少女漫画誌「ザ マーガレット」休刊「一定の役割を終えた」の真意  新人発表の「場」として「雑誌」は終焉?

少女漫画誌「ザ マーガレット」休刊

「ザ マーガレット」現在の発行部数は約1万部

  集英社が刊行する漫画雑誌「ザ マーガレット」が、6月23日発売の夏号をもって休刊することが決まり、41年の歴史に幕を下ろす。

  同誌は1982年に創刊され、当初は不定期刊行であったが、現在は3月、6月、9月、12月の24日に発売されている。

 編集部の公式Twitterによれば、当初は新人作家育成を目的とした読み切り中心の漫画雑誌として創刊され、これまで光り輝く若い才能を輩出してきたものの、「昨今の作品発表の場の多岐化」「プラットフォームの多様化」によって「一定の役割を終えた」と判断された。

 近年は村田真優の大ヒット作『ハニーレモンソーダ』の番外編などが掲載されていたが、雑誌の発行部数は伸び悩んでいた。日本雑誌協会が発表したデータ(印刷証明付部数)によれば、2022年10月~12月の平均発行部数は約1万部であった。

発行部数が激減した少女漫画雑誌

 昨今は少女漫画雑誌から「きらら」系などの萌え漫画雑誌に移籍する漫画家が目立つ。『ぼっち・ざ・ろっく!』が歴史的ヒットとなったはまじあきは、そうした漫画家の代表といえる。

 対して、少女漫画界には少年漫画などと比較すれば、目立ったヒットが出ていないことが気がかりである。メディアミックスが行われている例も少ない。アニメ化がされる可能性が他より低いとなれば、新人から魅力に乏しいと感じられても仕方ないのではないか。

 ある高名な漫画家がツイートしていたが、ここ数年、漫画家の志望者が減少していると言われる。漫画はイラストなどと比較して制作が面倒であることや、スマホゲーム業界など、絵が達者な人にとって魅力的な業界が増えたことなども要因とされる。

 そんな状況下にあって、少女漫画界は編集者や出版社が魅力を打ち出していかなければ、新人が集まらなくなるという新たな問題が生まれる可能性がある。

 なお、少女漫画雑誌の2022年10月~12月の平均発行部数は以下のとおりである(いずれも日本雑誌協会発表)。

ちゃお(小学館) 15万5000部
りぼん(集英社) 13万部
LaLa(白泉社) 6万3333部
花とゆめ(白泉社) 5万9000部
別冊マーガレット(集英社) 4万5000部
なかよし(講談社) 4万4500部
別冊フレンド(講談社) 2万2667部
Sho−Comi(小学館) 2万667部
Cheese!(小学館) 1万9333部
LaLa DX(白泉社) 1万2000部
ベツコミ(小学館) 1万1667
マーガレット(集英社) 1万1000部
ザ マーガレット(集英社) 1万部

 この発行部数を見て、衝撃を受けた読者も多いのではないか。かつて『りぼん』は250万部、『なかよし』は200万部と謳われていた時代があったのだ。現在は全盛期には遠く及ばない発行部数になっている。

 いつ休刊になってもおかしくない雑誌が何誌もあることから、少女漫画界は極めて深刻な状況と言っていい。

少女漫画界の未来は明るいのか?

 今回の「ザ マーガレット」の休刊は、出口が見えない少女漫画界の低調傾向を象徴する出来事と言っていい。既に有名な大御所の漫画家は、作品の知名度で単行本が売れるため、実際は雑誌がなくなっても影響がないというケースが多いのだが、新人となれば話は別である。

 新人にとって、貴重な発表の場が失われることは大きなダメージといえる。出版社は紙媒体からWEBに注力するものの、雑誌はヒット作が掲載されているおかげで新人も注目してもらえるため、宣伝と修行の場としてふさわしい。従来の漫画界は、こうした形で大御所の恩恵を新人が受け、次なるヒット作が生み出されるという好循環が生まれてきた。

 この成功方程式が消滅しつつあり、漫画界は雑誌の在り方、新人の育成の仕方を根本から考え直す時期に来ているのではないだろうか。

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