「私は韓国の合同結婚式に招待された」と地方議員 旧統一教会と自治体、議員の知られざる関係
dot.旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)と政治との関係性について指摘する報道が次々と出ている。多くは自民党の国会議員とのかかわりについてだが、地方の議会や役所などについても、長い期間、献金や寄付などを受けていたり、イベントの後援をしたりしていたことがわかった。
8月1日、日本維新の会は、所属国会議員のうち、13人が旧統一教会との関連があったと公表した。そのなかには、馬場伸幸共同代表、藤田文武幹事長も含まれる。
また、大阪維新の会も266人のうち、大阪府議や市議ら16人が旧統一教会のイベントに出席するなどのかかわりがあったとした。
大阪維新の会の代表で、大阪府の吉村洋文知事は、
「今後、大阪維新の会所属のメンバーは、政治家の活動として、旧統一教会及びその関連団体と、関わりあいを持たないことを党の方針とします」
とSNSで公表した。
このように、国会議員以外にも、旧統一教会と何らかの関係性を持つ地方議員が多くいることも明らかになってきている。
旧統一教会の代表的なイベントとして、その異様性が語られる「合同結婚式」にも、地方議員が参加していたようだ。
新型コロナが感染拡大する直前の2020年2月、旧統一教会の聖地とされる、韓国・清平で開かれた合同結婚式には、3万人が参加したと旧統一教会は発表している。
その合同結婚式に招かれたという、ある地方議員に話を聞いた。
合同結婚式の会場となった旧統一教会のアリーナは、当日早朝から、韓国内から集まったたくさんの人、バスで埋め尽くされ、そのなかには、日本から招待された地方議員の「VIP用」のバスがあったという。
日本から地方議員が合同結婚式に参加するのは「恒例」だといい、
「私は2、3回、参加したことがあります。選挙でも手伝ってもらうことがあり、教会のほうから誘いがあるからです。たぶん100人近くの日本の地方議員が参加していると思いますよ。バス、2、3台に分乗してソウル市のホテルから会場に行きましたから」
と説明した。
そして、費用について聞くと、
「いやそれは勘弁してください」
とのこと。
一方、騒動の発端となった、安倍元首相が射殺された奈良県でも、旧統一教会系の団体との“つき合い”が見受けられる。
奈良市議会の北良晃議長は、確認できるだけで5年以上、旧統一教会の友好団体である世界平和連合に、政治活動費から「会費」として3千円を支出。これまで20万円以上を支払ったという。
「世界平和連合は、先輩議員から『選挙のこともある』と言われて会員になりました。旧統一教会の関係と聞いて、本当に驚いています。市議選の時に選挙カーで走りましたが、世界平和連合の近くを通るときに集まっていただいたようなことはあると思います。組織票のようなものはいただいていないです。月3千円は『世界思想』という本が毎月届くので、購読料という認識でした」
さらに、世界平和連合の講演会にも参加していたといい、
「世界平和連合の会員ではありますが、旧統一教会の信者などではありません。こんなことになって、今年4月にさかのぼり会員をやめ、政活費からの支出もしないようにしたい。知らないとはいえ、申し訳ございません」
と平身低頭の様子だった。
奈良県も、旧統一教会の関連団体とのつながりはあるようだ。県のホームページ(HP)では、国際交流団体として「世界平和女性連合奈良第一連合会」が紹介されているが、旧統一教会系であることはまったくうかがえない記述になっている。
担当者は、こう説明する。
「統一教会系団体との指摘ですが、HPに一覧として、広く国際交流活動を県内でされていると先方から掲載の要望があり、書面がきたので掲載しました。概要を見ましたが、それだけで団体名など、記載事項から旧統一教会、宗教団体の関連は明らかではなく、わかりませんでした」
HPで確認すると、世界平和連合の会費は月3千円と記されており、北市議の政務活動費の支出とも一致する。
なぜか、取材後、奈良県のHPは見られなくなってしまった。
また、奈良県が毎年実施している大和川の清掃活動では、参加団体に「世界平和統一家庭連合かつらぎ家庭教会」という団体が参加している。
参加基準などについて担当者に聞いたが、
「参加団体は、大和川沿いの地方自治体におまかせしているので知りません」とし、旧統一教会の宣伝活動につながる可能性について聞いても、
「わかりませんでした」
との回答だった。
北議長の奈良市では、旧統一教会の関連団体、天宙平和連合(UPF)が実施している「ピースロード」(UPFの故文鮮明総裁が提案した「国際平和高速道路」の理念に基づくプロジェクト)を数年間、後援している。この点について市の担当者に尋ねると、
「観光、国際交流を担当している部署で後援名義を出しました。統一教会との関係は、今回の事件があって質問がきて、はじめて知りました。事前チェックは細かいところまではしていません。北議長から『こういう活動をしている団体がある』と紹介はありましたけど、後援するしないとの関係はないです」
と話した。
また、奈良市は旧統一教会から、寄付も受けている。20年7月、市社会福祉協議会の「善意銀行」に、世界平和統一家庭連合奈良家庭協会から2万2千円を得ていたことが「奈良しみんだより」で報告されている。
「当時の記録を確認すると家庭連合からバザー収益ということで、寄付をもらっています。寄付を持ってこられたら受け入れます。特にチェックはしません。市の地域福祉のためということです」
同じ奈良県の橿原市でも、寄付を受けていた。20年、橿原市社会福祉協議会「善意の窓」に旧統一教会が1万円寄付している記載がある。同市の担当者は、
「いろいろな団体個人から寄付をもらっています。そのひとつとしてです。ほかの宗教団体からも寄付をもらっています。旧統一教会だとは気が付きませんでした」。
橿原市は、ピースロードに亀田忠彦市長自身が参加していた。亀田市長を直撃すると、
「日韓親善、世界平和の団体だと表敬訪問に来られました。その時、日程があったので一緒に走りました。当日は、自民党衆院奈良1区の小林茂樹先生がオープニングでスピーチされており、ごあいさつした記憶があります。まさか旧統一教会とは思いませんでした。今後、気を付けます」
と話した。
ピースロードへの関与については、熊本市や宮崎県などが後援したことや、二之湯智・国会公安委員長が18年に京都府実行委員長を務めたことが明らかになっている。
奈良県の隣、滋賀県でも今年1月、旧統一教会の関連団体、世界平和青年学生連合・滋賀連合会から14万円あまりもの寄付を受けている。
「昨年12月に寄付者から申込書が届き、受けました。チャリティーでの収益で、コロナ対策に生かしてほしいという理由でした。担当者がどういう団体かホームページで確認したけど、旧統一教会との関係性はわかりませんでした」
と県の担当者は話す。
全国霊感商法対策弁護士連絡会の加納雄二弁護士はこう話す。
「弁護団では、国会議員だけではなく地方議員や自治体にも、旧統一教会やその関連団体のイベントなどにはかかわらないように、公共施設の貸し出しはしないようにと、もう20年以上も前から指摘してきました。今の時代、インターネットでチェックするだけでもある程度、旧統一教会の関連性はわかります。彼らが議員や地方自治体と関係性を持つのは、広告塔として利用する目的です。それが国民、市民のためになるのか、よく考えてほしい」
(AERA dot.編集部・今西憲之)