次亜塩素酸水の栄枯盛衰
次亜塩素酸水は皆さんご存じの通り、SARS-CoV2消毒に対するアルコールが極度に入手困難になってしまったため、2月頃から急にクローズアップされることになった。
謎の業者達が毎日のように医院にFAXを送ってきたし、業者から提供を受けた自治体が住民に配布し、それを実績として利用してさらに宣伝をかける業者達が続出した。明らかに暴利といえるような値段で売り込みをかけており、かなり儲けた業者もあっただろう。
また、次亜塩素酸水の空間噴霧が店舗や医療機関で行われたが、健康被害を訴える人がSNSに散見されるようになった。
twitterでも次亜塩素酸水に肯定的な人達と否定的な人達でバトルが起こったりした。私も巻き込まれ、あげくに次亜塩素酸水に心酔する人達を次亜酔と名付けた。
その後、厚労省、NITE、JAROなど色々なところから次亜塩素酸水に対する使用に対する注意や条件が指定されるようになり、次亜塩素酸水ビジネスは7月ぐらいに急速に失速していった感がある。
次亜塩素酸水自体は規格が曖昧であり、電気分解して作るものが一般的に次亜塩素酸水という認識であるはずだが、次亜塩素酸ナトリウムを中和することにより製作する次亜塩素酸水もどきもあったりとわけがわからない。
電解した次亜塩素酸水は希釈使用はできないはずだが、希釈して使用できる次亜塩素酸水という触れ込みの業者も多数存在した。これも規格が明確ではないためだろう。
当ブログでは、当初より次亜塩素酸水は規定が甘く、また濃度が時間経過で低下する事や掛け流すように多量に使わないといけない事からSARS-CoV2対策としての使用に否定的な立場を取ってきた。
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関係省庁が結論づけた以下の使用法を読んで、それでもアルコールより次亜塩素酸水を使いたいと思うかだが、自分は使いたいととても思えない。アルコールでええやん。
「次亜塩素酸水」を拭き掃除に使用する際には、目に見える汚れをあらかじめ落とした上で、有効塩素濃度が 80ppm以上の「次亜塩素酸水」で対象となる物の表面をヒタヒタに濡らし、少し(20 秒以上)時間をおき、きれいな布やペーパーで拭き取るとされています。さらに、元の汚れがひどい場合などは有効塩素濃度が 200ppm 以上のものを使うことや、希釈用の製品は正しく希釈して使うこと、濃度が高いものを使う場合は直接手をふれずにゴム手袋等を着用することとされています。また、消毒効果を有する濃度の「次亜塩素酸水」を吸いこむことは、推奨できなません。
なお、「次亜塩素酸水」として販売されている商品の多くは医薬部外品や化粧品ではなく、物の除菌を目的としたものです。これらを手指や口腔等の人体の消毒・殺菌に使用することはできません。
国民生活センターがダメ押し
そして12/24に国民生活センターが次亜塩素酸水について発表した。
国民生活センターは消費者からのクレームや相談などから内容を調査したりする機関である。ある程度の数の相談が集まらないとこういった内容の精査や発表は行われないが、今回は498件の相談があったようだ。
サイトには概略が記載されており、詳細は以下のPDFとなる
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20201224_1.pdf
国民生活センターは苦情を元に市販されている次亜塩素酸水15銘柄に関してテストを行った。
有効塩素濃度
NITEはin vitroではpH6.5以下で35ppm以上がSARS-CoV2に有効であるとしているがかなりの量が必要だったため、おそらく実際物の消毒には80ppm以上が推奨されていると考えられる。
有効塩素濃度だが、製品に表示された濃度と近似した商品の方が少ない。
塩素濃度が検査時に有効濃度に明らかに足りていなかった8,9あたりも問題だが、5,6のように表示値よりも高くなっているのも問題だろう。12の1回目は5月につくったものを9月にテストしたら全然塩素なかったよ、ということであり、消費期限が記載されているべきだが、消費期限は殆どの商品で記載されていない。あろうことか製造年月日すら記載されていない商品もある。
pH
pHもかなり滅茶苦茶な商品がある。7などは弱酸性、pH6.0~6.8と記載されていたが、2回目の測定では3.0である。また12もpH6.0±0.5と記載されているのに1回目の計測では3.6だった。弱酸性なら手につけてもそれほど問題ないだろうが、3.0はそういうわけにはいかないだろう。またNITEが規定するpH6.5以下を満たしていない商品も認められる。
手指、口腔への使用表示
手指や口腔への使用が表示されているかについてだが、ほぼ全ての商品で手指や肌について安全、安心的な文句がウェブサイトに記載されていた。
口腔に関してはそれほどでもないが、10や11に表記が認められる。
pH3.0で手指消毒したらそりゃ痛くなりますな。
まとめ
今回調査した15種類だけでも塩素濃度やpHはてんでバラバラで、中には明らかにおかしい商品がある。それなのに、ほぼ全ての商品で手指、皮膚にも使用できると訴えており、pHが低い商品を購入使用してしまった場合はトラブル必至だろう。
また、NITEが規定したSARS-CoV2に有効である濃度、pHではない商品が多かったのも事実であり、あまたある業者から適正な商品を選ぶのは至難の業なのかもしれない。
国民生活センターは以下の様に消費者にアドバイスしている。
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「次亜塩素酸水」は、有効塩素濃度が購入時点で表示の濃度と大きく異なる場合があることを知っておきましょう
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「次亜塩素酸水」を購入、使用する際には、有効塩素濃度やpH、使用期限、使用方法などの表示をよく確認するようにしましょう
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物に付着した新型コロナウイルスの消毒や除菌には「次亜塩素酸水」や一定濃度のアルコール、界面活性剤等、さまざまな選択肢があります。目的に合ったものを適切に使いましょう
他の商品使えって遠回しにいってませんかね?