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コラム

“中性脂肪”はなぜ増える?理想的な数値に近づけるための「食事の摂り方」を医師に聞きました

中性脂肪が増えると肥満に繋がっていくだけではなく、さまざまな病気を引き起こしてしまう危険性も秘めています。だからこそ、そもそも「中性脂肪」がどういったもので、どうすれば理想的な数値に近づけることができるのかは知っておいた方がいいかもしれません。そこで今回は、あんどう内科クリニックの安藤大樹院長に、中性脂肪が増える原因や減らすための食事の摂り方などについて聞きました。

「中性脂肪」の正体とは…

――そもそも「中性脂肪」とは、どういったものなのでしょうか?

血液中の脂肪は「中性脂肪」の他に、「コレステロール」「リン脂質」「遊離脂肪酸」の3つが存在します。中性脂肪は体内脂肪の大半を占め、食品に含まれる油脂の大部分も占めています。そのため、「中性脂肪≒脂肪」と考えて問題ありません。

――中性脂肪の数値が高いということは、体内脂肪が多いということなのですか?

中性脂肪は体を動かすエネルギー源を貯蔵するもので、車の“ガソリン”のようなイメージです。もちろん焼肉や天ぷらなどの油物を食べると中性脂肪は上がりますが、それだけではなく、糖質やたんぱく質も余れば中性脂肪になります。つまりなんでもかんでも余れば中性脂肪になってしまうのです。

――なんでもかんでもですか?

中性脂肪から「皮下脂肪」と「内臓脂肪」が作られます。皮下脂肪は皮膚のすぐ下にある脂肪で、外気との温度調節や外部からの衝撃緩和といった体を守る役割もあります。内臓脂肪は内臓周りにある脂肪で、外部の衝撃から内臓を守る役割があります。そして「血液中の脂肪=中性脂肪」。この3つの脂肪はエネルギーの取り出しやすさが異なります。

――取り出しやすさの違いとは?

エネルギー源として最も扱いやすいのが中性脂肪です。血液中にあるため、必要になったときにすぐ取り出せます。次に取り出しやすいのが内臓脂肪。すぐに蓄積されるのが難点ですが、消費もしやすいです。最も取り出しにくいのが皮下脂肪。皮下脂肪は内臓脂肪に比べて落としにくいと言われるのはこのためです。

中性脂肪が増えることでの懸念点

――中性脂肪が増えてしまう原因とは?

中性脂肪は英語で「トリグリセリド」と言い、中性脂肪は食事中の脂肪が血液中に取り入れられた「外因性トリグリセリド」と、一度肝臓に取り込まれた脂肪が再び血液中に分泌された「内因性トリグリセリド」の2つに分類されます。要するに 「消費エネルギーより多くエネルギーを摂ると、外から入ってきた脂肪分への肝臓処理が追いつかずに中性脂肪が増える」ということです。

――まさに肥満へと繋がっていく流れですね。

余った中性脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられ、 肥満や生活習慣病(脳血管障害、心疾患、糖尿病、脂質異常症、ガンなど)の原因になります。日本人は欧米人に比べてエネルギー効率が悪く、「脂肪を溜め込みやすい体質」の人が多いと言われています。

――中性脂肪の数値が上がると、どういった懸念が生じますか?

中性脂肪が過剰になると内臓脂肪や皮下脂肪として貯蔵され肥満になります。肥満は高血圧や糖尿病の原因になりますし、肝臓に蓄積されると脂肪肝になります。また、中性脂肪が増えすぎると、「分配役」の LDL コレステロールが増えて「回収役」の HDL コレステロールが減ります。その結果、血液中に脂質が溜まり、血液がドロドロになってしまいます。

魚や食物繊維を食事に摂り入れる

――中性脂肪を減らすための食事の摂り方について教えてください。

魚介類を多く摂ることです。魚にはドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)という良質な油が多く含まれます。これらの油は中性脂肪を下げるだけでなく、血液をサラサラにする効果もあります。特に多く含むのはイワシやサバなどの青魚。焼き魚よりも刺身や煮魚の方が DHA や EPA を効率よく摂取できますし、サバ缶詰などはさらに効果的です。

――魚介類以外で意識して摂取した方がいいものは?

食物繊維を多く摂ることも大切です。食物繊維は腸内でコレステロールや中性脂肪が吸収されるのを妨げます。海藻類、キノコ類、野菜などに多く含まれますが、特に海藻類や豆類、おくらや納豆などのネバネバ系に多く含まれる水溶性食物繊維はコレステロールを下げる働きもあり、さらに有効です。

――たんぱく質はどうでしょうか?

植物性たんぱく質には血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。豆類(納豆、豆腐、そら 豆、えんどう豆など)が中心ですが、アスパラガス、ブロッコリー、枝豆、芽キャベツなどの野菜類、とうもろこし、アボカド、バナナなどの穀類なども摂り入れましょう。

――糖質はやはり減らした方がいい?

もちろん糖質・脂質の摂り過ぎは肥満症に繋がりますし、中性脂肪の上昇も招きます。しかし、糖質は人間の活動エネルギー源としてなくてはならないもの。脂質はエネルギーを蓄積するという大切な役割があります。良質な脂質であるDHAやEPAは、血管をしなやかに保って血液をサラサラにする効果もあります。

――食事の摂り方は本当に大切なのですね。

食べ過ぎや偏食は中性脂肪が上昇する原因になります。ただ、極端な食事制限はかえって健康によくないので要注意。どちらも制限しすぎず、「質の良いものを適度に摂る」ことが重要です。食事だけではなく運動も必要です。理想的なのは筋トレと有酸素運動の組み合わせ。筋トレ→有酸素運動という流れで運動をし、理想的な食生活を送れば、中性脂肪の数値も理想的なものに近づくでしょう。

(TEXT:山田周平、メイン画像:Adobe Stock

安藤大樹先生

2004年藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業。同年藤田保健衛生大学病院(現・藤田医科大学病院)での初期研修を経て、2006年に一般内科に入局。2007年より医局長、2011年より総合診療内科/救急総合内科医局長を務める。2015年に岐阜市民病院総合診療・リウマチ膠原(こうげん)病センターに医員として着任。そして、2017年よりあんどう内科クリニック院長として治療に当たる。