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婦人科部長の闘病記 Part32
原三信病院婦人科便り Part32 手術の心得②
原三信病院 婦人科 片岡 惠子
令和2年・・・オリンピックが延期になっちゃいましたね~
コロナウイルス、かわいい名前なのに猛威を振るっています。
ヨーロッパ、アメリカは医療機関もパンクしつつあると聞きますし、日本もじわじわと広まってきていると感じます。割と踏みとどまっているという印象を受けますが、報道規制?と思しき部分もあって、この国の闇をひしひしと・・・
若者は感染しても死なない、と当初は言われていましたし、死亡率も2%程度とのことでしたが、なかなかどうして、イタリアなどでは死亡率10%と驚異的な率であると報道され、老若男女の区別なく尊い命が犠牲になっています。
侮れない、コロスケ。
神様は人間が嫌いかもしれない。
一般に、人類の60%~80%に免疫の力(=抗体)がつかないと、こういう新しい感染症は落ち着かないんだそうだ(WHOからの報告)。
外出を自粛しても禁止しても結局のところ、薬やワクチンが出てこない限りはもともと備わった免疫の力に頼らないといけませんから、根本的な解決にはならなさそうです。
ところで、日頃マスクをあまりしなかった私なのですが、このご時世、外来でマスクをしていないと嫌われちゃうかしら、と、やおらマスクをしております。
私、マスクで顔がかぶれちゃうので、長く着用するときにはマスク下に鼻セレブを挟んでいるのですが、それが時々鼻の穴に吸い込まれて、くしゃみが止まらない、といった攻防を繰り返しております。婦人科なんで、外来で直接的にコロナウイルスとはふれあうことは少ないもののこういった思わぬ弊害で悩まされています。私のマスクとの戦いにも、早く決着がつくといいです。
さて、手術説明書ですが
術前検査を手術の1ヶ月前くらいに行いまして(採血、尿検査、胸とおなかのレントゲン、肺活量の検査など。子宮を摘出する人は尿管の検査も加える)、その日に手術説明書をお渡しします。・・・これねー、私の超~~~~~~~~~~~~~~~~大作なんで、むげに扱って欲しくない。作るのにものごっつ苦労し、涙と汗が沁みているものなんです。
つらーっと読んで、名前をちゃらっと書いていいものではないのよ。じっくり読んで、できればポストイットとか貼って、ちゃんと質問などして欲しい・・・!!できればどこが難しかった、とかわかりにくかったとか教えて欲しいいいいい~(絶叫)
大学病院にいた頃、作成に取りかかったのですが(それまでは大学病院では担当医が手書きで同意書をいちいち作っていた。アナログ~)、すぐ上の先生が1年半もチェックしてくれなくて放置、お蔵入りになりそうになった、かわいそうな説明書をこちらに異動した時一緒に連れてきて、改訂したモノ、です。私にとっては我が子同然。いや我が子と言っていい。
ちゃんと読むと分かるのですが、「場合によっては死にますよ」的な怖いことも書いてあって、真に理解すると絶対手術なんかしたくなくなります。大抵の場合、何も起こらず死にませんけどね。でも、すごく細かいところまで書いてあって、自分では良く出来ていると思っておるのです。
もちろん、全部きれ~いに理解、心底納得するには医学部で6年間、産婦人科で20年くらい修行しないとダメだと思うんですが、自分のおなかの中のことくらい、自分である程度理解しときたいじゃないですか。いつも説明の時言うんですけど、結局のところ、どんなにひどい目に遭っても、悲しいことが起こっても、その担当医を同じ目に遭わせることはできないの。ご自分で引き受けないといけない。
医療に「シェフのお任せメニュー」は、ない。
一緒にバンジージャンプを飛ぶんですよ。一緒にね。そう、あなたと私は一蓮托生なの。
飛び方、着地の仕方を分かってもらってないと、困るの。
そういう情熱を持って作った手術説明書なので、じっくり読んでいただいて、少しでもひっかかるところはちゃんと教えて欲しいなあと思うのです。
そのためにお一人ずつ、手術の説明の時間を前日に設けています。
ほとんどすり切れた古典落語みたいに決めぜりふは決まっていますが!しょう~じきに打ち明けると、途中で遮られると時々台詞忘れますが!!それでも!
わからないことは先生に聞きましょう。(小学校の時習ったよね?)
そして、できれば御家族にも聞いて欲しい。
実は、人間、「知らんかったがな」が一番怒りを覚えます。
知らされていなかった、この一点に怒りは集中する。
御家族がめんどくさい、説明なんぞ、分からん、聞かんでもええ、と言っても、
必ず聞いてもらった方が、いざ事件が起きたとき(起きてほしくないけど)御家族の気持ちが落ち着きます。
御家族が
「主治医を呼べ~」と怒っているとき、
それは貴方の命が危ういとき。
そして、御家族が呼び出している主治医は、実は貴方の命を救うメンバーのはずなのに御家族の説明に手を取られている・・・。こんな悲しいことありません。
「あ、先生はこんなことが起こるかもしれんと言っていた。ひとまず待とう」
こう御家族に思っていただくことが、手術説明の本来の目的なのです。