選べるジェンダーレス標準服、性差なく 三豊市7中学校で新年度導入
「男子は詰め襟、女子はセーラー服」。長く続いてきたこんなルールが、香川県三豊市内にある七つの中学校で一斉に変わろうとしている。生徒の誰もがスラックスかスカートかを選べる性差のない「ジェンダーレス標準服(制服)」を新年度から導入することが決まった。制服への違和感で悩む性的少数者への配慮が一番の狙いだが、「当たり前」を見直すことで多くのメリットも期待できそうだという。
三豊市立の6校と、三豊市観音寺市学校組合立の1校が対象。来年度から3年間の移行期間を設け、在校生は従来の制服か新しい標準服か選べるようにする。
新しい標準服は、上が共通デザインの濃紺のブレザーで、下がチェックのスカートかスラックスかを選べる。エンブレムや袖口のボタンはあえて付けず、シンプルに徹した。ブレザーの下をポロシャツにするかシャツにするか、ネクタイやリボンをつけるかなどは、各校で今後決める。価格は上下で標準的な4万5千円程度を想定している。
提案は昨秋、校長会がした。三豊市は県内で初めて、性的少数者のカップルの関係を公的に認めるパートナーシップ・ファミリーシップ制度を整えた自治体だ。心と体の性が一致しないトランスジェンダーの生徒を念頭に、市全体で取り組もうと、7校の校長とPTA会長で検討会を立ち上げ議論を重ねた。最終デザインはメール投票で生徒と保護者の意向も聞いた。
生徒の誰もが自由に選択できるようにすることで、性的少数者の生徒が自らの性自認を不用意に周囲に知られないメリットがある。
中心を担ってきた三野津中学校の宇野誓起(せいき)校長(60)は「性の多様性に対応するとともに、すべての生徒、保護者にとっても健康面、経済面から良くなるよう考えた」と振り返る。
セーラー服では中にセーターなどを着込みづらく、保温用下着を重ねてしのぐ生徒もいた。ブレザーは気候や体調によって脱ぎ着しやすく、ベストやセーターで調節の幅も広がる。寒さ対策としてスラックスを選択してもいい。
ブレザーの袖をシンプルにしたのも、成長期でも長く着られるよう袖丈を調節しやすくするためだ。制服のリユースも進むなか、市内で統一すれば出回る数も増え、利便性が高まるという効果も期待できる。
「私も長く生徒指導に携わってきたが、なぜこれでなければいけないか説明できないものもあり、固定観念を見直す時に来ている」と宇野校長。三野津中ではひざ上ソックスやタイツも認めているといい、「それぞれの自主性として標準服の着こなしを工夫してもらってもいいのではないか。すべての生徒が服装で悩まず、自分らしく学校に通えるようにしたい」。
県内の公立中では、高松市立一宮中学校や綾川町立綾川中学校が今年度、ジェンダーレス制服を導入した。
四国4県の各県教育委員会によると、制服のデザインはそのままでも、女子がスラックスを選べるようにする動きは広がっているという。(多知川節子)
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