日本とポーランドの物価比較: データと私感
ポーランドは日本と比べて物価が安いと言われるが、実際に何がどの程度安いのだろうか?本記事では、世界最大の生活費データベース Numbeo のデータを基に日本とポーランドとで各種物価を比較するとともに、ポーランド在住者として感じることを述べる。
日本とポーランドの物価比較 2022
Numbeoは世界各都市の物価および生活費を無料公開しているウェブサイトである。こちらの記述(英文)によると、スーパーマーケットのウェブサイト、政府機関の発行する資料、その他調査資料などの情報に加え、一般市民からの情報を基に収集されたデータを評価・分析し値を算出しているとある。興味のある方は参照されたい。
本記事を読むにあたり、以下の点に留意いただきたい:
- データは私的機関Numbeoが独自に提供するものであり、国や地方自治体のお墨付きが得られたものではない
- 本記事に示された物価は2021年2月下旬にNumbeoウェブサイトから収集されたものであり、データ更新や通貨レート変動により現在の物価と多少の差異があると思われる
- 各品目の値は、類似品のうち高過ぎず安過ぎない物の金額が示されており、実際の価格は上下に振り幅がある
それでは、Numbeoのデータを見てこう。
日本とポーランドの物価比較
まずは日本とポーランドの物価比較。Numbeoの情報からいくつかの項目をピックアップし、以下に示す:
(スマートフォンではテーブルの表示が非常に不格好になります。対応できておらず申し訳ありません。)
給料
| 月収(手取り) | |
|---|---|
| 日本 | 290,000 円 |
| ポーランド | 93,000 円 |
ポーランドの手取り月収は日本の3分の1程度と低い。逆に言うと、これでも子供を育てながら生活できるほど生活費が安いということだ。もちろん、公立学校の学費と公立病院の医療費が無料、2人以上の子供を持つ世帯への児童手当支給など、生活を支えるシステムがあってのことだ。
住居
| アパート(1部屋) 家賃/月(市中心部) | アパート(1部屋) 家賃/月(郊外) | アパート(3部屋) 家賃/月(市中心部) | アパート(3部屋) 家賃/月(郊外) | アパート価格/m2 (市中心部) | アパート価格/m2 (郊外) | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 82,000 円 | 57,000 円 | 194,000 円 | 117,000 円 | 947,000 円 | 547,000 円 |
| ポーランド | 60,000 円 | 48,000 円 | 107,000 円 | 83,000 円 | 314,000 円 | 210,000 円 |
ポーランドのアパートの家賃は、ワンルームなら日本と比べて2~3割ほどしか安くない。一方、ポーランドのアパート販売価格は日本の3分の1程度である。長期的にポーランドに住む場合はアパートの購入を考えた方が良さそうだ。
食品
| 鶏肉 1kg | 牛肉 1kg | 鶏卵 12個 | じゃがいも 1kg | トマト 1kg | りんご 1kg | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 840 円 | 2,300 円 | 230 円 | 400 円 | 650 円 | 740 円 |
| ポーランド | 470 円 | 950 円 | 220 円 | 70 円 | 180 円 | 100 円 |
| 米 1kg | パン 500g | 牛乳 1L | 水 1.5L | ビール 500ml | ワイン 750ml | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 500 円 | 210 円 | 200 円 | 120 円 | 280 円 | 1500 円 |
| ポーランド | 110 円 | 90 円 | 70 円 | 50 円 | 90 円 | 650 円 |
ポーランドでは肉、野菜、果物、穀物などが非常に安い。じゃがいもやりんごは日本の2割以下だ。米も安いが、これはパサパサしたタイプのものである。アジア食品店などで売られている日本米に近い米は、もう少し値段が上がる。ここには示されていないが、魚介類、加工食品、菓子類などは、実感として日本と比べてそれほど安くはない。
外食
| レストラン1食 | マクドナルド1セット | |
|---|---|---|
| 日本 | 850 円 | 700 円 |
| ポーランド | 710 円 | 570 円 |
ポーランドのレストランは日本と比べて1~2割程安いだけだ。物価全体に鑑みて割高に感じるため、私はほとんど利用しない。
その他
| 水道光熱費(月額) | インターネット接続費(月額) | 幼稚園費用(月額) | ガソリン 1L | タクシー初乗り | |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 22,000 円 | 4,800 円 | 49,000 円 | 140 円 | 640 円 |
| ポーランド | 20,000 円 | 1,500 円 | 26,000 円 | 140 円 | 200 円 |
水道光熱費は日本とポーランドとであまり差がない。85 m2のアパートでの(4人家族の?)生活に対しての額とのことだが、収集したデータからどのように算出しているのかは不明である。我が家(61 m2のアパートで夫婦二人)の水道光熱費は月額1万円強なので、妥当な値かもしれない。ポーランドのインターネット接続費は日本の3分の1程度だが、これは日本での価格が世界的に見ても異常に高いからだ。携帯電話料金も同様で、ポーランドでは国内無制限通話 + 無制限SMSに10GBのデータ通信量が付いたプランが月額1000円以下で利用できる。
以上をまとめると:
- ポーランドの平均収入は日本の3分の1程度
- ポーランドの家賃は日本より2~3割安い
- ポーランドの生鮮食品と通信費は日本と比べてかなり安い
- ポーランドのレストランと水道光熱費は日本とあまり差がない
金銭面に限って言えば、収入がポーランドの平均値程度なら、物価の安さはそれを補うほど魅力的ではない。つまり、ポーランドに住むよりも日本で平均的収入を得ながら生活する方がお金を貯めやすいと思う。一方、日本並みの収入を得ながらポーランドで生活できるなら、物価安の恩恵を受け貯金を増やすことができるだろう。リーズナブルな住宅に住み、外食の頻度を下げるなどの工夫をするとさらに良さそうだ。
ポーランド主要都市における給料と住居費の比較
次に、日本からの移住者が多いポーランドの5都市ワルシャワ、クラクフ、ヴロツワフ、グダニスク、ポズナンにおける物価を見ていこう。これら都市間で比較的大きな差が見られた給料と住居費についてのみ以下に示す:
給料は首都のワルシャワが頭一つ抜けて高い。私の住むポズナンが一番低く、他の3都市は同程度だ。
アパートの家賃は大きさと中心/郊外を問わずワルシャワに次いでグダニスクが高く、クラクフとポズナンが安い傾向にある。ワンルームのアパートについてはワルシャワと他都市との間で給料ほどの差がないため、ポーランドで就職し一人暮らしをする場合はワルシャワが良い候補となるだろう。一方、グダニスクの家賃は給料に比して割高と言える。
アパート販売価格は給料と同様ワルシャワが最も高くポズナンが最安である。市中心部ではポズナンでの価格が他の4都市に比べ低いのが目立つ。2018年に私がポズナン中心部に居住目的でアパートを購入したときの価格は17万円/m2で、3年経った現在はポズナン郊外の価格でさえこれを大きく上回る。実際、ポズナンに限らずポーランドの住宅価格は緩やかながら上昇傾向にあり、投資目的での購入も考慮に値するように思う。
以上、Numbeoのデータを紹介しながら、ポーランド在住者として感じることを記した。ポーランドへの移住を考えている方の参考になれば幸いだ。
作成者: 左京堂
やすさや高さがわかりました!
コメントありがとうございます!
ポーランドは激しいインフレに見舞われ、この記事を書いた当時と比べて現在は15%以上物価が上がってしまいました。近いうちに新たな記事を書こうと思います。
今イギリスのリバプールに滞在しており、ホストはポーランドから移民の女性でハウスメイト(airbnb で取った宿泊で同居人が5人いますが全員ポーランド人です)もすべてポーランド人です。その中に英語が達者な方がいて昨夜少々のお話をしました。より良い生活を求めて永住を目指したわけでなく、20年ぐらいはここイギリスで稼ぎいずれは祖国に戻ると言うようなこと言っていました。ここ数年で
イギリスに入ってくるポーランド人はかなり増えたようですが同時に帰郷する人も多いとのこと。そしてこのairbnb に住みながら家の外壁補修や修理等過酷な肉体労働を夜の11時近くまでやっています。騒音と薄っぺらで透けるカーテン一枚で隔てられた私の部屋、けれども彼の仕事ぶりを垣間見ると、もう何も言えません。
当然の事ながら中にいる私は彼から窓越しに丸見えです。寛ぐことも早めにベッドに入ることも出来ませんが、心のなかで、頑張れと彼にエールを送っています。
彼の子供はテレビを見ながら父親の仕事が終わるのを待っています。7歳前後であろう男の子は夕飯にピーナッツバタートーストを2枚食べていました。胸が締め付けられ思いです。私に出来ることと言えば、窓越しに懸命に重労働をこなす彼の存在を無いものとするぐらいです。
いつかきっと幸せをつかみ取り帰郷してもらいたいものです。
Hiromiさん、コメントありがとうございます。
他の欧州諸国に比べ平均所得の低いポーランドの中でもとりわけ低賃金のブルーカラー労働者たちが、より良い待遇を求めてイギリスやドイツに移住したと聞きました。そのまま永住する人もいれば、移住先の生活に馴染めなかったり、その他の事情でポーランドに戻る人もいるようですね。ここ数年、最低賃金、平均賃金ともに上昇していますが、それをかき消す激しいインフレが低所得層の生活をくるしめています。流出した労働力は隣国のベラルーシやウクライナからの移民で補われるため、賃金上昇が望めないようです。
とはいえ、ポーランド経済は発展の余地が大いにあるので、近い将来、帰郷した人たちが幸せに暮らせる環境になっていることを願います。
イギリス滞在、楽しんでください!