タコの最期は涙なくしては語れないほどに尊い 雄も雌も子孫を残す瞬間のために命を捧げる
子育てをする無脊椎動物、タコ
タコのお母さんというと、何ともユーモラスでひょうきんな感じがする。
イメージとは、怖いものである。
タコは、大きな頭に鉢巻をしているイメージがあるが、大きな頭に見えるものは、頭ではなく胴体である。
映画『風の谷のナウシカ』に王蟲(おうむ)と呼ばれる奇妙な生き物が登場する。王蟲は体の前方に前に進むための脚があり、脚の付け根の近くに目のついた頭があり、その後ろに巨大な体がある。じつはタコも、この王蟲と同じ構造をしている。つまり、足の付け根に頭があり、その後ろに巨大な胴体があるのだ。ただし、タコは前に進むのではなく、後向きに泳いでいく。
タコは無脊椎(むせきつい)動物の中では高い知能を持ち、子育てをする子煩悩な生物としても知られている。
海に棲む生き物の中では、子育てをする生物は少ない。
食うか食われるかの弱肉強食の海の世界では、親が子どもを守ろうとしても、より強い生物に親子もろとも食べられてしまう。そのため、子育てをするよりも、卵を少しでも多く残すほうがよいのである。
魚の中には、生まれた卵や稚魚の世話をするものもいる。子育てをする魚類は、とくに淡水魚や沿岸の浅い海に生息するものが多い。狭い水域では敵に遭遇する可能性が高いが、地形が複雑なので隠れる場所はたくさん見つかる。そのため、親が卵を守ることで、卵の生存率が高まるのである。一方、広大な海では、親の魚が隠れる場所は限られる。下手に隠れて敵に食べられてしまうよりも、大海に卵をばらまいたほうがよいのだ。