反応を見る限り効果的な法案
もちろんそれでは習主席と習政権は大変窮地に立たされることとなる。法案が法律として成立した後で台湾併合戦争を強行すれば、軍幹部を含めた共産党政権の幹部集団のほぼ全員を敵に回してしまうし、彼らによる様々な形での妨害を受けることも予想される。極端の場合、幹部たちの集団的反乱を招く可能性もある。
しかし台湾併合をそのまま断念してしまえば、習主席にとっては歴史的な大敗退であって自らの権威失墜と政権の弱体化を招きかねない。まさに「進も地獄退くも地獄」なのである。
だからこそ、前述の法案が米国議会下院の金融委員会で可決された直後から、習主席自身と秦外相は激しい言葉で異例の対米批判し、「米国側がブレーキを踏まないで誤った道に従って暴走すれば、(米中関係は)必然的に衝突と対抗に陥る」との前代未聞の警告まで秦外相の口から吐かれたのである。
彼がここでいう米国側の「暴走」とは、まさに「台湾紛争抑制法案」の金融委員会可決と今後の法律化への動きであると理解できよう。
今後、米国議会(下院・上院)においてこの法案が審議に上がって可決・成立する可能性は非常に高いと思われるが、それを何とか阻止したいのは今の習近平政権の本音であろう。しかしそれでは、台湾侵攻に関する習近平政権の最大のアキレス腱の一つが目に見える形で暴露された訳である。
今後、米国だけでなくEU・日本が歩調を合わせて、中国共産党政権が台湾侵攻を敢行した場合、共産党と親族の在外資産の凍結・没収を法的に定めてそれを高らかに宣言しておけば、それは間違いなく、台湾併合戦争の発動を阻止するための抑止力となるのであろう。