■増加するAV被害 成人年齢引き下げでさらなる懸念
女性たちが性産業に不本意に足を踏み入れるのを防ぐため活動するNPOがあります。この日、新宿・歌舞伎町で10代から20代の女性たちに声をかけていました。

NPO法人「ぱっぷす」 金尻カズナ理事長
「LINEを交換した後に『お茶しない?』ということで、喫茶店に行ったところで風俗やAVを勧められて断れなくなってしまう。AV被害ですと、特に社会に希望が持てなくなった瞬間とか居場所を失う瞬間をスカウトは見逃さない」

いま、NPOに寄せられるAV被害の相談は急増しているといいます。
NPO法人「ぱっぷす」 金尻カズナ理事長
「被害の低年齢化。高校生であっても声をかけて、アイドル活動やユーチューバーをさせて、その後AVに出演させるケースも実際にある」
さらに、今年4月から成人年齢が引き下げられたことで、18歳、19歳の被害が増える恐れがあるのです。
そこで、超党派の議員がAV被害対策法案をまとめました。法案では、年齢や性別にかかわらず、映像の公表から1年間は無条件で契約を解除できるとされています。また、契約を交わしてから撮影までに必要な期間を1か月、撮影の終了から公開までに必要な期間を4か月とするとしています。

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自民党 宮崎政久衆議院議員
「画期的なものだと。被害者の立場に立った形になっている」
法案は先月、衆院を通過し、今月中にも成立する見込みです。
■「本番の性行為も合法化」法案に課題も
この法案で救われる人もいるという声がある一方で、大きな懸念の声もあがっています。
少女支援団体Colabo 仁藤夢乃代表
「本番の性行為も合法化するような法案になっているので、これは大変なことではないかと」
今国会で成立する予定のAV被害対策法案に、懸念の声が上がっています。
少女支援団体Colabo 仁藤夢乃代表
「AVの被害は契約に問題があるから起きるのではなく、陵虐的な身体的暴行や性暴力を受け、リアルな性交が求められるからこそ起きているものです」

法案が成立することで、AV撮影時の性行為を法的に認めてしまうことになるのです。
性的搾取の被害者を支援する 川村百合弁護士
「(AVは)今までは法律上はグレーな状態で流通していた。いわゆる本番の性交、つまり挿入行為をしているのかどうかは、表向きはモザイクの下では性交はしていない。ところが今回の法案では、厳格な要件を満たしさえすれば、いわゆる本番の性交を有償で撮影する契約が有効になってしまう」

■「好きでやっている」でなく「AVを選択せざるを得ない」背景は?
虐待や性被害、貧困が背景にあり、AVを選択せざるを得なかったという女性は少なくありません。
18歳の時、AV被害を受けた女性は、性的搾取が行われるのは社会の構造の問題だと知って欲しいと訴えます。
AV被害に遭った女性
「いま思うと、あれは全て自傷行為だったと思っているし、行政とか福祉とかいろんな制度は、私たちみたいな、なかったことにされている存在にとっては使えないし。だから、こういう業界で性的搾取が行われているんだろうなって。『好きでやっているんでしょ』の一言では片付けないでほしいなと思っている」
