誹謗中傷・名誉毀損
発信者情報開示請求の成功率は?成功例・失敗例を弁護士が解説!
インターネット上で誹謗中傷をされた場合、発信者情報開示請求をして相手を特定したいと考える人は多いと思います。
ただ、発信者情報開示請求は、基本的に裁判所での手続きとなり、裁判所は権利侵害がないと発信者情報の開示を認めませんので、裁判所に申立てさえすれば、必ず認められるという訳ではありません。
発信者情報開示請求をしたいと考えている方にとって、その成功率はどのくらいなのかという点は気になるところだと思いますので、本記事では、どのような場合に成功して、どのような場合に失敗するのか、という点も含めてご説明していきたいと思います。
目次
1.発信者情報開示請求の成功率は?
実際の発信者情報開示請求の成功率はどのくらいなのでしょうか?
残念ながら、この点については当事務所で調べた限り、公表されている統計などはありませんでした。
そこで、当事務所の実績を集計したところ、成功率は約70%であることが分かりました。
もちろん、当事務所ではインターネットトラブルの専門チームがありますので、専門チームがない他の事務所よりはノウハウがあるという側面もあるでしょうし、認められる可能性が低いものについては、ご相談の段階でその旨をご案内していることも影響していると思います。
ですので、この約70%という成功率が裁判所に申し立てられている発信者情報開示請求全体の成功率とどのくらい差があるのは不明です。
ただ、発信者情報開示請求は、ご自身で申し立てるより弁護士に依頼した方が成功率が高くなると言えますし、依頼する弁護士に専門的な知識があるかどうかでも成功率が変わると思われます。
以下では、発信者情報開示請求が成功する場合、失敗する場合についてご説明します。
2.発信者情報開示が成功する場合
発信者情報開示は、誹謗中傷する内容が書き込まれた掲示板やSNSなどの運営会社に対して、IPアドレスなどのアクセス記録の開示を求める申立てを行うところから始まります。
裁判所は、問題の投稿によって、開示を求める人(債権者と呼ばれます)の権利が侵害されていると判断できる場合に、発信者情報の開示を認めます。
ここでいう権利は、以下のようなものが想定されます。これらに加えて、最近ではリベンジポルノによる権利侵害も増えています。
①名誉権
問題の名誉棄損行為によって、債権者の社会的評価を低下させられた場合に名誉権の侵害と認められます。
②名誉感情
問題の侮辱行為が、社会通念上許容される限度を超えた場合に名誉感情の侵害が認められます。
③プライバシー権
問題の表現行為が、債権者の私生活上の事実で一般的に公開を欲しないであろう事を公にするものである場合に、それによって債権者が被る被害の程度などのいくつかの考慮要素によって権利侵害が認められるか総合的に判断されます。
④アイデンティティ権
なりすまし行為をされた場合に、そのなりすましによって受ける不利益を総合的に考慮して、人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合にアイデンティティ権の侵害が認められます。
⑤肖像権
写真の無断使用などの行為によって、みだりに自己の容ぼう等を撮影された写真を公開された場合に、それによって債権者が被る被害の程度などのいくつかの考慮要素によって権利侵害が認められるか総合的に判断されます。
3.発信者情報開示が失敗する場合
では、どのような場合に発信者情報開示請求が認められないのでしょうか。以下では、認められないパターンを説明します。
①同定可能性が認められない
裁判所が、問題の投稿によって債権者の権利が侵害されているかどうかを判断する前提として、問題の投稿が債権者に関するものと言えなければなりません。
例えば、インターネット上の掲示板に誹謗中傷する内容が投稿されていたとしても、それが誰に対するものなのか特定できなければ、権利侵害があったとは認められません。
つまり、債権者が自分に関する投稿だと思っていたとしても、投稿内容から客観的に債権者に関するものだと判断できなければ権利侵害は認められないということです。
②権利侵害が認められない
発信者情報開示請求における権利侵害は、上記でご説明したようなものが考えられますので、逆に、これらが認められない場合には発信者情報開示請求が認められません。
例えば、名誉を棄損し得る内容(悪口)ではあるものの、それだけでは社会的評価を低下させるとまでは言えない程度にとどまり名誉権侵害と判断されない場合や、侮辱行為ではあるものの、社会通念上許容される限度を超えるとまでは言えずに名誉感情の侵害と判断されない場合などがあります。
③アクセス記録が消えてしまっている
問題の投稿がなされてから長期間が経過してしまっている場合、プロバイダのアクセス記録が消えてしまいます。
そのため、消えてしまってから裁判所に申立てをしても、投稿をした人物を特定することはできません。
ですから、発信者情報開示請求は、誹謗中傷等の投稿に気が付いたら早急に申し立てる必要があります。
4.まとめ
今回は、発信者情報開示請求の成功率、成功するパターン、失敗するパターンなどについてご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
成功率以前の問題として、長期間経過してしまうと発信者の特定は不可能になってしまいますので、インターネット上の誹謗中傷でお悩みの方はなるべく早く弁護士にご相談されることをお勧めします。
少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。
相談無料初回60分
投稿者プロフィール
-
弁護士法人PRESIDENTの協力弁護士として、ネットトラブルなどの案件を担当。
法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
弁護士法人PRESIDENTとともに、皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院終了
2010年12月 弁護士登録
2010年12月 都内大手事務所にて勤務
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)
最新の投稿
- ネットトラブル2023.02.09YouTube動画の削除依頼方法と費用相場を弁護士が解説!
- ネットトラブル2023.02.09ネット誹謗中傷の削除請求の弁護士費用の相場は?弁護士が解説!
- ネットトラブル2023.01.12発信者情報開示請求の費用相場は?費用は相手に請求できる?
- ネットトラブル2023.01.12DMで誹謗中傷された場合、相手の特定や慰謝料請求はできるの?