[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

ドイツ人元Jリーグ監督が“部活”に抱いた違和感「練習が休みと言ったら全員喜ぶ」

「日本では義務と趣味のバランスが悪いのかもしれない。この子たちは、練習が休みだと言ったら全員喜ぶよ」

ゲルト・エンゲルス氏【写真:Getty Images】
ゲルト・エンゲルス氏【写真:Getty Images】

かつて滝川二高サッカー部を指導 エンゲルス氏が見た驚きの光景

「日本では義務と趣味のバランスが悪いのかもしれない。この子たちは、練習が休みだと言ったら全員喜ぶよ」

 Jリーグの横浜フリューゲルスや浦和レッズなどの監督を務めたゲルト・エンゲルスの指導の原点は、地方のクラブチームや高体連だった。

 兵庫・滝川二高のコーチに就任すると、いくつかの矛盾点を見つけた。確かに高校はグラウンドがあって、毎日同じ場所で練習が出来る。1990年代初頭、まだサッカー中継が滅多にない日本で、全国高校選手権が生中継され大観衆を集めているのも驚きだった。

 一方で100人近いサッカー部員は、毎日長時間の練習を続けているのに、大多数が公式戦を経験せずに卒業し、そこでサッカーを辞めてしまう。そしてエンゲルスが何より疑問を感じたのは、サッカー部の活動がすべて上意下達で進められていることだった。

「先生から生徒、上級生から下級生、まるで義務教育で学校へ通うようにサッカーをする。だから卒業すれば義務(サッカー)も終わってしまうんだ」

 エンゲルスが率先して生徒たちに伝えようとしたのは、サッカーを楽しむことだった。全体を小人数ごとにグループ分けをすると、積極的にミニゲームを行い、クラブ内のミニ大会なども実施。集中して楽しめる環境作りに尽力した。

「たぶん生徒たちは、明日の練習が休みだと言ったら大喜びする。でもドイツの子供たちは、今日はサッカーが出来ないなんて言われたら、みんながっかりして落ち込むよ。もしかすると日本は義務と趣味のバランスが悪いのかもしれない」

1 2

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
スポーツ応援サイトGROWING by スポーツくじ(toto・BIG)
DAZN
福士加代子が使うワコールのスポーツ用ショーツ
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集