どこから出てきたのか「コオロギ事業に6兆円」の虚偽情報
ここに列記したものが象徴的であるように、総じて批判する書き込みは「コオロギ食」に国から補助金がでていることに反発、不満を示して理由にするものがひとつの特徴だった。そこへ加えて、そんな金があるならいま窮状に追い込まれている酪農にまわせ、という理屈がやたらに目立つ。
だが、これは全て嘘だ。コオロギどころか昆虫食に補助金や公金、税金が注ぎ込まれている事実はない。農林水産省に確認している。
それが追体験できるように、単純な取材の仕方を教えよう。
まず、農林水産省の代表番号に電話をする。交換の受付が出るから、そこで「コオロギや昆虫食の補助金について聞きたい」と申し出る。そうすると、担当部署に繋いでくれる。
電話が繋がったのは、省内の「新事業・食品産業部 フードテック官民協議会事務局担当」。そこで単刀直入に質問すると「昆虫食に限った補助金は特にない」という答えが返ってきた。
この部署では、代替タンパク質や培養肉、オートメーション調理などの新しい技術の実証事業に補助金を出す。それも補助金を求める事業者が応募して、審査を通った者だけが得られる。そこに「昆虫食」の枠があるわけでもなく、応募もないという。ただ、令和4年度予算から補助金がでている実証事業に昆虫に関するものがあるが、これは食用ではなく飼料に使うものだ。
この部署以外で昆虫食に補助金がでるようなことは「思い当たらない」といい、そもそも実証事業に補助金を出すようになったのも令和3(2021)年から。それ以前に昆虫食に出しているものもない。農林水産省以外の省庁でも「今のところない」という。まして、コオロギ食に限ったものなど「ございません!」ときっぱり。
ただ、ひとつだけ言及しておくと、農研機構が進める「ムーンショット型農林水産研究開発事業」で、『地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた昆虫が支える循環型食料生産システムの開発』とするコオロギなどの昆虫食の研究があるが、事業者への補助金などではない。