「死んでいた方がまだ諦めがついた…」4億円級納車トラブル被告の初公判を傍聴した被害者の慟哭
長野県の自動車販売業「デュナミス・レーシング」を巡る新車購入代金詐欺事件について、詐欺罪に問われていた同社の元社長、小谷徹の初公判が2月27日、長野地裁で開かれた。車いすで入廷した小谷被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。上記の写真のように、エネルギッシュに活動していた頃の面影はなく、白髪染めが取れ掛かって茶色くなった部分と白髪が入り混じった伸び放題の髪は整髪もされておらず、実際の年齢より老けて見えた。
起訴状などによると、小谷被告は車を発注して引き渡す意思、そして支払い能力がないにもかかわらずうそをつき、2021年11月から翌22年1月までに長野県小諸市の30代男性Aさんから320万円、須坂市の40代男性Bさんから400万円、30代女性Cさんから200万円をだまし取った。
検察側の冒頭陳述によると、1995年に創業した「デュナミス・レーシング」の経営は2007年から赤字に。2013年の時点ではメーンバンクから新規の貸し付けを受けられなくなった。2016年ごろから顧客に車の購入代金の先払いを求め、期限になっても納車されないことが1年に複数件発生するようになっていた。
2020年に入ると新型コロナウイルスが蔓延し、同年末から小谷被告が脳梗塞を患ったため、さらに経営が悪化。翌21年春頃からヤミ金融からカネを借りるようになり、同年10月までの同社の債務残高は4800万円にのぼった。お客から振り込まれたお金は、すぐにヤミ金融への返済やほかの客への返金のために使われていたことも裁判で明らかにされた。
2月27日、初公判の傍聴に訪れ、400万円を小谷被告に払った被害者Bさんはこう明かす。
「小谷社長と会うのは今日が初めてでした。印象は『ヨボヨボのお爺さん』と思いました。また被害者に対して反省の色はなく、面倒臭そうな感じでしたね。罪を素直に認めれば 、情状酌量をもらえる、というような弁護士との打ち合わせのストーリーを感じました。ヤミ金から逃れて安心している感じもありましたね。刑務所に入って三食たべて、借金の取り立てからも解放されて平和に過ごすと思うと頭にきます。
私は知人の紹介で電話をして車の購入を決めたのですが、公判で会うまでは結局、一度も会うことはありませんでした。何度か私から小谷社長に『大きな金額だし大事なことなので会って話をしたい』と申し出ましたが、『今はコロナで会えない。皆さんとも電話とメールでやり取りしている』と言われ、会えませんでした。たとえ、1000円でも1万円でも返してほしいです。誠意を見せてほしい。精一杯、重い刑を与えてほしいです」
デュナミス・レーシングにお金を払ったけど納車されない…という人はもちろんAさん、Bさん、Cさんの3人だけではない。FRIDAYデジタルのこれまでの取材では、納車にまつわるトラブルだけで100人以上、さらに小谷被告に金を貸して返ってきていない知人や友人、元従業員や店舗と工場の家主などを合わせると被害者の数は200人以上とみられる。
被害者の購入車種は、400〜500万円はするトヨタ・アルファードを筆頭に、トヨタハリアーに加え、150万円のスズキスペーシア、輸入車では1500万円ほどするメルセデス・ベンツGクラスなどミニバンやSUVが多く、それらを足していくと、単純計算で被害総額は4億円にのぼるとみられていた。