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婦人科部長の闘病記 Part33
原三信病院婦人科便り Part33 手術の心得③
原三信病院 婦人科 片岡 惠子
ちょっとちょっとちょっと~
知らない間に夏がきてますがな~~~
振り返ると、前回の手術の心得②からはや5ヶ月もご無沙汰で、ほんとにすみません。
4月、5月はコロナで、てんやわんやで、手術が延期になったりキャンセルになったり、それでも患者さんが手術をしたがったり、大騒ぎしていました。今も毎日感染者が増えていますが、対応にだいぶん慣れてきたので、時々発熱した患者さんに胸が高鳴りますが、ふつーに対処できるようになってきました。
こうやって人間、どんな修羅場にも慣れていくんだわ。
皆様、お元気ですか。片岡です。
実はこういう、「非常時」が嫌いではない。
産婦人科を選択するひとは、大抵、この、「非常時」が好きな人だと私は思います。
特に産科は一秒一秒、刻々と容態や進行が変わるので、臨機応変さ、機敏さが問われる分野だからですね。・・・最近、お産を取ってなくて、過酷さをすっかり忘れ、赤ちゃんのいい匂いや張り詰めた緊張感の心地よさしか思い出せない。
人とは忘却する生き物なのですよ。
前回は手術同意書に対する、私の気持ちを叫ばせて頂きました。
読まずにサインだけするんじゃねえ、と書きましたが、サインまでごねられるのも大変なので、中間くらいでお願いします。いずれにせよ過ぎたるは及ばざるがごとし。
手術の同意書の法律的な立ち位置は、「医者が説明しましたよ~ん」くらいなので、不動産の契約書みたいな「実印を知らずに押したら詐欺に遭う」ようなことは絶対に、ない。
ただし、裁判では割と「医者が説明していたか?」が争点になっていることが多いので、分からないところはきちんと質問しましょう。専門家が本気でごまかそうと思ったらごまかせると思うが、手術をする前に女の勘を働かせてもらえれば・・・!!
この世で最強は、女の勘と主婦の口コミ。怖いモノなし。
でも、考えてみてくださいよ。
しがない勤務医の給料が、手術を一個増やしたからといって、増えると思います?
逆に仕事が増えて、給料据え置きが間違いないような状況で(コロナのせいでボーナスは下がった)、あなたの手術をしましょうよ~とか言っているのは、ひとえに医師の使命感と親切心でしか、ない(断言)。私たちは野球選手みたいな、成績良ければ給料が増える的な、美味しい出来高制ではないし、患者さんの運の悪さや病状の難しさには、私たちも巻き込まれちゃうわけです。そこを説得するのは、たったひとつ、病気のことを色々思い悩む時間が患者さんにとってもったいないから。それだけ。
人生は永遠ではない。長くて100年。
杉の木は下手したら何千年も生きるのに。たった100年ですよ、100年。
しかも元気な時間はそう長くない。
筋腫や卵巣嚢腫に悩んで怯える時間が、ほんとうにもったいない。
こないだも先生が手術したいだけジャン、みたいなことを言ってのけた患者さんがいましたが、違うもん。学術的な好奇心はまあ、ちょこっとだけありますが、原三信病院は何かを実験したり試したりする、大学病院のような性格は持ち合わせないので、できる手術を丁寧にやる、これをモットーにしておりますよーだ残念でしたー
・・・と言ってやりたかったですが、大人なので止めておきました。ぐっじょぶ自分。
さて、手術の心得に戻ります。
麻酔ですが、麻酔科の先生に頼んでいます。
麻酔を専門に学び、実践しているスペシャリストです。
うちは主に腹腔鏡手術と子宮鏡手術で繁盛していますが、肉眼で見る手術と違って、視野が拡大されて見えるので(8~10倍)患者さんが術中動くとかなり危ないです。
よって、何らかの特殊な事情がない限り、全身麻酔で行っています。
全身麻酔と静脈麻酔の違いによくお尋ねがあるのですが
静脈麻酔は、たとえて言うなら「お酒をたくさん飲んで、深く寝てしまった」状態によく似ています。このとき、脳自体は起きているので、時間の経過は自覚があります。よって、目が覚めて、「あ~よく寝たなあ」と実感があるのが特徴です。
比較して、全身麻酔は脳にも麻酔をかけてしまうので、時間軸も止まります。
実感としては、「さっき寝たのにもう起こされた」、まるで秒で手術が終わってしまったかのように感じるでしょう。
いずれも術中起きたことは覚えていらっしゃらないし、何も気がつかないと思います。時々患者さんの中には、「私、麻酔がなかなか効かなくて・・・」とか言う人がいますが、大丈夫。象でも寝ます。象より小柄な貴方が効かないはずはありません。
まあ、手術を希望して、麻酔は希望しません絶対麻酔しないで下さい、って言う変わり者はいないはず。いたら結構やばい。
たぶん、泣いて麻酔を受けて下さいとお願いしますので、その際にはよろしくお願い致します。礼。