今回は、前回に引き続き、手元にしばらく置いていたウイスキーを処分目的で飲んでいきます。それは2015年3月に発売された、ニッカウヰスキーの初号スーパーニッカ復刻版です。

亡き妻に捧げた最上位ボトル

_DSC6934_011962年にスーパーニッカが誕生しましたが、当初は年間1000本未満しか製造できなかった最上位の銘柄でした。

その理由は採用していたボトルにありました。
現在も高級なクリスタルガラスや江戸切子調のガラス製品を製造しているカガミクリスタルに発注し、手吹きによって作られていたからです。
そのため、一本ごとにボトル形状が細かく異なっていたそうです。

これだけのこだわりを持って作られたスーパーニッカを生むきっかけとなったのが、前年に死去した、創業者である竹鶴政孝の妻、リタへ捧げるためでした。

竹鶴政孝がスコットランド留学中に知り合い、日本で本格的なウイスキーを作りたい願いに共感し、結婚、日本へ渡ったリタは、竹鶴が壽屋(現:サントリー)、そして設立した大日本果汁(現:ニッカウヰスキー)でウイスキー作りを行う中も支えてきました。

特にリタは大日本果汁の創業時に、ウイスキーの熟成の合間に行っていた、地元余市のリンゴを使ったジュース事業で苦戦を強いられる中で、スコットランド時代に得ていた、リンゴを使ったジャムやワイン、ブランデーなどを作ることを提案したと言われています。
現在も売られているアップルワインやニッカブランデーは、ある意味リタの功績と言っても過言ではないでしょう。

竹鶴政孝と相思相愛だったと言われているリタが亡くなった際、竹鶴政孝はその死をしばらく受け入れられず、号泣し、部屋にしばらく引きこもっていたと言われています。
しかしながら、結婚を決めるときに言った決意の言葉を思い出したことで、最高のウイスキーを作ろうと決心したとされています。

当時は宮城峡蒸溜所もなければ、カフェグレーンのウイスキーも熟成の段階には入ってなかったため、初号ブラックニッカ同様に余市モルトとスピリッツをもとにブレンドすることとなりました。
こうしたこだわりがあったことで、最初のスーパーニッカは幻のウイスキーと言われていました。

その後、涙滴型のボトルの量産が可能になり、カフェグレーンや宮城峡のモルトも使えるようになったことで、年を追うごとに手軽に買えるボトルへと変貌していきました。
現在は500mLボトルで2000円ほどの値段です。

テイスティング

グラスからの香り、液色

グラスからはレーズンの香りが広がっているのがわかります。

液色は少々濃いめの琥珀色です。

ストレート

余市モルトならではのスモーキーな香りが一気に広がります。その後レーズン、リンゴの香りが続き、カカオ、バニラ、樽香が続きます。

味わいは、アルコールからの辛みは抑え気味で、後から酸味とほろ苦さがやってきます。

ロック

レーズンの香りとスモーキーさが半々にやってきて、リンゴ、ライム、シナモン、カカオの香りが続きます。

味わいは、ほろ苦さが先行した後、酸味が続き、最後に甘さで締めます。

ハイボール

レーズン、リンゴの香りが広がり、その後ピートからのスモーキーさが続きます。

味わいは、酸味が先に訪れ、ほろ苦さが追いかけてきます。甘さはあまり感じられません。

余市モルトが前面に押し出されたブレンド

上記の通り、最初のスーパーニッカが出たときは余市モルトでしか勝負が出来なかったこともあり、雰囲気としては現行のシングルモルト余市に近いイメージです。
違いとしては、ピートの香りに潮の香りが少なく燻製香に近いイメージで、シェリー樽原酒の割合が多い感じです。

現行品はカフェグレーンと宮城峡モルトが加わることで、とてもスムーズで飲みやすく、上品に感じられますが、初号においては当時の余市モルトにおいて十分熟成が進んだ上質なものを選んだというのが理解できるものになっています。

癖のあるウイスキーが好きな人にとっては、現行よりも好きになれるかもしれません。

復刻版の発売当時は、3000円台前半の値段でした。現行のスーパーニッカよりも少々高めという値段設定でした。
現在はオークションで5000円台、ネットショッピングでは9000円ほどの値がついているようです。

<個人的評価>

  • 香り A: 余市モルトらしい燻製のようなピート、そしてレーズンとリンゴ、カカオ。
  • 味わい A: 酸味とほろ苦さがあるが全体的に穏やか。
  • 総評 A: 余市モルトの個性があるが、比較的まろやかで心地よい。