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原三信病院婦人科便り Part50

原三信病院婦人科便り Part50更年期障害②

原三信病院 婦人科 片岡 惠子

きれいな秋晴れが続き、コロナも下火。
めでたい秋です。

この時期が一番好きなんだ~わたし~

とか言っていたら
オットが眉をひそめて、

この時期が嫌いな人いるの?
君だけの秋じゃないから

・・・ってひどくな~い?

秋が好きなんだ~ と来た場合、
そうなんだね~

と相づちをうつ愛情はないものだろうか。大体、おっさんと呼ばれるあの生き物たちは取り扱いが難しい。あちらの話は絶対に一言一句曖昧に聞いてはならないのに、こちらの話は超テキトー。時々上記のような攻撃をしかけてくる。まあこちらも右から左へすっと受け流す術を身につけてきているので、別に困らないけどね。

さて、今回は更年期障害の治療について、です。

一番多いお悩みは
いつ始めて、いつ終わるのか
ってことでしょうか。

前回も書いたが、別に始めなくてもいい。
骨のことを考えたり、お肌と向き合ったりすると、しないよりはした方がいいだろうけど、しなくても死んだりしないし、税金も取られない。投票権もそのままだよ。

だけど生のジャガイモをそのままかじるより、ゆでてポテサラにした方が食べやすいように、人生にもスパイスを振る必要性を感じる。ホルモン療法とはそういったもの。
他の誰一人汗をかいてなくて長袖なのに、あなたがノースリーブでうちわ持参、とかなると、社会的にも見た目にも問題が生じるため、是非治療した方がいいだろう。おおよそアラフィフのノースリーブは凶器(膝小僧も出しちゃだめ)。

大体みなさん、40代前半くらいからおかしい、と感じることが多い。
20代、30代にはたっぷり出ていたホルモンが、出にくくなる時期に相当するからだ。
ただこの時期は病院でホルモン検査をしても、異常が出ないんですな。特に生理が毎月来ている人はまったくの「正常値」で返ってくる。担当の先生が

異常ないですね~
え、このほてりと疲れやすさは気のせい??

というやりとりを4~5回繰り返して一人前の更年期障害になっていく。
実はご本人にそのホルモン量で「足りるかどうか」はまた別の話なので、たとえ正常の範囲でもほてるものはほてる。若造にはそのつらさはわかるまい。まぶしいぜ

そしてようやく誰もがわかる程度のホルモンの異常値が出て、更年期障害との診断を受け、ホルモン療法が始まったりなんだりして、じゃいつまで?

昔、偉い人のお母様が、息子から女性はいつまで女性なのと無粋な質問を受け、火鉢の灰をかきまぜながら、そりゃ灰になるまで、とお答えあそばされたとかなんとか聞くが、理論上、死ぬまで続けた方がいいに決まっている。
決まっているが、おおよそ日本には保険診療なるものが存在し、健康な誰かが支払ったお金を使わせていただいている以上、遠慮しないといけない日もやってくる。悲しいね

いろいろ諸説はあるが、私の場合、まずは55歳程度で、ちょっとやめませんかと勧誘する。
でもたいていやめない。デパートの1階的化粧品よりずっと効果があるため、やめると一気に老けるんじゃないかと心配するため、テコでもやめない。

10年くらい続けると、女性ホルモンの総投与量に比例して(つまり、ホルモン療法を長く続ければ続けるほど)乳がんを発症する率は高まってくるため、それをちらつかせつつ、70歳まで黙って保険診療で続ける。で、それ以降はやっぱり保険を使っちゃだめだよ、それは若者のためのお金だよ、ということでお金の相談をしていくことになる。
日本人は医療保険を使わない、いわゆる自費診療を一般的にはいかがわしく、良家の子女は自費診療をしない風潮が浸透しているが、まあ、他人のお金を使用せず、自分でまかないますと高らかに宣言しさえすれば、診療の自由度は一気に上がる。
ホルモン療法はそんなに高い薬代にはならないため、続けるには腹をくくって、自費診療をお願いすれば良いと思う。でも、しないね~。日本人おとなしいね。
保険診療ができませんとなると、じゃやめます、卒業します、となる人が圧倒的多数なので、たいていそこで長きにわたるホルモン療法は終わることが多いです。

長くなったので、次回。近いうちにまた。