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【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯

NEWSポストセブン / 2023年3月27日 7時13分

 そして、UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる。パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低いのだ。TBSが、警視庁の捜査幹部が「何年かかっても必ず逮捕する」とコメントしたと報じていたが、レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン被告と同じく、警察も東谷の逮捕のハードルは非常に高いことはすでに覚悟しているだろう。

秒速で1億円稼ぐ男

 ドバイでの東谷を1年近く追った拙著『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』では、東谷の周囲に集まっていた者たちにも取材した。動画配信サイト「FC2」創業者の高橋理洋、元赤軍派の経営コンサルタント・大谷行雄、元バンドマンで秘書の墨谷俊、年商30億円の経営者・辻敬太、そして東谷に著名人暴露を提案した黒幕A……。

 それぞれが日本社会に何らかのルサンチマン(遺恨)や情念を抱えながら、ガーシーCHに対して暴露ネタの提供から、動画制作の助言、地元王族の紹介など陰に陽に手を貸していることに気づき、その様子を描いた。脛に傷を持ちながらもギラギラとした野心を見せつける彼らに、戦前に中国や東南アジアなどに渡った大陸浪人に近しいものを私は感じたのだった。

 彼らに限らず、近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。

 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ。ドバイの金満なイメージを広めたのはなんと言っても、「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。

 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない。UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった。

(後編に続く)

【プロフィール】
伊藤喜之(いとう・よしゆき)/1984年、東京都中野区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、2008年に朝日新聞社に入社。松山総局(愛媛)を振り出しに、東日本大震災後には南三陸(宮城)駐在。大阪社会部では、暴力団事件担当として指定暴力団山口組の分裂抗争などを取材する。その後、英国留学を経て2020年からドバイ支局長。2022年8月末で退職し、同9月からドバイ在住の作家として活動している。

※週刊ポスト2023年4月7・14日号

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