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婦人科部長の闘病記 Part19

原三信病院婦人科便り19

原三信病院 婦人科 片岡 惠子

どうもどうもどうも~片岡です。皆様お元気にお過ごしでしょうか。
大雨が降り、台風も来て、どこもかしも大変だというのに
なんと!
夏が来ましたよ・・・

全館空調の整った病院内にいると、季節感が全くありません。外来の診察室は、なぜか座っているいすの真上にエアコンの吹き出し口がある残念な設計で、夏に寒すぎ、冬に暑すぎるため、ホルモンバランスを 整えるのに一苦労です。いやまあ、私のホルモンバランス不調はそれだけが理由ではないけどさー。 設計士さんになぜここにエアコン?と聞いてみたかったです。頭頂部が風でそよぐんで、困ります。寒いです。

先日「悪いヒモと手を切るように、自分のために良くないと思われる子宮は摘出も考えてみましょう」という記事を書いたら、予想外に反響が大きかったです。女性にとって子宮摘出は、乳房と並んで大きな決断が 必要なので、参考にしていただければ。男性はとかく子宮や乳房に冷たい態度を取りがちですけど、 彼らもまた、自分の前立腺や陰茎には細心の注意と敬意を払うと思うの。切除だよと言われたら、 やっぱり辛いんじゃなかろうか。自分の前立腺肥大は棚に上げ、他人の子宮をとやかく言うのはやめてもらいたい。
ま、人類が全員いいひとばかりで、話せばわかり合うことが当たり前であれば、きっと戦争なんて起こらないので、きっと私たちは一部分しかわかり合えないのだろうと思いますけどもね。所詮私たちも前立腺の気持ちは分からないし。そこらあたりの「わかりあえなさ」が芸術や文学になると思われ。いや前立腺じゃなくてね。男女のね。

ところで、例の教祖がとうとう逝ってしまいましたね・・・
一つの時代がここに終わりを告げようとしています。

かの宗教がどんどん勢力を伸ばしていたとき、ちょうど私は大学生になったばかりで、まだ地下鉄サリン事件は起こっていなかったし、頑張っていた弁護士さんも失踪中となっていました。 私の所属していた医学部の同級生にはいなかったものの、噂では他の学部には信徒さんがどうやら いるらしいとの話しも流れてきていましたね。
当時、医学部生は入学したら2年ほど一般教養科目を受講することになっていて、私はなぜだか 「宗教学B」という科目を選択していました。例の宗教を始め、天理教やら創価学会やらの、 いわゆる「新興宗教」を色々比較し、検討する授業になっておりまして、30年経った今でも鮮烈に 覚えているのですが、担当教官が
「あの宗教はいずれ必ずテロを起こす」
と預言されていたんですよね。あの宗教は、そういう教義だから、と。
同時に悲しそうに
「今の宗教学ではそれを阻止する力はないんですよね・・・」
ともおっしゃっておられて、直後にあの神経毒サリンが猛威を振るいました。

亡くなった方はどんなに無念だったでしょう。残された人もどんなに慟哭したでしょう。
大学生だった私は、あんなに詳しく分かっていながらなぜ、学問にこの事件を阻止する力がなかったのだろう、と考え考えしていました。事件は、起こってしまった後ではないと、事件にならないのです。 それから30年。
あんなことやこんなことがたくさんあって、ありすぎて、いろんな人々の人生や命に深く深く 爪痕を残して、とうとうここまで来たかーと感慨深いものがあります。

個人的に
「どうしてあんな汚いおいさんを心から崇めることが出来るのだろう?」とか
「どうしてあんなすごい施設や毒物や武器を作れる人たちが素人にだまされちゃうんだろう?」とか
色々思うところがあるのですが、結局のところ、「孤独」という病気には付ける薬がないんだなと。 そして誰彼構わず感染しちゃうんだろうなあ、とつくづく思います。

私自身は「八百万(やおよろず)」派で、たくさん神様いますよねという思考で、一つの神様だけを信じないと救われないとか、お布施をしないとダメ、とかケチなこと言う神様は信じません。 いや~手術中に大出血したら(時々ありますよ、正直言って)とりあえず手が空いている神様助けて~と無料で祈ります。 祈っていたら大抵なんとかなりますので、きっとどこかに神様「たち」はいるってことで。

誰かが誰かのために何の見返りも望まずに必死に祈る、その姿が一番宗教的で美しく、人の心を打ちます。それは、象のかぶりものも、なんとかサティアンも空中に浮かぶ力さえなくても、十分に人を動かし、 明日を変えます。そういうものじゃないの??