(5)政治案件なのに政治不在 車両更新商戦で見えた日台関係の真実
一昨年8月5日、当時官房長官だった菅義偉は台湾高鉄の車両更新が難航しているのではないか、との質問に、このように答えた。いったん欧州連合がすべてを落札したにもかかわらず、車両を逆転受注できたのは橋本龍太郎、小渕恵三の指揮の下、竹下登、佐藤信二、梶山静六ら親台派政治家を動員して李登輝らに働きかけた政治折衝の産物であったことはすでに述べた。菅は民間ベースと前置きしてはいるが、台湾高鉄の車両更新は単なる民間ベースの商談では決してなく、純粋な政治案件なのである。
日本製車両更新に関して台湾交通部長、台湾高鉄董事長から国交相に親書が寄せられたにもかかわらず、日本政界は全く動くことなく早々に商戦の敗者になったのは、まさに今回の商戦における政治不在を物語っている。
米中対立の中、元首相・安倍晋三ら親台反中勢力から「台湾有事は日本有事」などと勇ましい大合唱が繰り広げられている。全ては中国を念頭に置いた発言であることは言をまたない。
しかし、車両更新商戦を通じて台湾政官民から聞こえてくる声は、安倍晋三らの勇ましい掛け声とは正反対のものばかりである。台湾高鉄の車両更新商戦の敗北から見える日台関係の真実はここにある。 =敬称略