非金融事業で今後いかに資金を手当できるかが鍵となってくる
ここまでの話をまとめましょう。楽天のキャッシュフロー計算書を事業全体で見ると、昨年度の4.4兆円から4.7兆円とキャッシュは3,000億円近く増えています。これだけ見ると、キャッシュは十分に確保しながらモバイル事業への投資を進めているように見えます。
しかしながら、このキャッシュが増えた要因は、金融事業によるものであり、非金融事業としてはキャッシュが4,400億円強も流出している状況でした。そして、先述したように、銀行等の金融事業において調達したキャッシュはモバイル等の非金融事業に基本的には使うことは出来ません。
換言すると、非金融事業だけで見ると、営業CFと投資CFのマイナスを財務CFでまかないきれていない状況です。
モバイル事業は、現在はまだ積極的に投資を行うフェーズであり、キャッシュを生むようになるのはもう少し時間がかかりそうです。引き続きモバイル事業には投資が必要なことを考えると、今後は非金融事業でいかにキャッシュを確保できるかがポイントとなってきます。ここで企業がキャッシュを手当する方法は基本的には3つしかありません。具体的には事業からキャッシュを得る(営業CF)、固定資産等を売却してキャッシュを得る(投資CF)、そして株式や借り入れ等を通じて資金を調達する(財務CF)の3つです。
引き続き楽天としてはモバイル事業については、財務CFを通じて、資金を調達することになると予想されますが、もう一つ重要なのが営業CFからのキャッシュの獲得です。すなわち、稼ぎ頭のインターネットサービス事業等の非金融事業からいかにキャッシュを得られるかがポイントになります。
今回はモバイル事業で大きな赤字を計上した楽天について、楽天の事業全体とキャッシュフローの観点から考察を行いました。多くの事業を行っているコングロマリットである楽天の決算を見る際には、P/Lに加えて、キャッシュフロー、とりわけ非金融事業のキャッシュの動きにも是非着目してみてください。
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