上記の様なコメントはだいたい定番で必ず上がってきます。耳障りのいいもっともらしいコメントもたくさんあるのですが、当事者の気持ちが置き去りになってませんか?マジョリティ側である自分のエゴをマイノリティに押し付け、受け入れろと強要してませんか?下記、一つずつ解説していきます。
まず1つ目。「好き=リスペクト」ではないです。好きなら、その文化を深く知り理解するために勉強してこそ、その文化に敬意を払うことになるのではないでしょうか。また、その過程でブラックヘアについても深く知ることになると思います。それでも自分のやりたい気持ちを一番に優先させてブラックヘアを真似するのか、やっぱり敬意を払いたいからやめておこうとするのか、答えは自ずと出てくると思います。
2つ目、近しい人に当事者がいるからパス(許可証)を貰っていると思っている人は少なくありません。ですが文化の盗用は個人間の感情の問題ではないです。
繰り返しますが、文化の盗用とは、「支配的な(または特権的な)立場にあるグループが、マイノリティなど、そうでないグループの文化を搾取すること」です。その文化圏にいる人たちについて、考えなければなりません。
もちろん、日本人だってそうですが、黒人の方だって色んな考えの方がいるし、文化の盗用についてあまり深く気にしない人もいるでしょう。ですがこの問題は、マイノリティグループに対しての搾取という構図がある以上、必ず指摘される問題です。なぜなら多くの当事者の方はそれを良しとしないからです。そういう人たちの声に耳を傾けることこそが、BTSでいうところのSpeak Yourself(声を上げる)をした弱者に、耳を傾けることになります。
3つ目。その意見はマジョリティであるあなたの意見なので、まずはマイノリティの声を聞いて何が問題かを認識しなければならなくて、その問題が搾取構造の「文化の盗用」であるなら、シェアする前に搾取構造にならないように考える必要がありますよねという話です。「Toxic Positivity(トキシックポジティビティ)」という言葉がありますが、問題の本質を見ずに、争いは辞めようよ、とか、みんなが思いやればきっといい方向に行くよ、などと根拠のないポジティブさで意見や問題に蓋をする行為は、問題の解決になりません。ARMYの中でもBTSに関することなら全肯定するという人たちに見られるので、是非自分自身で考えるきっかけにしていただければなと思いました。
Cultural Appropriation(文化の盗用)と、Cultural Appreciation(文化への敬意)
NETFLIX 『ザ・ポリティシャン』
4つ目。もちろん、日本文化を欧米に搾取される構図もあります。
ですが日本人は白人文化への傾倒が強いので、日本国内からの意見は「日本文化を真似してくれて嬉しい〜可愛い〜」といった的はずれな感想が多く、「これって文化の盗用じゃない?」と声が上がるのは、アメリカの日系の方からなど・・・。そもそも日本には黒人の方々のような壮絶な迫害の歴史がないので、自国の文化に対しての誇りやプライドがあるにしても、黒人の方々のそれに比べるともしかしたら低いのかもしれないし、生活への密接度も違うので、声も上がりにくいのだと思います。
ただ、日本人による強い反発の例ももちろんあります。数年前、アメリカのセレブ、キム・カーダシアンが自身の補正下着ブランドの名前を「Kimono」にして商標登録をしようとした時、かつて見たこと無いほどの日本人による反発が起きました。これは、日本人が持つ着物への愛着と誇りが、文化の盗用の訴えにつながった例だと思います。結果、商標登録は取り消され、ブランド名も変更されました。
キム・カーダシアンが起こした「Kimono」ブランドの波紋
https://globe.asahi.com/article/12502594
日本人が知らないアリアナ・グランデ「文化の盗用」批判の背景とは
https://bunshun.jp/articles/-/10843?page=2
「文化盗用=その文化が好き」に潜む問題性 ブラックルーツを持つ当事者の訴え
https://yomcott.com/articles/article004.html