診療科紹介
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婦人科部長の闘病記 Part15
原三信病院婦人科便り15
原三信病院 婦人科 片岡 惠子
あまりにも寒いので,ちかごろ、某ブランドのなんとかテックを二枚重ねの上,通常のセーターにライダーズジャケットを羽織って、さらにダウンコート着用の片岡です。しかもスカートの下には「大人のブルマ」なるガードルをはいています。これでもか、と防寒しているのにまだ寒い。皆様,どのように寒さに立ち向かっておいでですか? うちのオットなど、スポーツ刈りという「ぼうず」の一種のような髪型をしているため、頭が寒い,といって防空ずきんによく似たフード付きネックウオーマーなど愛用しております。女子で良かった。とりあえず頭の防寒は自前でまかなえる。
しかし、毎春「痩せたね」と周囲に指摘される私ですが、単に上記の防寒具を脱いだだけと思われ、おしゃれとは、きれいめとは、と自問する毎日です。私が察するに,おしゃれとは寒いときにより寒く,暑いときにより暑いもので、つまりやせ我慢なのだね。我慢が足りない私です。
受験生の皆さんももしかしたらこちらのブログを読んでいただけているのかな-。
もしかしたら医学部に入ろうかなと思っている人が読んでくださっていると仮定して今回はブログを書いています。
私は某国立大学医学部出身なのですが、医師国家試験の夢はちいとも見ないのに,センター試験を受ける夢は未だに「頻繁に」見てしまいます。大学受験はきつかった。ちなみに私は人並みに一浪しておりまして、今は懐かしい代々木ゼミナール小倉校の一期生でありました。とにかく数学と物理が苦手な学生で,頭の中は完全に左脳ばかりを使う状態。右脳はほぼ休眠。なのに医学部は数学がかなり重要な位置を占めるんですよ。ほんとうに苦しみました。数学が得意なひとに言わせると,受験数学は数学ですら、まだないそうな。ちぇっ。
医学部に入学しても1年生の間はまた数学や物理があったんですが(今はどんなカリキュラムなんでしょうね?)、周囲はそんなこんなでいとも簡単にもっと上級の数学をこなしちゃう。一見あほそうに見える同級生がすらすらとなんでもないことのように難問を解いちゃうところを目の当たりにして,
「・・・えらいところへ来てしまった」
という、場違い感が半端なかったです。思いっきり単位が危なかったので、田舎者の私ですら知っているようなすごーく偏差値の高い高校出身のお友達に、せっせと数学を教えてもらいました。懐かしい。今は足し算とかけ算,欲を言えば引き算ができれば大丈夫だよ!!数学なんていらないよ!たぶん物理もいらないよ!
今は二次試験にも面接なる口頭試問があるそうですね。聞くところによると、その大学の志望動機から自分の長所や短所を尋ねるに止まらず,昨今の医療問題について議論させられたり、意見を求められたり、大変らしい。しかも答えようによっては「禁忌選択肢:それを言ったら不合格」的なものもあるんですって。怖いねえ。
入学当初の自分を振り返り,何にも考えておらず、日がな1日部活動とその大会のことだけ考えていました。卓球部に所属していたのですが,団体戦のオーダーをいかに組むか「だけ」に頭脳を費やしていた日々を懐かしく,そして今,ちょっとだけ恥ずかしく思いだしています。
いや、もちろんいろんな医療問題に若いときから己の意見を持ち,高邁な目的を持って医師になるべく精進・・・するのは大事なことの一部であるとは思います。でも、私は日々診療をするにあたって、ほんとうのほんと~うに大事なことは
「自然発生的にひとに親切にすることができる能力」
だと思う。要するに
「かわいそうに。気の毒に。力になってあげたい」
という気持ちですね。
最終的には、もう、それしか原動力がないことがあります。
しかも、しかもですねえ、その親切が「仇」になることがあります。
親切からしたことが、逆に悪い方向になってしまうことが、ありうるんですよ、この業界。
そのときは謝るしかない。親切にしたつもりの人から罵られ,恨まれ,もしかしたら裁判で訴えられてしまうかもしれない。せっかくの気持ちが通じないことが,あり得ます。
それでも、親切にし続けること、そして親切にし続けることができる技術力があること、これが、今の私を支えています。
高邁な目的でもなく、何かの使命感でもなく、せっせと縫合結紮の練習をし、いろんな書類を泣きながら書き,各部署の調整をし、渋る病院に婦人科用の機械を買ってもらうよう働きかけ脅しをかけ、頭が痛くて肩がもげそうでもそれでも手術が大好きなのは、最終的に親切にしたひとに「ありがとう」と言ってもらいたい、その一心から、なんだなあ。
その日々の診療の上に、あの医学部の面接で聞かれるとされるような
「10年後の自分は何をしていますか?」を聞いてみて欲しい。20歳前後の青二才に聞くようなことではないと私は思う。卒後10年目なんて洟垂れ小僧,この業界ではかなりの若手ですもん。まだ総合病院の一角で,下働きをしていますよ、きっと。
私が面接官だったら、未来の臨床医を採用すると仮定して、やっぱり
「人間が好きな人」に医学部に入って欲しいかなと思います。
人間は嘘をついたり悪事を働いたりしますし、時に人を傷つけたりすれ違ったり誤解を招いて悲しい目に遭ったりするわけですが、それでも、「人間を諦めない」人と、ぜひぜひ一緒に働きたいです。
ちなみに、研究職は別に人間が嫌いでも大丈夫で,そのかわり寄生虫とかウイルスとか大腸菌とか好きだったら問題ないです。ええ。最低限の日本語と少しの英語がしゃべれれば事足りる・・・かもしれない(推測)。