰かが横から攻撃をして牽制をしてくるのだ。


「大丈夫ですか、アイン王子!」

「問題はない。……けど、これじゃきりがないね」


 それに、フィンはアイン王子を守るため、深追いは出来ない。

 それが膠着した戦況を作り出していた。


(ロスリット様がいれば……)


 一瞬だけこの場にいないアイン王子の婚約者の姿を脳裏に思い浮かべるが、すぐに首を振った。

 今はないものねだりをするよりも、身体を動かすべき時だ。


 そして、そういった戦術においてはアイン王子は優秀で、誰よりも果断だった。


「守るだけじゃ勝てないね。遊撃は任せたよ」

「それは……いえ、分かりました!」


 すぐさま下された決断に、ほんのわずかな逡巡のあとに決断する。

 アイン王子の実力なら、この程度の暗殺者にすぐに負けることはない。


 だから自分が、状況を打開する!



「――〈スティンガー〉!」



 そんな思いで、王子の護衛を放棄して前に出る。

 その一撃は、初めて暗殺者の身体を捉えた。


(まず一人!)


 次に標的としたのは、三人一塊となってフィンに向かってこようとしている暗殺者たち。


「はあぁぁぁ!」


 三対一。

 正面からの戦いでは分が悪い。


 普通なら、そう考えるところ。

 けれど……。



「――〈バーニング・レイブ〉!!」



 フィンは人数差など関係ないとばかりに必殺の技を放つ。


「なぁっ!?」


 対峙する暗殺者の一人が、思わずと言ったように呻きのような声をあげる。

 だが、それも無理もない。


〈マニュアルアーツ〉によって加速した連撃は、三対一の人数差を覆して手数でも威力でも圧倒。

 三人の暗殺者を正面から切り伏せ、ねじ伏せてしまったのだ。


(これで、四!)


 瞬く間に四人の暗殺者を倒したことで、包囲に穴が出来る。

 同時に、暗殺者たちの圧力も少し減じたように見えた。


(王子は……!)


 一息を入れつつ王子の姿を捜すと、彼は一対一で暗殺者の一人と斬り合っているところだった。


(あの暗殺者、強い!)


 暗殺者は全員同じ格好、同じ仮面をつけているため、その顔は見れない。

 ただ、その暗殺者は襲ってきた者たちの中でもひときわ小柄で、ひときわ異質だった。


「――ふっ!」


 小さな呼気と共に、小柄な暗殺者が躍る様に短剣をひらめかせ、それをアイン王子が受ける。


(あの王子と互角、だなんて……!)


 全てにおいて高水準の力を持ち、〈マニュアルアーツ〉まで使いこなすアイン王子は、生半可な相手ではない。

 そんな王子と渡り合うのだから、その小柄な暗殺者の実力は強力な暗殺者集団の中でも、一線を画していると言えた。


「――これで、五人!」


 一瞬だけ視線を王子に向けたのを隙と見たのか、背後から迫ってきた暗殺者をさらにもう一人切り伏せると、王子と小柄な暗殺者の戦いも決着がつくところだった。



「なかなかやるね。ただ……〈稲妻斬り〉〈一閃〉!」



 王子がずっと練習し続けた大技〈オーバーアーツ〉を利用した連続アーツによって、暗殺者のナイフが弾かれる。


「僕も、昔の僕じゃないんだ。……悪いね」


 勝負あり、だ。

 新たにもう一人の暗殺者を無力化しながら、フィンが心の中で息をついた、その時、




 ――カチャリ。




 武器を奪われた暗殺者が、その右手を自らの仮面にかけた。


(仮面を外す? でも、そんなことをしたって……)


 フィンも、アイン王子も、そんな行為に何かの意味があるとは思えなかった。

 けれど、小柄な暗殺者がその仮面を外し、素顔を晒した瞬間、



「なっ!? 君は……」



 明らかに優位を取っていたはずのアイン王子の動きが、完全に止まる。

 それは、戦場にあって絶対に晒してはならない決定的な隙。


(――アイン王子!)


 フィンは明らかに尋常でない様子のアイン王子に驚き、助けに入ろうとした。

 その、はずだった。



(身体が、動かない!?)



 まるで、身体が何かに縫い付けられたかのように。

 まるで、運命に干渉を拒まれているかのように。


 フィンの足は、動かない。

 そして、



「――さようなら、兄さん」



 アイン王子の胸に隠しナイフが深々と刺さり、その身体がくずおれていくその姿を、フィンはずっと、何も出来ずに見守っていた。

 あたかも演劇を見守る観客のように、ずっと……。


 呪縛が解けたのは、全てが終わったその直後だった。


「そん、な……」


 王子が倒れた瞬間、暗殺者たちはもはや用は済んだとばかりに、未練なくその場を立ち去っていく。


「ま、待て!」


 我に返ったフィンが駆け寄った瞬間、王子を殺した暗殺者が、振り向いた。


「――っ!」


 仮面を失った、暗殺者の「少年」の顔。

 そこには、地面に転がった仮面と全く同じ、いびつな笑顔が浮かんでいた。



 ※ ※ ※



「王子!」


 フィンが駆け寄ると、王子は口から血を流しながら、気弱に笑った。


「は、は……。ちょっと、ゆだん……してしまった、よ」

「しゃべらないで! 今、ポーションを!」


 明かな致命傷。

 それでもあきらめきれずに必死に治療しようとするフィンを、アインは手で制した。


「いい、んだ。だい、じょうぶだよ。もう、すぐ……。もうすぐ、だ」

「な、何を言って……」


 怪我で混乱しているのか、意味の分からないことを言うアインに、フィンはなぜか気圧される。

 けれどとにかく治療をと、ポーションを手にしたフィンの手を、アインは狂人の力で抑えた。


 そして、必死の声で、必死の呼吸で、何かを訴える。


「おもい、だせ。ひづけ、だ」

「ひづけ……日付?」


 アイン王子の言っていることは理解出来なかった。

 けれど、なぜだか重要なことを言っていると、心が理解していた。


 そして……。



「きょうは、何の日、だ?」



 その言葉で、察しの悪いフィンも、ようやく気が付いた。


 ああ、そうだ。

 今日は、四月一日。


 つまり、



「――これ、エイプリルフールのドッキリだ!」




ということで、いつものアレでした!



詳しいことは次の話の前書きに書きますが、今回は去年の雪辱戦です!

去年よりもたくさんの人が引っかかってもらえてたら嬉しいです!!


今回は準備時間足りなくて凝った仕掛けとか作れなかったのがちょっと心残りですが、今年もノルマを果たせてホッとしました!

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