羽生結弦さん「自分の幸せを削ってでも、羽生結弦として全てを背負って進んでいく」 千秋楽公演全文

「春よ、来い」を演じる羽生結弦(カメラ・矢口 亨)
「春よ、来い」を演じる羽生結弦(カメラ・矢口 亨)

 フィギュアスケート男子で五輪を連覇し、昨年プロに転向した羽生結弦さん(28)が座長を務めるアイスショー「羽生結弦 notte stellata」の千秋楽公演が12日、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで行われた。11日に東日本大震災発生から12年を迎えた被災地から、希望を発信。3日間の公演の最後に、氷上から思いを伝えた。以下、全文。

 「ありがとうございます! 最後まで本当にありがとうございました。この『notte stellata』という、このようなショーをまず企画してくださり、僕自身もちろん3・11、また、今日、そして一昨日を含めて、この会場で滑ることにすごく戸惑いもありました。ただ、そのなかでも、このショーを、『notte stellata』という名前をつけてくださり、そして内村さんだったり、こういった素晴らしい仲間たちと共に滑らせてくださることを考えてくださった、企画をしてくれた方に、また、ここにいるスタッフの全員の方に大きな拍手をお願いします。

 改めまして、この会場に来て下さり、ありがとうございます。そして、全国の映画館、ライブ配信、そして台湾、香港で見てくださっている方々、本当に最後までありがとうございました。

 こうやって、月日が過ぎていくなか、月日が過ぎていくにあたって、昨日はあんなに苦しくて、悲しくて、つらくて、すごくすごくつらい日々でしたが。一日たってみると、なんか、悲しさも超えて、やっぱり前に進んでいかなきゃなあっていう気持ちと、また皆さんと共に、なんか、僕が暗い気持ちになっていたら今日はダメだなあって思って。頑張って、はっちゃけてっていうか。希望になろうと思って頑張っていました。皆さんのスケート、プログラムを通して、ちょっとは前に向けたかなあって、思っています。

 こうやって実際に12年と1日という月日が過ぎて、だんだんだんだん、僕も、毎年、ほぼ毎日のように、3月11日っていう日を思い出していますけど、だんだん記憶が薄れていってしまうものですね。傷もつらさも、悲しみも、なくなってしまったものの多さも少なさも、全てがだんだんなくなっていってしまって。なんか穏やかな日々に、だんだんなんか、慣れていってしまって。そんなことに罪悪感を覚えるような日々もあります。(会場から「そんなことないよ!」)でもそんなことあるんですよ、本当に。羽生結弦っていう存在として、今まで生きてきて、僕は、スケートをやることによって、世界を救えるとは思えないですし、スケートで何か世界が変わるって、そんな大それたことはないと思います。ただ、僕はこうやって、この12年間を生きて、この、一番つらかったであろうこの場所にリンクを張って、こうやって皆さんに希望を届けることができて、幸せであると同時に、これからも、こんなちっちゃな体ですけど、いろんなことを背負って、毎日毎日、スケートのためだけに、日々を過ごしたいと思っています。

 でも、今日っていう日が終わってしまったら、『notte stellata』はとりあえず、2023年の『notte stellata』はもうなくなってしまって。明日はいつもと変わらない、穏やかで、くだらない日々が続くと思います。でも、そのなかでも僕は、スケートをめちゃくちゃ頑張って、また、なんか、羽生結弦のスケート見たくなったなあとか、こうやって『notte stellata』の配信があったり、いろんななかで、また見たいな、あのスケートに希望をもらったな、とか、そういうことを思っていただけるように、そういうことを思っていただけたときに、またスケートを見ていただけるよう、精いっぱい、自分の幸せを削ってでも、ずっとずっと、羽生結弦として、全てを背負って、進んでいくんで。どうか、応援してください!

 僕は、なんか、僕は本当に、こうやって皆さんに自分のスケートを見ていただいて、自分のスケートの中から、言葉じゃなくてスケートの中から何かを感じ取ってくださって、国境を越えて、何かに希望を与えたり、悲しさを与えたり、慈しみだったり、そういったものを与えられる存在であれば、それだけで十分幸せです。だからこれからも、スケートのための選択をずっと続けていきます。どうか、信じてください。これからも頑張っていきます。応援よろしくお願いします。ありがとうございました。

 改めまして、『notte stellata』にご来場いただき、見ていただき、本当にありがとうございました。また…またやっていただけるか、それは僕次第なんで分からないですけど。でも、ありがとうございます。とにかく未来が何も見えない、何も分からないこんな世の中で、毎日毎日、生き抜いてください。この12年間の毎日、1秒ずつ、1日ずつ、生きてきた、この愛おしい愛おしい12年間を、また、今日からまた、1秒ずつ、1日ずつ続けて下さい。僕もそうやって生きて行きます。また皆さんに会える日を、とてもとても、楽しみにしています。今日は本当に、ありがとうございました」

内村航平とともにConquest of Paradiseを演じる羽生結弦(カメラ・矢口 亨)
内村航平とともにConquest of Paradiseを演じる羽生結弦(カメラ・矢口 亨)

「春よ、来い」を演じる羽生結弦(カメラ・矢口 亨)
内村航平とともにConquest of Paradiseを演じる羽生結弦(カメラ・矢口 亨)
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