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婦人科部長の闘病記 Part30
原三信病院婦人科便り30 子宮筋腫②
原三信病院 婦人科 片岡 惠子
京都に行ってきました。・・・といっても観光ではないので、神社仏閣には行きませんし、湯豆腐も会席料理も食べませんが。学会に行くと何がいいかというと
やる気が湧く
これにつきます。
学会発表された色々ってもう、それはそれは「攻めの治療」な訳ですよ。こ~んなことが出来ちゃいました!的なことが多いし、そうじゃないと発表しない。
よって、よせばいいのにそれに触発され、
(なけなしの)やる気が湧く
いいですね。やる気の秋。・・・・片岡です。
年を取ってくると、新しい手技や考え方を許容できなくなるといいますので、毎年この学会で、消えそうなやる気を掘り起こし、次の新しい風を受けたいと思います。来年の学会は大阪、国際会議場。(この近くのおでん屋さんにいつも行く私。お勧めです。)
とにかく炭水化物が大好きなので、お好み焼き、たこ焼き、焼きそば、もんじゃ焼きなどなど楽しみです。個人的にはお好み焼きが楽しみすぎます。
さて、筋腫の治療について話を進めましょう。筋腫は必ずしも治療はしなくてもいい・・・のですが、婦人科に受診される方は大抵治療が必要な人ですね。まあ、困ってなければ婦人科なんかに来やしません。私だって筋腫の治療をしようと思ったきっかけは、外来中にいすが血で染まったからです。過多月経、恐るべし。中には生理中は車の運転席にブルーシートを引いたり、寝るときは大人用のオムツをはいたり、戦士のよう・・が、決まって
私って、生理が多いんでしょうか。
と、聞く。・・・多いよ。とっても多い。
大体、ナプキン換算で「普通の日の昼用」を3~4枚が限度です。それを超えて、40センチのでかいナプキンとタンポンをします、とか、もうあり得ない。いつも私の質問は
昼間も夜用ナプキンをしますか?
で、答えがイエスなら、もれなく「過多月経」認定です。
世間一般の良家の子女は昼間、昼用ナプキンしかしないんだよ。
もちろん、過多月経がなくてもお腹がぽっこり大きくせり出していたりそれが原因でお腹が苦しかったり頻尿だったり便が出なかったり腰痛がしたりしていても治療の対象です。
・・・が、決まって
太っただけだと思ってた~
と、言うよね。そんなはずないじゃん。
人間って恐ろしいもので、じわじわとくる変化には慣れてしまうのです。
見た目がもう、妊娠末期くらいでも
最近、「ちょっと」太ったな~あたし。
で済ませてしまえるあたり、人間って強いな~としみじみ、思う。
そういう大騒ぎしない姿勢もほんとに大事ですけど、たまには自分に向き合って欲しい。
前置きが長くなりました。治療です。
治療は大きく分けて、お薬と手術です。
筋腫は女性ホルモンに反応して大きくなる傾向にあるため、薬はほぼ、生理を止める薬です。
注射(リュープリン、スプレキュアMPなど)と内服薬(レルミナ)があります。レルミナは最近武田薬品渾身の新薬でして、ほんとにいい(注:武田薬品に親戚もいないし、株も買ってない)。リュープリンは実は投与の最初の頃は女性ホルモンをおおいに刺激しちゃうので、1本目の注射の時だけ筋腫はぐっと大きくなります。で、出血しがち。2本目から本来の、女性ホルモンを止め、更年期に無理矢理持ち込む作用が前面に出てくるので出血も止まり、筋腫も小さくなる(はず)。レルミナは内服薬ですが、女性ホルモンを止める作用がリュープリンよりとても早いので、出血のリスクが高い人はこちらがお勧めです。更年期障害が出てくるのはどちらも一緒。ただし、レルミナは新薬のため、令和2年2月まで2週間毎の処方で、このためだけに受診しなくちゃ、なのでこれが割と地味にしんどいかもしれません。でも、新薬の処方のしばりがなくなったら、本当に活躍してくれる薬だと思います。いずれも6ヶ月までしか保険が効かないので、以降も投与を希望する人は自費で処理され、お値段が跳ね上がります。1ヶ月分で、おおよそ5万円くらい。ちーん・・・くすりって高いね~
手術は、筋腫のみ摘出するのか子宮ごと取るのかで大きく分けられます。ここらへんは今までさんざん書いてきたので割愛するとして、どちらもいいところも悪いところもありますよ、とだけしておきます。
今はやりの腹腔鏡は、筋腫摘出だと最大の筋腫が10センチ以下で、10個くらいまでなら、場合によってはしてあげてもいい、と思います(えらそう)。それ以上を超えると、取り残したり、よって再発しやすかったりといいことはないのでお勧めしません。子宮摘出だと推定の子宮重量が500gまで。つまり、10センチx10センチx10センチまで、はなんとかしましょうと。ちなみに筋腫が出来ていない正常の子宮の重さってMSサイズの卵1個分くらい(65g)ですから、私たちがどれくらい頑張っているかが推し量れると思うの、どうかしら。
これはおおざっぱな目安なので、人によって開腹した方がいいこともあるし、子宮鏡を選択した方がいいこともあり、お話しだけで一刀両断はできませんけども、これだけ知っておけば、少なくとも初診の産婦人科のせんせに困惑されるような希望は出てこないと思う(思いたい)。私たちは、患者さんの前に立ちはだかる壁ではなくて、一緒に頑張る登山ガイドのようなもの。うまくクレバスを避けて登頂し、無事に下山するまで責任があるからこそ、そのルートではひどい目に遭いますよと言うしかないのです。エベレストにパーカー一枚で登ろうとしたら大抵のガイドは止めるだろうし、うちの近くの飯盛山に登るのに20キロのリュックは要らないでしょう。そういうのを助言し、適切な山登りを案内したいな、と思うわけですよ。
人生色々、筋腫も色々。
何かのご縁があって、一緒に山に登る(治療をする)ことがあったら、よろしくお願い致します。