日本動物園水族館協会の声明
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日本動物園水族館協会の声明
動物福祉に配慮した取材を
2023(令和5)年3月27日
公益社団法人 日本動物園水族館協会
本年3月24日に日本テレビ系番組である「スッキリ」において、あるタレントがペンギンの池に落ちるシーンが生中継され、取材地である那須どうぶつ王国がテレビ局側に厳重抗議しました。
公益社団法人日本動物園水族館協会(日動水)がテレビ局等のマスメディアに協力するのは、広く人々に動物たちや命の大切さを知り学んでいただき、さらに生物多様性や地球環境の保全にも関心を向けていただくことを望んでいるからです。それは世界的にも動物園水族館の社会的役割にもなっています。
今回の番組内容は、そのような目的に合致したものとはとても思えません。動物園の動物に対する安全面や衛生面への配慮が欠落しており、現在、日動水が積極的に取り組んでいるアニマルウエルフェア(動物福祉)にも反していると感じられるからです。
笑いやバラエティーは人間社会にとって必要なものでしょう。しかし、動物に対する敬いの気持ちを忘れて単に笑いの対象とするような行為は日動水として認められないものです。
上述した動物への多様な配慮がなされていない番組制作に積極的な協力を行う意思は、これまでも今後も日動水ならびに日動水加盟園館にありません。
ウクライナへのロシアの侵攻に関して
2022(令和4)年3月4日
公益社団法人 日本動物園水族館協会
ウクライナへのロシアによる軍事侵攻は、ウクライナの人々の平穏な生活や地域の自然、野生生物の生息環境を脅かし、世界の平和と国際秩序の根幹を揺るがす所為であり、まったく容認できるものではありません。
世界の平和と国・地域を超えた人と生きものの交流を活動の前提とする動物園・水族館は、このような事態の継続が、人々の暮らしと地域の自然環境、そして、ウクライナとロシアを含めた世界と日本における動物園・水族館の維持・発展及び国際的な連携に非常に悪い影響を及ぼすことを深く憂慮します。
ウクライナの動物園・水族館関係者及び飼育動物等の安全と健康が確保されることを願い、速やかな対話と外交交渉による平和的な解決を強く望みます。
コロナ禍の動物園水族館が果たすべき役割について
2021年6月16日
公益社団法人 日本動物園水族館協会
日本動物園水族館協会は、『地球を守る、私たちが変える』をテーマに2021年度通常総会を5月に開催し、以下の決議文を採択しました。
「私たち公益社団法人日本動物園水族館協会の会員園館は、新型コロナウイルス感染症の大流行をもたらした根源的な要因とそれが環境や野生生物に与える影響について深く考え、SDGs(持続可能な開発目標)の達成と自然共生型社会の実現に向けて、野生動物に関する正しい情報を伝える役割並びに、動物福祉(アニマル・ウェルフェア)の推進の大切さを深く認識し、今総会のテーマである『地球を守る、私たちが変える』を、国内のみならず世界へ向けて発信し活動して行くことをここに決議します。」
このように、今年度の決議文は新型コロナウイルス感染症流行とSDGsを大きく反映したものとなりました。いうまでもなく新型コロナウイルス感染症をはじめとした新興感染症の流行とSDGs目標達成は大きく関係します。持続可能な活動を行いながら野生動物との共存を図っていくことこそが人類の未来を約束します。
動物園水族館は、長年にわたり“自然への扉”としての社会的な役割を果たしてきました。人と野生動物の距離が問題になるほど近くなったからこそ、野生動物との共生を考えるうえで動物園水族館が果たすべき役割は重要性を増します。
このコロナ禍の中で、すべての動物園水族館は門を固く閉ざすべきでしょうか?
私たちは、そうは思っていません。現在、地球上の環境や野生動物の課題は待ったなしの状況にあります。そのような中で、人々が心を癒し、自然を学び、人と野生動物との正しいつながりに対して理解が得られる場が動物園水族館であるからこそ、私たちは動物園水族館を人々の社会生活に必要不可欠な存在と考えます。
新型コロナウイルス感染症の流行を早期に収束させるためにも、動物園水族館はこれからも人々の身近な場所で“自然への扉”の役割を果たし、人々の活動や成長に必要な癒しや活力、学びを提供する活動をしてまいります。
イルカ類に対する(公社)日本動物園水族館協会の取り組みについて
2018年10月1日
公益社団法人 日本動物園水族館協会
(公社)日本動物園水族館協会JAZAは、私たちもその会員である世界動物園水族館協会WAZAとの協議を経て平成27(2015)年5月、追い込み漁によるイルカ類の導入を行わないことを決定しました。「収集する動物は、できるだけ飼育繁殖したものとし、それ以外の入手は適法であることはもちろん、動物の福祉や種の保全について十分な配慮のもとで行われること」という当協会の倫理福祉規定に基づく決定です。
ゾウやキリンなどのようにイルカ類も野生個体を捕獲することは極力減らし、飼育個体の繁殖を進めていかなければなりません。そのためには、各園館の努力とともに、当協会が積極的にその取組みを支援していく必要があります。
昨年11月、当協会は水族館部を設置し、飼育管理や飼育繁殖等、水族館に関する様々な課題に対応することとしました。イルカ類の飼育繁殖についても水族館部内に「イルカ会議」を発足させ、関係者が連携協力して取り組むこととしました。今後は、繁殖に用いる個体の円滑な移動や、人工授精技術の共有、生まれたイルカ類の取り扱いに関する研修等を行っていく予定です。
私たちは、野生動物の保全への貢献と飼育展示動物の福祉向上に取り組むことが現代の動物園水族館の大切な責任だと考えます。イルカ会議の発足は最初の一歩にすぎませんが、将来に続く大きな一歩になるよう努力してまいります。
動物園水族館を利用される皆様におかれましては、引き続き動物園水族館の活動についてご理解とご協力をお願いいたします。
単独飼育ゾウの環境改善について
2017年12月27日
公益社団法人 日本動物園水族館協会
日本動物園水族館協会JAZAは動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)を遵守して動物本来の習性にあった飼育を実現すべく、日々、取り組んでいます。
ゾウについても、社会性の強い動物であり、個体どうしのコミュニケーションがゾウを健康に飼育するうえで大切であり、動物福祉の観点からも複数頭の飼育が肝要であると考えています。しかし、現状はゾウを単独で飼育している施設が少なからず存在しており、ご批判をお受けしています。
この現状の解決策として、私たちは、単独飼育ゾウを移動して可能な限り複数同居を進めていく所存です。しかし、長期間、単独でくらしてきたゾウを同居させることが、時にゾウに大きなストレスをもたらす結果になることも経験してきました。
そこで、ゾウの性格をみながら複数飼育を試みると共に、現在、単独でくらすゾウには、環境エンリッチメントをすすめ、飼育環境を豊かにしてゾウがいろいろな行動を自ら選択できる環境作りをすすめていこうと考えています。
単独飼育ゾウの飼育環境改善は個々の園館の努力だけで解決できる問題ではありません。
JAZAに組織されているゾウ会議が中心となって知恵をしぼり、個々の園館と連携して環境改善に取り組んでまいります。
市民のみなさまには引き続いてのご理解とご協力をお願い申し上げます。
動物福祉に配慮した展示動物の飼育について
2017年6月16日
公益社団法人 日本動物園水族館協会
(公社)日本動物園水族館協会では倫理福祉規程を作成し、加盟園館が展示動物の福祉向上に努めることとしています。展示動物をその習性にあった環境で飼育することが繁殖に好影響を与えます。また、快適な環境にくらす動物を見ることで来園者は動物のことを正しく理解し、快適な時間を過ごすことができると考えます。
当協会加盟園館ではありませんが、最近、マスコミや動物の専門家の間で飼育環境や飼育方法について話題となっている動物展示施設があります。
一つは、滋賀県のショッピングモール内にある動物園です。ここで飼育されているライオンの飼育施設が狭く、その健康管理も不十分だと議論されています。滋賀県庁の担当者に状況を伺いましたが、現場視察の後、改善計画を出すように指導したということでした。県の指導がきちんと果たされることを期待しています。
もう一つは熊本県内の動物展示施設です。ここで2015年9月に生まれたチンパンジーの子どもを、弱っているように見えたからと母親から放して人が親代わりとなって育て、2016年7月からショーに出演させています。チンパンジーの子どもを母親から放して人が育てると、チンパンジーとして生きていくうえで必要なことを母親から学ぶことができません。赤ちゃんが元気を回復したらすみやかに母親に戻すのが、チンパンジーを飼育する基本です。人に刷り込まれたチンパンジーの未来は明るくありません。
2つの事例について当協会の考えを公開ホームページ上で表明させていただきました。
(公社)日本動物園水族館協会加盟園館一同、飼育動物をできるかぎり快適な環境でくらせるように日々、努力してまいりたいと考えています。引き続き、みなさまのご理解とご支援をお願いいたします。