ポーランドのポズナンを移住先に選んだ理由

2017年夏、7年間勤務したスイスの職場との契約満了を年末に控え、次の行き先を探し始めた。ヨーロッパでは残業なしの週休2日労働、有給休暇全消化といったことが当たり前に実践できる。これに慣れてしまった自分がワーク-ライフバランスの取りにくい日本の労働環境に適応するのは難しいと思い、帰国はしないことにした。また、海外に出てから運転免許証の更新が面倒になり失効していたため、車社会のアメリカは移住先候補から外した。このように書くと消去法でヨーロッパに決めたように聞こえるかもしれないが、ヨーロッパでゆったりとした暮らしを続けたかったというのが本音だ。物価の高いスイスでは、どうしても物の値段を日本と比較してしまい自由に買い物ができなかったので、スイス、ノルウェイ、デンマークなどの高物価国を除外し、移住先として以下の条件に合う街を探した:

  • 車を使わずに生活できる
  • 公園や森林が多く、高層ビルが少ない
  • 夜に独りで出歩ける程度に治安が良い
  • 英語話者が多い

出身地である京都市や当時住んでいたバーゼルを頭に描きながら都会過ぎず田舎過ぎない街をいくつか選び、英語の普及度や治安について同僚たちに聞いて回った。職場には様々な国の出身者がいたので情報収集には苦労しなかった。バーゼルから近く何度か訪れたことのあるドイツのフライブルク、街の規模は理想より大きいが以前に短期間住んだことがあるオーストリアのウィーン、そして物価の安いポーランドのいくつかの都市が候補に挙がった。住む街を決めても必ずしもそこで職が得られるわけではないので、並行してLinkdInなどで求人検索をおこなった。希望の条件は以下のとおり:

  • 英語で勤務可能
  • 自分のスキルと経験(技術系)が生かせる
  • 年200万円以上の貯金が可能な給与

貯金についての贅沢な希望は、リタイア後に帰国するシナリオに備えて老後資金を確保する必要があってのことだ。海外に出てから日本の年金保険料を納めておらず、老齢年金を受給できないからである。最初に見つけた求人がポーランドのポズナンにある現在の職場で、月給17,000 PLNの3年契約が提示されていた。円換算で400万円程度の手取り年収が見込め、ポズナンでの夫婦二人の生活費は年間144万円(12万円 x 12か月)程度と見積もられた。面接の際に一週間ほどポズナンに滞在して感じたのは、緑が多く、ショッピングモールやスーパーマーケットが充実し、公共交通網が発達して住みやすそうな街ということだ。従業員の95%以上がポーランド人であり職場環境の英語化が遅れている、役職が技術員ではなく管理職であるなどマイナス要因はあったが、採用通知を受けた時点で他に当てがなかったため受諾した。

以上、ポズナンを移住先に選んだ理由は、そこが私の好きな緑の多い「ほどほどの都会」であり、車がいらず、極めて治安が良く、英語で大きな不自由なく生活でき、物価が安く、快適に過ごしながら貯金を増やすための職が得られたからである。ポーランドという国に特に興味があったわけではない。移住から3年、様々な政治的・社会的問題(生活への直接的影響は今のところ感じない)を見聞きし、役所の怠慢(あるいは無能)や新型コロナ流行に伴う不愉快な出来事もいくらかは経験してきたが、概ね楽しく過ごして来られたので選択は正しかったと思っている。管理職という役割が面白くなく仕事への意欲が減退したこと、生活費が年間100万円以下に抑えられたことから、2021年1月の契約更新(無期雇用)にともない仕事量を減らすことにした。当然収入も減ったが、人生の後半戦をより楽しくするための最善手だと信じている。

作成者: 左京堂

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