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婦人科部長の闘病記 Part11
原三信病院婦人科便り11
原三信病院 婦人科 片岡 惠子
ウチには小生意気な小娘がおりまして、先日選挙権もゲットしたばかりなのですが、ヤツが
「ホームページの原稿が長すぎるから。短くしないと最後まで読んでもらえないよ」
と意見を言うので、一編一編を短めにしております。片岡です。
秋のドラマが始まりました。
日本産科婦人科学会推薦(と、思われる)コウノドリ、観てますか?
ドクターXと並ぶ医療系ドラマですが、ドクターXがファンタジーだとすると、コウノドリはほんとうに、等身大の医療の「現場」です。原三信病院では平成15年からお産を取り扱っていないので、かれこれ4年ほど私もお産から離れているのですが、先日コウノドリを観て目玉が溶けるか、っていうくらい泣きました。一緒に観ていたオットが「鬼の目に涙、背番号は59(号泣だから)」と心配するくらいです。たぶん他の人と泣きのツボがちょっと違うと思うんですけど、ああ、あんなことあった、こんなことあった、というフラッシュバックで胸がいっぱい。泣けて泣けて仕方がなかったです。ちなみに、泌尿器科の先生も「泣けた-」と言っていました。いろんな意味で、涙活に最適かもしれない。
妊娠は病気じゃないと言われますが、実は妊娠したというだけでぐっと死亡率は上がります。福岡県で一年間に交通事故で死ぬ確率がおおよそ1万人に一人くらいに対して、いわゆる妊産婦死亡は1万4千人に一人、と肉薄しています。仮に命に危険が及ばずとも、正常値という正常値が全てスライドするし。考えても見てください。あんなに大きな骨の塊をおなかの中で作り上げるだなんて、どれくらいカルシウムを持って行かれることでしょう。昔は子供を一人生むと歯が一本欠けると言われていたそうです。文字通り、女性は「命を削って」新しい命を生み出します。よく、妊娠した女性に辛く当たる人がいますけど(仕事ができない、とか休まれて迷惑、とか)人間の社会は人間がいないと成り立たないので、人間を作り出すこの悠久のシステムには敬意を払うべきだと思います。私たちが頼り切っている「ひとの社会」はひとえに命を送り出す、母のドラマで成り立っている。よって少しくらい優先席を譲ったり、いつもより労ったりしてあげてもいいんじゃないの、と個人的には思うわけです。もちろん、誰かの厚意にあぐらをかいて、
「妊婦さまなるぞ、ひれ伏せ~」
となるのも違うとは思いますけどね。過ぎたるは及ばざるがごとし。
それに引き替えドクターXのお気楽なことよ・・・!あれはおとぎ話として見ることができるので、自然に楽しめます。結局ヒロインが患者さん助けちゃうしね!失敗しないしね!末期の膵臓がんまで助けちゃうしね!もう、凄腕過ぎて、文句の挟みようもない。欲を言えば、ヒロインが家庭を持って赤ちゃんを産んで、それでも「私 失敗しないので」と続けられるところが見たいです。想像がつかないけど。