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『ウォーハンマー』体験レポート前編 ミニチュアゲームの深淵な世界に触れた!

『ウォーハンマー』体験レポート前編 ミニチュアゲームの深淵な世界に触れた!

『ウォーハンマー』をプレイする筆者・架神恭介

突然ですが、みなさん「ミニチュアゲーム」ってご存知ですか?

ボードゲームの一種ですが、まずミニチュアを組み立てて塗装することから始まり、それを並べて戦わせるという、奥深い世界観と魅力にあふれたゲームなんです。

その魅力にとりつかれたコアなファンが多いミニチュアゲームですが、知らない人には参加のハードルが高いようにも思えます。

今回は、そんな奥深いミニチュアゲームの世界を初心者として探検! 専門店の協力のもと、ミニチュアゲームで最も有名な『ウォーハンマー』を体験してきました。

どんな世界観なの? どうやって塗装するの? どうやって遊ぶの? ていうか、そもそもどこで売ってるの? そんな初心者丸出しの疑問をぶつけてきました!

ミニチュアゲーム『ウォーハンマー』って何なの?

こんにちは、作家の架神恭介です。私事ですが、最近漫画の方でも仕事をしてまして、アーススターにて「こころ オブ・ザ・デッド」と、「週刊少年チャンピオン」にて『放課後ウィザード倶楽部』というファンタジー漫画を連載してます。

ところでファンタジーといえば、僕はしばらく前から『ディセント』というファンタジー系ミニチュアボードゲームをプレイしているのですが、そういえばファンタジー系のミニチュアゲームで有名なコンテンツがあったよなあ、と不意に思い出しまして……そう、確か『ウォーハンマー』
ジャイアントホビー(GIANTHOBBY)

ジャイアントホビー(GIANTHOBBY) 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4丁目 7-13

架神恭介と体験するミニチュアゲーム『ウォーハンマー』

左がジャイアントホビー店長の竹内さん、右が筆者の架神さん

というわけで、今回は高円寺のミニチュアゲームショップ・ジャイアントホビーを訪れて、店長の竹内さんに『ウォーハンマー』のことを色々と教えてもらいました!

ウォーハンマーの歴史はいつ、どこで生まれたの?

架神恭介と体験するミニチュアゲーム『ウォーハンマー』1

画像は「Games Workshop Webstore」より

架神 『ウォーハンマー』はいつごろ、どこで始まったのでしょうか?

竹内 80年代初頭のイギリスですね。もともと、ヨーロッパにはミニチュアは浸透していて、ブリキの小さな兵隊を着色したり、並べて飾ったりする文化があったんです。それに加えて70年代後半のゲームブックなどがきっかけで剣と魔法の世界観が盛り上がりを見せました。それで、その両方の流れを汲んで、剣と魔法の世界をミニチュアで再現するウォーハンマーが誕生したというわけです。

架神 じゃあ、『ウォーハンマー』の世界観は基本的にはファンタジーなわけですね。

竹内 いや、実は、『ウォーハンマー』には派生した2種類のゲームがあるんです。ファンタジーは『ウォーハンマー:エイジ・オブ・シグマー』(旧『ウォーハンマー:ファンタジーバトル』)、もう一つ、SFの方が『ウォーハンマー40,000』というものです。

『ウォーハンマー』のファンタジーとSFはどう違う?

『ウォーハンマー:エイジ・オブ・シグマー』

ヨーロッパをイメージした架空の土地を舞台に様々な種族や国家が争い合う剣と魔法の世界。かつては『ファンタジーバトル』の名称で世界観が構築されていたそうですが、ストーリー上、大戦争により一度世界が滅び(!)、すべてが再構築されて誕生したのが現在の『エイジ・オブ・シグマー』

再構築後は日本語訳ないため、日本の現役プレイヤーたちも『エイジ・オブ・シグマー』の詳細な設定の全容はつかめておらず、英語版をバリバリ読んでいる一部のプレイヤーからの口伝により情報が伝わっている現状だという。そんな状況自体もファンタジックですね……。

『ウォーハンマー40,000』(通称「40K」)

当時は『ファンタジーバトル』の4万年後の世界という設定でスタートしたが、今では完全に分離して、独立した世界観で構築されているそうです。『ファンタジーバトル』は中世の戦いを再現するため、リアルさを突き詰めていくとどうしても兵数が増えて規模が大きくなってしまうのですが、『40,000』はその点が少しお手軽になっています。

一応ジャンル的にはSFに分類されますが、宇宙が舞台で、サイキックなどのよく分からないパワーも飛び交うため、普通のファンタジーよりもむしろファンタジックだったりします。竹内さんいわく、「遠未来を描いたダークファンタジー」で、「人類に明るい未来が待ってる気が全くしない世界」とのこと。

なお、日本ではそれほど知名度の高くない『ウォーハンマー』ですが、英語圏ではミニチュアゲームに留まらず、小説、ビデオゲーム、CGアニメなど様々なメディア展開がなされているそう。英語圏の人たちが『ウォーハンマー』と聞けば、「ああ、子供の頃にやってたな」「友達でやってるヤツいたわ」となる感じ。日本のホビーで言うと、「大体、ミニ四駆くらいのイメージ」なんだとか。

ミニチュアゲームの敷居は高い?

架神 ミニチュアゲームって敷居が高いイメージありますよね。そもそも『ウォーハンマー』ってどこで売ってるんですか? 「ジャイアントホビー」さんみたいな専門店だけ?
竹内 いえいえ、ウチみたいな専門店は日本に数店しかありませんが、ウォーハンマーの取扱店自体は結構ありますよ。書店やホビーショップにコーナーがあったりしますし、もちろんネットでも買えます。

買える場所はあるとして、他にも問題が。ミニチュアはいろんな種類の箱がいっぱい売られていて、どれを買えばいいのか分からない……。それにミニチュアはすべて未塗装で、プレイヤー各自が色を塗る文化。いきなり色を塗れって言われてもなぁ。ゲームをする前にクリアすべき段階が多い……。

そこで竹内さんに「とりあえずこれを買えば遊べる」という商品を教えてもらいました。

『エイジ・オブ・シグマー スターターセット』

2勢力、47体のフィギュアと、ルール、ゲームを遊ぶためのダイス、メジャーが同梱。とりあえずこれ一つ買えば二人でゲームができる!

『デスウォッチ・オーバーキル』

画像は「Games Workshop Webstore」より

『ウォーハンマー』から派生したボードゲーム。こちらも50体のミニチュアが付いており、これだけで遊べる!

架神 うーん、でも結局50体くらいミニチュアは必要だし、それらを全て塗装し終えないとゲームの土俵にも立てない感じなんでしょうか? どちらもお値段的にも結構なものだし、やはり敷居が……

竹内 いえ、『エイジ・オブ・シグマー』には厳密なレギュレーションがないので、○○体揃えないとゲームできない、というのは実はないんですよ。そこが『エイジ・オブ・シグマー』のウリでもあるんです。好きなミニチュアを買って、友達も同じくらいの数を買えば、それだけでゲームができるんです。
※今年夏にポイント制での遊び方の導入があるようです

架神 へえええ!

竹内 安いのだと一箱3500円ほどで、それでミニチュアが5体とか10体とか入ってますので、それを買うだけでも遊べますね。ルールも公式ホームページで公開されています。

塗装ってどうやるの?? 何もかも分からない……

しかし、次なる問題が……そう、塗装です。僕なんかは全く経験がないので、どうやって塗ればいいのかの前に、まずもって何を買えばいいのかすら分かりません。塗料もめちゃくちゃ種類があるし、筆や工具も何が必要なのか分からない……。

架神 何買えばいいのか全然分かんないです! 「これを買えばとりあえず塗れる」というオススメの塗料を10種類くらい教えて下さい!

竹内 じゅ、10種類は厳しいですね……。店に来て、『このミニチュアを塗りたいんだけど』と相談してくれれば、10種類、必要なものをピックアップすることは可能ですが……。

架神 10種類じゃ足りない、というのはそうだと思いますし、用途に応じて買い足す必要があるのも分かるんですが……。そうは言っても、何から手を出せばいいのかすら分かんないんですよ……。なので、「とりあえず買っておくべき塗料」をオススメしてくれませんか!

竹内 うーん、じゃあこれですかね?

シタデルホビースターターセット

竹内 これで一通りの作業はできますが……これだけで全ては代用できない、というのが正直なところです。ミニチュアゲームは正直『初期投資が安い』とは言えないのですが、反面、塗料もすぐになくなるものではなく長く使えるので、一度買ってしまえばランニングコスト自体は良いです。

なお、ミニチュア1体をペイントするのに掛かる時間は人それぞれで、20分で手早く仕上げる人もいれば、2週間かけてじっくり塗り上げる人もいるそうです。とりあえずは「1体1時間半を目安に仕上げると良いのでは」とのこと。

実際のところ、ミニチュアゲームにおいて、塗装は「ゲームを遊ぶためのコスト」ではなく、これ自体が楽しみの一環だったりします(意外と楽しいペイントについては記事後半にて!)。
50体を塗るだけで75時間遊べると考えれば、ミニチュア+塗料の初期投資もそこまでべらぼうなものではないと言えるかも? 塗り終わったミニチュアでゲームもできますし、形として残るので、部屋に飾ったりもできるのです。

また、竹内さんいわく、「最初は塗らずにゲームをしてもいいと思います」とのこと。遊んでるうちに自然と塗りたくなってくるので、そうなってから必要な塗料を買い揃えていくのもアリ。

どこで遊ぶの?

ミニチュアを買い、塗装もしたとしましょう。さあ、次の問題は実際のゲームプレイだ! 一体、ウォーハンマーはどんなゲームフィールドで遊ぶのでしょうか。ゲームテーブルへと案内された僕は己が目を疑いました。
デカァァァァイ! 説明不要!

架神 あの、めちゃくちゃデカイんですけど、これ、誰がつくってるんですか……?

竹内 これはこういう商品なんですよ。ただし、色は塗られてないのでやっぱり自分で塗装します。

架神 じ、自分で塗るんですか……。

竹内 ミニチュア塗るのと同じなので。塗れますよ。
架神 えっと……ウォーハンマーのプレイヤーたちは、みんな家にこのデッカイのを持ってるんですか?

竹内 まさか! 普通の人は緑色の布とか敷いて、それを草原などに見立ててプレイしてますね。

このフィールド、ちなみに6面で3万円程だそうです。ジャイアントホビーさんでも購入できるけど、店舗に在庫はないので取り寄せになるとのこと。

なお、6面がフィールドの最大規模というわけではなく、さらにフィールドをくっつけて、12面とか14面とかでプレイすることもあります。後に説明する「大規模戦」なんかは、実際に14面とか使わないとミニチュアを並べきれなかったりするそうです。
竹内 フィールドを持ってる人は少ないですけど、こういうテレイン(情景モデル)を持ってる人は結構いますね。テレインは商品でも売られてますし、ゼロからつくり出す人もいます。

架神 これって単に雰囲気を出すためだけの飾りなんですか? それともゲーム的な効果もあるんでしょうか?

竹内 それぞれ効果はありますよ。ルールブックに書かれています。

架神 もしかして、やろうと思えば家にあるプラモ……例えば「日本の農家」とか「屋台」とかも組み合わせて遊べたりするんですかね。

発泡スチロールで自作したというテレインも

竹内 そりゃもう家でやる分には自由にいくらでも。『どういう雰囲気をつくりたいのか』というのが大事なので、要はカッコ良ければ何でもいいんです。……店(ウチ)でそこまで自由にされると、ゲーム自体の雰囲気がよく分からなくなっちゃうので困っちゃいますが。

架神 ところで、フィールドにマス目とかないですけど、もしかしてウォーハンマーには「移動」という概念がないんでしょうか? 普通のボードゲームだと「3マス動く」とかやるんですが。

竹内 マス目は存在しないので、メジャーを使って測りながら移動させるんです。

架神 メ、メジャー……?

フィールドもテレインも本格的だし、ゲームをするというよりは、「かっこいいジオラマをつくる(+それでゲームもする)」というニュアンスでしょうか。メジャーを使ったプレイの模様は記事後半にて!

そもそも遊ぶ相手はいるの?

ミニチュアを買って、塗装して、フィールドを用意して……さあ、次なる問題は「一緒に遊べる人がいるのか」問題です。ある意味、これが一番、敷居の高い問題かもしれません。都会なら、ジャイアントホビーさんのような専門店に行くことでプレイヤーも集まると思いますが、地方の状況はどうなのでしょうか?
竹内 まあ……興味があるけどできない、という人が多いのが現状です。地方のプレイヤーの人がたまに東京に来た際にプレイしていく、ということはあります。

架神 やっぱり厳しいんですね。昔から『ウォーハンマー』やってて、ミニチュアも買ってるし、塗装もしてる、でも一回も遊べてない、っていう人もいるんですか?

竹内 います。遊びたいのに遊べない、という人もいますし、ペイントにしか興味がないので別に遊ぼうとしてない、という人もいますね。

なんだかTRPGみたいですね。TRPGも遊びたくてもやってくれる人がいなくて、ルールブックを熟読してリプレイを読むだけで終わったり……という人がたくさんいました。最近はオンラインでセッションできるようになったので、状況は大分変わってきているのですが。

一方で『ウォーハンマー』はといえば、こちらはオンラインでやるのも難しいようです。相手側と自分側で同じミニチュアやテレインをセッティングするのが難しい、という物理的な問題もありますが、それだけでなく、『ウォーハンマー』にはコミュニケーションツールという側面があるためです。

ゲームが単に面白い、というだけでなく、さあ戦うぞ、となって、自分が塗装した自慢のミニチュアをフィールドに並べてみる、それで相手とお互いの塗りを評価し合ったりする、ミニチュアゲームはそういうところにも楽しみがあるわけです。彩色は個々人のオリジナリティの発露であり、独自のカラーリングに挑むのも、見本通りの彩色を追求するのも、軍団全体の完成度や雰囲気を求めるのも、全てプレイヤーの個性なのです。

ところであのでっかいの何?

架神 あの、さっきからずっと気になってたんですけど、あのデッカイのは何なんですか?

足元にある、通常サイズのミニチュア

竹内 あれもウォーハンマーで使えるミニチュアですよ。『40K』の超大規模戦で出てくるやつです。

巨人・・・

架神 えっ、このデッカイのと、小さなオルクたちが戦うんですか?? そんなの勝負になるんですか??

足元にいたオルクたち

竹内 意外となりますよ。コスト制ですから。
ミニチュアには一体一体にコストが設定されており、小さなオルクなら一体のコストは10点ほどだけど、デッカイのは2000点もあるそうです。つまり、デッカイのと戦う際はオルクを200体(!)並べられるわけで、数の力で渡り合う感じになるようです。しかし、200体のミニチュアを買って塗って並べることを考えるだけで途方も無い……。

ですが、超大規模戦と呼ばれるゲームはそれどころではない! コスト1万点で軍団を編成して遊ぶのだそうです! つまり、オルクなら1000体並べられる!!!

といっても、流石にそこまで一人で用意するのは難しいので、一人2000ポイントずつの5人組で1チームを組んで、チーム戦にしたりして遊ぶようですが。この超大規模戦はジャイアントホビーさんでは年に数回プレイされているそうです。

架神 ちなみにその超大規模戦は一回のプレイ時間はどのくらいなんですか?

竹内 一日では終わりません

架神 ……。

前編まとめ「敷居は低くないけど魅力は底なし」

なんだか敷居は全然低くない気がする『ウォーハンマー』ですが、その分、自由度は高く、ゲーム世界の奥行きも相当です。

今回は紹介できませんでしたが、世界観や対抗勢力それぞれの設定などのバッグヤードもしっかりとしており、ガッツリとした分量の設定集が多数出ています。

勢力ごとに詳細な設定集が! ※右二冊は「ファンタジーバトル」の設定集。左端のが「エイジオブシグマー」用

ミニチュアも塗装するだけでなく、ミニチュア同士で武器を交換したり、武器を自作したり、さらには未だミニチュア化されていないキャラクターをイチからつくったり(フルスクラッチ)など、情報も山程あるし、つくれるものも、弄れるものもたんとある。それが『ウォーハンマー』なのです。

……そして一方で、塗装とゲームルール自体は意外と難しくなかったりもします。記事後半では、ミニチュアペイントとゲームの実際をご紹介します!

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店舗情報

ジャイアントホビー

営業時間
12:00〜21:00
定休日
火曜・水曜
場所
〒166-0003 東京都杉並区高円寺4-7-13 第二久万乃ビル2F
連絡先
03-5913-8911 info@giant-hobby.com
URL
http://www.giant-hobby.com/

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米村 智水

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