前回までの Celeron J4125 搭載産業用ミニPCのハードウェアレビュー、そしてWindows 10をインストールしてのパフォーマンス確認に続き、今回は OpenWRT をインストールして、Intel I225 ネットワークアダプタとIntel AX210 WiFi6Eモジュールの互換性を確認します。
OpenWRT x86_64イメージの取得
OpenWRTのx86版インストールは今回が初めて。本機に搭載されているIntel I225イーサネットコントローラに対応して欲しかったので、イメージファイルは本記事執筆当時最新のver.22.03.0-rc6のx86_64汎用版を公式リリースページでダウンロードします。
いくつかのシステム仕様の中から選んだのはNanoPi R2Sと同様に、恒久的なファイルシステムで構成されるext4版のこちらのイメージファイルです。
OpenWRTシステムをSDカードへ構築
今回はネットワークアダプタ(Intel I225やAX210)がOpenWRTで使えるかの検証用なので、以前のNanoPi R2Sと同様、1GB micro SDカードにそのシステムを構築し、USBカードリーダを使ってJ4125ミニPCで起動させようと思います。
Ubuntu 18.04母艦で、ダウンロードしたイメージファイルから起動用SDの作成します。
イメージ書き込みが終わったら、SDカードのファイルシステムを gparted で800MBに拡大します。
ネットワーク初期設定
OpenWRTのシステムを入れたmicro SDから初めて起動すると、4つあるI225イーサネットポートのうち、 eth0 はLAN、 eth1 がWANに割当てられていました。これをコンソールより、 eth0 をWAN、 eth1〜3 をLANへと変更します。
そして二重ルータと同じ要領で、既存のLANをOpenWRTのWANポートへ接続し、以後の検証作業をOpenWRTのWAN側から進めたいのですが、デフォルトではアクセスできません。
Dropbear ssh serverやLuCI(uhttpd)元々、WANを含む全インターフェイスでLISTENしているので、以下の要領でファイアウォールに穴を開けるだけでWAN側からアクセス可能になります。
WAN側からブラウザからLuCIへアクセスしてみます。
Memory項に計16GBのRAMと、Storage項はSDカードの800MBファイルシステムが認識されています。
続いて、ターミナルからシステムの基本情報を確認してみます。
I225有線インターフェイスの確認
ネットワークインターフェイスは次のように、 eth0 がWAN、それ以外がブリッジインターフェイスにまとめられた上でLANに設定されています。
ネットワークデバイスタブでは、全ての物理・論理デバイスが一覧されていました。
br-lan の設定を確認すると、この中に eth1〜3 が属しているのが分かります。
AX210 WiFi6Eモジュールの確認
一方、Intel AX210 WiFi6Eモジュールは、そのままでは認識されないので、以下のパッケージをインストールする必要があります。
- kmod-iwlwifi
- iwlwifi-firmware-AX210
- hostapd
インストールを終えてデバイスを再起動した後、AX210が使える状態になります。
フォーラムで報告されている通り、これでクライアントモードでのスキャンは2.4G・5G帯共に動作するものの、APモードは5G帯は使用不能な状態から抜け出せません。
2.4G帯で使えるようにするには、まずチャンネルをAutoにせず指定し、Advanced Settingsタブ内にあるカントリーコードの設定もデフォルトのままにせずに明示的に指定します。
その上で11n〜11ax各モードでサポートされる接続速度をまとめると次のようになります。
11axで帯域幅80MHzを指定してもその通りには動作せず、 Advanced Settings タブ内の Force 40MHz mode オプションにチェックを入れていると40MHz、そうでない場合は20MHz帯域幅になってしまいます。
実際にASUS ZenFone8Flip(ZS672KS)で繋いでみても、WiFi6とは認識されるも573Mbpsまでしか速度が出せない状況でした。
OpenSSLとCoreMarkでベンチマーク
x86系するとどの程度速くなるのか、以前ARM系の様々なデバイスで計測した、OpenSSLとCoreMarkでベンチマークしてみます。
先ずは、OpenSSLに必要なパッケージをインストール。
早速、 aes-256-gcm のシングルとマルチを実行してみます。
続いて、 chacha20-poly1305 でも同様にシングルとマルチを計測します。
次にCoreMarkパッケージをインストールの上、計測します。
以上の結果をまとめると以下の通りで、さすがにARM系とは一桁違う速さを見せつけられました。
RC版ならではパッケージ一括更新
今回採用したOpenWRTは日々開発が進行しているRC版なので、インストールから数日経ただけで、更新が必要なパッケージがズラズラと現れます。
こんなときこそ、NanoPi R2Sの際に試した、一括更新ワンライナーの出番です。
今回の検証でも引き続きWiFiモジュールが鬼門でした。OpenWRTにおけるWiFi USBドングル比較の際、
相性の良かったMediaTek製のモジュールをいくつか手配したので、次回試してみます。