原三信病院婦人科便り Part57医学部学生さん　進路を悩まれている方へ

原三信病院　婦人科　片岡　惠子

7月になったばかりだというのに
暑さ全開。
毎年この時期のﾌﾞﾛｸﾞに暑い暑い書き散らし、さらに暑さを増長させています。片岡です。
更年期の身にはとても辛い季節がやって参りました。

ただでさえ汗で化粧が流れていくというのに、ﾏｽｸを着用。
ﾏｽｸの裏側にﾌｧﾝﾃﾞｰｼｮﾝで魚鐸（ぎょたく）ならぬ顔鐸ができている。
もはや顔の下半分は塗らなくてもいいのではないか、という気持ちに毎朝襲われますが、ぎりぎりの矜持で踏みとどまっております。皆様はいかが。

うちの柴犬・小次郎の散歩に毎日懊悩。
ｱｽﾌｧﾙﾄって、ほんとに熱くなりますね。目下楽天ｾｰﾙで犬用の靴を買おうかどうか悩んでいるおﾊﾞｶなわたくし。50代の夫婦が家の前の道路にうんこ座りして、温度を確認している姿はちょっと笑える。

さて、ご質問が来たので、忘れないうちにお答えしておく。
医学生さんから質問来たよ、ありがとう～！おばちゃん嬉しい。
気持ちはまだまだあなたたちと同じくらい（厚かましい）なんですけど、経験・体験だけは重ねちゃったﾜﾀｸｼがあなたの疑問にお答えします。

どこの科を選んだらいいですか？

・・・質問もかわいいぜ！ハグ！

まあ、ぶっちゃけ、どこの科を選ぼうと、あなたの人生は花開いていく。

せっかく勉強して医者になるのだもの、患者さんに直接的にでも間接的にでもお役に立てることだろう。研究者でもいいし、実働部隊でもかまわないよ。好きだなと思うところを選んだらいい。
こないだ福岡の朝の情報番組「ｱｻﾃﾞｽ！」で最近の若い人は「3年くらい様子を見る」ことはしないでさっさと見切りをつけ、次に転職する、と言っていたけど、やっぱり3年くらいは一度決めた道ならば我慢してみた方がいいと思う。

なぜなら私がそうだったから。
麻酔科を考えていた私はそこで女はいらねえと言われて、直後、優しくしてくれた産婦人科にうっかり入ってしまった。
それは、大好きな彼氏に振られた直後に、男友達と仲良くなってしまうのに似ている。弱くなったとき、ついよく相手のことを知らないのにつきあい始め、後悔することは恋愛あるあるだと思うが、いかが。
それと似たような状況だったため、産婦人科に入局して2年くらいは涙、涙だった。
大学では内科と外科は割としっかりめに勉強させられるが、産婦人科なんてマイナー、あまり比重がないから、ほんとに未知との遭遇。
産婦人科医になってから勉強し始め、はー、とかへー、とか、はひふへほ五段活用の毎日だし、実際患者さんにできることと言えば手を握るとか添い寝するとかくらいで、下剤の処方もいちいち上級医師に聞かねば恐ろしくてできない。そんな、てんで使い物にならない時点からのスタートだから、辛いことこの上ない。
分娩室では助産師さんに、集中治療室では手練れの看護師さんにどつかれ導かれ、上級医にこれでもかと鍛えられて人は成長する。気がつけば30年弱、同じ職業に就いている。

で、結局のところ、いろいろ条件や選択肢の中で「好き」しか残らないというのが私の結論である。給料や勤務条件は変わることがあるが、生理的な好き嫌いは終生、変わらない。どうしてもにおいがいやな相手と結婚することを考えてみてほしい。どんなにｲｹﾒﾝでも美女でも、相手が終始、くさかったら毎日楽しくないと思うがどうだろう。

そして人間はいつでも変われるし、成長できる。

よく、研修医の2年がその後を決める、とか言われていないだろうか。
確かに基礎を形成するのに大事な時期ではあるが、その時期にモラトリアム（一時停止）に陥ったとしても、その後の医者人生は長い。「好き」さえ味方にしてしまえば、ちゃんとその道で一流を目指せるので全くもって、心配ない。
まあ、「好き」の質も変わってはいく。
それは一度結婚した相手への評価が変わる、あの感覚と同じだろうと思う。
月日が「好き」をブラッシュアップして愛に変化することもあれば、やっぱり他に目移りしたり幻滅したりすることもあるだろう。人間だもの。変わっていいのじゃないかと思う。だから勇気を持って、「好き」を追求して良いと思います。

で、今はしっかり好き嫌いなく勉強して、まずは国家試験に通ってくれたまえ。
9割が受かるはずだが、若干名はやっぱり選別されてしまう。
国家試験に通らないとｽﾀｰﾄﾗｲﾝにも並べないんだから、そこは踏ん張ることをお勧めする。
勉強したことはあなたを裏切らない。きっといつか、お役に立ちますよ。