性癖に正直に生きてたらヤンデレに追いかけられたんだが


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作:鷲羽ユスラ
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18/30 

幕間 ヒロイン視点
【主羅統娘】の決意


 ボクと彼の部屋を後にしたボクが始めたのは、世界の叡智へと飛び込むことだった。

 

 魔族は体が魔力でできている。だからある程度はそのコントロールが可能だ。相手の理想の肉体に変化する淫魔、相手と同等の見た目と性能を得る死出の鏡の悪魔(ドッペルゲンガー)などが良い例だろう。

 ボクは更に先を行く。肉体を希釈し、広げ、魔力の粒となり、世界の叡智――魔力の海と直接一体化することができる。

 勿論、危険な行為だ。いくら魂という楔があるとはいえ、肉体を魔力の海と一体化させるのは、世界そのものと同一化してなおも存在し得る無類の精神が必要になる。

 ボクに出来ない訳ないけど、これまでやろうともしてこなかったことだ。それを今、行うのは……彼を、絶対に取り戻すため。

 

 彼と手を繋ぐため。彼と一緒に笑うため。彼の手を引っ張るため。彼と――ずっとずっと、これからの未来を歩むため。

 

 そのためだけにボクは行く。世界と同質化し、偏在し、文字通りあらゆる事象となって世界の叡智(すべて)を体感する。

 見つからない。見つからない。おそらくは神に次いで世界を見ているボクの視界に、彼の魂は映らない。

 いや、魂だけじゃない。歴史、足跡、痕跡。『彼』が存在したという事実の数々が、人為的に消し去られ、その僅かな断片だけが見える。

 まるで彼自身がそうしたかのようだ。でなければここまで徹底的に存在の証拠を消し去るなんてできない。けれど、どうして彼はそんなことを?

 ……考えるのは後だ。彼を見つけてから、その胸に飛び込んでから、また一緒になってから……彼と指切りした約束を果たしてからでも、遅くない。

 世界を循環する魔力の海。それそのものとなったボクは、彼を探し続けることに没頭した。

 

 

 

 

 見つけた。見つけた。あいつの所だ。

 【煌天女帝】ヴァルガリエ・ディエラ・ドゥン・リエンジスカ。うるさくて、いつもボクを見下してて、口を開けば自慢話しかしないトカゲおばさん。

 ボクは別にどうでもいいけど、あいつは変にボクに突っかかってくる。まったく、年寄りの嫉妬は本当に見苦しいのにね。ボクが優しくそれを指摘してあげても、トカゲおばさんは怒鳴り散らすばかりなんだ。

 思考が逸れた。哀れみと、そして警戒から逸れた思考を、ボクは彼に集中させる。

 彼はあいつのケバケバしい宮殿の中を疾走しているようだった。なぜか全裸だ。そしてすごい笑っている。

 …………ひょ、ひょっとして、そんな趣味が……? いやいや、彼に限ってそんな……で、でも、彼が望むなら……その……ボクも、付き合ってあげなくも……

 って、何を想像させるんだ! えっち! すけべ! へんたい! まったく、彼は変わらない! たとえ姿形が変わっても、肉体が変わっても、その魂はボクの知る彼のままだ。

 ……なんだかすごく()()感じがするけれど。彼って、あんなに光り輝いてたっけ? いや、勝てないとかそういうのじゃなくて、雄々しくて、逞しくて、なんだか逆らえない感じがするってだけで……

 

 ――ッ! いけない、変なことを考えている間に、彼がとんでもないことをし始めている!

 あれは自死の魔法陣、それも魂を滅却する禁忌の手段だ。あんなものに飛び込んでしまえば、魂は散り散りになり、二度と元には戻らないだろう。

 させない。ボクはありったけの手段を用意して、魂の崩壊を防ぐ妨害を画策する。

 そのためにはトカゲおばさんが邪魔だ。あいつにバレないよう、ボクはこっそりと準備する。

 そうしている内にトカゲおばさんは動いた。急に彼を追いかけて、捕まえようとしている。

 どうして? その時のボクは、彼を追いかけるあいつの表情にヒュッと背筋を冷たいものが走ったような感じがしたけど、努めて無視した。

 今は、彼を取り戻すことだけに全力を尽くす。彼がバラまいた写真、彼が彼になるまでの記録の数々に思わず飛び出したくなるのを我慢して、ボクはその時を待った。

 魔法陣を構築し、自ら突入する彼。肉体が消滅し、魂すら散り散りになる寸前、ボクは隠していた手段を解放して、彼の魂を保護した。

 

 …………なのに……なのに、奪われた。彼を取り戻したと喜んだのもつかの間、するりとボクの手から彼の魂を掻っ攫っていった存在に、憤怒と憎悪が張り裂ける。

 あいつだ。【覇界聖王】エウラリア・カリエントゥス。あの頭の緩い勘違い女が、ボクから彼を奪い取った。

 許さない。許さない。許さない。ボクは隠しもしない再生術と蘇生術の痕跡を辿り、彼の魂が囚われた場所へと意識を飛ばした。

 

 

 

 

 辿り着いたのは、勘違い女の根城である大聖堂……その最深部にある祭祀場だった。

 神の偶像が見下ろす、大きなベッドのある一室。そこで彼の痕跡は完全に途絶えていた。

 おかしい。彼の存在がそこにあると分かるのに、どこにいるのか検討もつかない。ボクは必死に探すけど、尻尾の先すら掴めない。

 ボクの中に苛立ち混じりの罵倒が膨れ上がる。大体なんだ、あの勘違い女。知識によると、ここは結婚式専用の場所。しかも生涯別れないと誓う、とっても重い契約の場所じゃないか。

 そんなところに彼を連れ込んで何を? まさか、勘違い女もトカゲおばさんと同じ……? 頭を過ぎるその考えを、ボクは必死で振り払う。

 ありえない。そんなの絶対にありえない。彼がまさか、そんなこと……けれど世界と同一化しているボクには、ある一つの答えを成そうとしている情報が集まってくる。

 それを振り払って、ボクは探索に集中した。するとほんの僅かに、空間に微細なほつれを発見した。

 ボクは慎重にそれを調べる。おそらくは、勘違い女の力。如何に世界を統べる運命の下に生まれたボクとはいえ、あいつらの力はボクと拮抗する。

 焦ってはいけない。彼を確実に取り戻すためには、何重にも警戒しなければ。ボクは勘違い女にバレないよう、そっとほつれを紐解き、空間の亀裂へと侵入した。

 

 その空間は巨大な牢獄のようだった。いや、勘違い女のやっていることを鑑みれば、まさしくそこは牢獄なのだろう。

 幾重にも飛び出し絡み合う鎖。ガチガチに固められた厳重な檻。底へ、底へと行くごとに、強くなっていくあいつの力。

 ここは牢屋だ。あいつでも手に負えないような犯罪者のために作られた牢獄の世界。その最下層に、彼の魂が囚われていることをボクは知覚した。

 飛び出したかった。今すぐにでも向かいたかった。けれどそんなことをすれば勘違い女に察知され、即座に叩き出されてしまう。

 ボクは伏することを選んだ。確実に、絶対に、彼を取り戻すために。勘違い女に気づかれないよう、途方もない警報と縛鎖を掻い潜りながら、少しづつ、少しづつ、彼に近づいていく。

 それはとても長く、辛い時間だった。ボクという天才でさえ、疲労困憊を避けられない緊張の連続。実時間ではそうでなくとも、ボクは限界まで知覚を加速させてことに当たっていた。

 疲れていた。休みたかった。叶うことなら全てを投げ出して寝てしまいたかった。

 けれど、けれど、けれど。それは、彼を取り戻してから。彼を取り戻して、添い寝してもらって、腕に抱きついて彼の体温を感じながらじゃないと駄目だ。

 その一心で、ボクは牢獄を進んでいく。底へ、底へ、気付かれないように。勘違い女に悟られてしまえば、ここまでの全てが無駄になる。

 

 ……そうして、ボクの主観で長い時間が経った頃。ようやくボクは、彼の囚われている最下層へと辿り着いた。

 もうすぐ。あと一歩。ここで走り出せば、すぐにでも彼の胸へと飛び込める。

 けれど、すでに世界との同一化をやめ、収束した体をボクは必死で抑えていた。なぜなら、そこには……あの勘違い女を貪る、彼の姿があったから。

 ズキリと、胸に痛みが走った。痛い。痛いよ。どうして君は、こんなにもボクを傷つけるの?

 そう叫びたかった。叶うことならやめさせたかった。でも、ボクは止める。ボクを留める。必死に、涙を流しながら我慢する。

 だって、ボクのことなんかどうでもいいんだ。ボクは、彼を取り戻したいだけ。絶対に絶対に、二度と離れ離れになりたくないだけ。

 それさえ果たせるのなら、こんな痛みなんか無視できる。ズキズキと血を流すように痛む胸を掻きむしって、ボクはじっとその時を待った。

 

 …………やがて、彼が勘違い女から離れる。少しして、起き上がった勘違い女は、彼に変なことをしてどこかへと行ってしまった。

 知覚を飛ばす。ここまでこじ開けた空間の亀裂から、ボクは勘違い女の動向を探る。

 そしたら勘違い女は、なぜかトカゲおばさんと対峙していた。彼に貪られた痕をそのままに、人の良い笑顔でトカゲおばさんを煽っている。

 勝手にやってろ。もう君たちにチャンスは訪れない。今しかないと確信したボクは、ベッドの端に座って消沈する彼へと、一目散に飛び出した。

 

 

 

 

 やった、やった、やった! ついに、ついに彼を取り戻した! ボクの世界、王道楽土アマノウツロイで盛大なパレードを開催するボクは、満面の笑みでみんなに手を振る。

 彼は本当にひどい有様だった。あちこちに、どこを見ても、勘違い女の匂いがこびりついてた。ボクは全力でそれを落として、ボクの匂いをつけようとしたけど、かろうじて我慢した。

 まずは、まずは、情報戦だ。なぜかは分からないけれど、トカゲおばさんも、勘違い女も、ボクの彼を狙っている。

 だったら最初は、知らしめるんだ。ボクの支配する世界に、あいつらが勝手に統治している世界に。ボクと彼が、運命で結び付けられた理想のパートナーだって、みんなに知ってもらうんだ。

 勿論、みんなはとてもか弱い。あいつらがその気になれば、鎧袖一触に殲滅されるだろう。それでも、やるだけの価値がある。

 散々ボクは見せつけられた。だったら、見せつけ返してやろうじゃないか。

 彼が誰のものか、分からせてやる。ボクはその一心で、彼と一緒にパレードを行進した。

 

 彼とのパレード……その、結婚式……♡ を終えて、ボクは予定通りボクと彼の部屋へと帰還した。

 トカゲおばさんや勘違い女に乱入されたけど、計算の内だ。あいつらは馬鹿だから、最後には力押しに頼ろうとする。

 分かっていた。だからボクはここへと帰ってきた。トカゲおばさんだろうが、勘違い女だろうが、絶対に入れないボクと彼の部屋へと。

 最初からそう作った。当初の意図とは違うけど、今ははっきりとその役目を果たしている。

 ここはボクの世界。ボクだけで完結した小さな箱庭。ここにはボクの権能が集約されていて、どんな手段を取ろうとあいつらに付け入る隙はない。

 ボクたちは、三界の主と讃えられる存在は、各々がそういった権能を持っている。相手の全力全霊を無効化する絶対防御。それがあるからこそ、ボクたちは今日まで世界を壊さなかった。

 それももう、終わりだけれどね。ボクにはもうここ以外のことなんかどうでも良かった。

 彼がいる。彼とボクが二人っきりでいる。その事実だけで、こんなにも胸が暖かくなる。ふわふわで、ぽやぽやで、幸せって呼べる感情で一杯になる。

 ごめんね? 辛かったよね? でももう、大丈夫だよ。ボクはそんな風に語りかけながら、彼の拘束を解いていった。彼はどこか疲れた顔でボクを見たけど、決して逃げようとはしなかった。

 望んでいた反応じゃない。けれど、良いんだ。時間はたっぷりある。ボクと彼の時間を、これからゆっくり育んでいけばいい。そう思いながら鼻歌交じりで準備していたボクは、ふと彼に名前を呼ばれた。

 

 なんだろう? ひょっとして、もう? 我慢できなくなっちゃった? フフフ、すけべ♡ へんたい♡ でも、いいよ……♡ だってボクも、もう我慢できない……♡ そんなことを言いながら、ボクは服を脱ごうとする。

 でも、彼に止められた。ボクの魔力で作った彼の服を脱がそうとしたけれど、それもやめた。彼は、とても、とても、真剣に……ボクの瞳を見ていたからだ。

 彼は言った。ボクの将来に関わる話だと。そして約束した。話が終わったら、何でも言うことを聞くと。

 ボクは訝しみ、けれど報酬につられて、最後まで話を聞くと頷いた。頷いてしまった。

 

 そうしてボクは、知らなかった――知りたくもなかった真実を、彼自身から聞かされることになる。

 

 

 

 

『実はさ……俺にとって、お前は三番目なんだ』

 

 最初にそう言われた時、ボクは理解するのを拒否した。

 何を言っているの? 君の『特別』はボク一人でしょ? ねえ、そうだよね? そうだと言ってよ。

 

 ボクには、君しかいないんだよ? 君が、君だけが、ボクの隣にいてほしいのに……君は、ボク以外でも良いって言うの?

 

 ボクが理解を拒否している間にも、彼は話を進める。聞きたくない、聞きたくない! そんなの冗談だ、何かの間違いだ!

 なおも言い募ろうとする彼に飛びついて、ボクはその唇を塞いだ。ボクの唇を重ねて、もう何も言えないようにする。

 何度も、何度も、何度も何度も何度も。離れて、彼が話そうとする度に、ボクはまた唇を重ねる。

 ボクは泣いていた。いつの間にか涙を流していた。それを彼は痛ましそうに見て、ボクの体をその腕で離す。

 だから嘘だと叫んだ。三番目だなんて、ボクの上にあいつらがいるなんで嘘だと、ボクは必死になって彼に叫んだ。

 でも、彼は嘘だと言ってくれなくて……ボクと彼が過ごした日々の全てを、否定し始めた。

 

 彼は最初、ボクを傷つけたかったと懺悔した。ボクの心に、二度と消えない傷をつけたかったと、そう言った。

 それ自体は、正直嬉しかった。昔だったら違うかもしれないけれど、今はもう、ボクは彼のものでいたかったから。

 気持ちよくなりたかったからと言ったのも、許せた。だって彼がそれを望むんだ。ボクは、それを受け入れてあげたい。

 それから、婚約者のことも嘘だって。あれはただの人形で、ボクを騙すためだけに用意した偽物だと言ってくれた。

 ボクは嬉しかった。なんだ、全部ボクのためじゃないか。彼のためでもあるかもしれないけれど、そこまでしてボクの気を引きたかったと思うと嬉しくなった。

 けれど、彼は希望を持つなと言って……全部嘘だって、そんなことを言うんだ。

 

 良いんだよ。もう下僕じゃなくて良いんだよ。ボクのものじゃなくて良いんだよ。月日だって、これから重ねていけば良いじゃないか。

 けれど……けれど、それだけは駄目だ。それだけは……ボクと君との約束さえ嘘だって、そんなことを言うのだけは、許せなかった。

 ボクの知る君は偽物だと言う彼を、ボクは押し倒した。魔力でベッドを作って、彼を寝かせて、その上にボクが乗る。

 彼は言う。ボクの物にはならないと。誰の物にもなれないと。あいつらの名前を出して、ボクにも無理だと、そう言って。

 そしてまた、ボクが間違えるって言われた瞬間、カッと体が熱くなった。

 

 何を……何を勝手なことを言ってるんだ! いい加減にしてよ! ボクをそんなに怒らせたいの!?

 思わず彼の首を締める。怒り、憎しみ、悲しみ。そういう負の感情が綯い交ぜになって、全部彼へとぶつけたくなる。

 そうだ……そうすれば良いじゃないか。何を迷うことがある。全部全部、彼にぶつけてしまえばいいんだ。

 君が悪いんだ……君が! ボクをこんなに怒らせるから!

 だから、しょうがないよね? こうしたら、君はボクだけを見てくれるよね? ねえ、ボクを見てよ。お願いだから、ボクだけを……

 そうしたら、彼はいやに嬉しそうだった。まるでボクにそうされるのが望みだと言わんばかりに。

 その顔に。苦しそうで、辛そうで、けれどやっと安心して眠れるって顔に。ボクはハッとして、彼の首から手を離した……

 

 ごめんなさい……ごめんなさい! 苦しかったでしょ? 痛かったでしょ? ボクは彼の首についた小さな手の痕を治そうとして、必死にすがりつく。

 また、間違えるところだった。また、彼を失ってしまうところだった。何も学習していないボクを罵って、ボクは彼に謝る。

 ボタボタと涙がこぼれる。ボクは泣いていた。君を失ってから、ボクはもう泣きっぱなしだ。

 

 ねえ、気づいてる? ボクは今まで、一回も泣いたことがないんだ。君のため以外に……君以外に、こんな感情を向けたことなんてないんだ。

 それなのに君は、ボクにもっと泣けなんて言う。そうしたら、君のことも忘れられるって……そんなの、絶対ありえないのに。

 

 一度も心から泣いたことがないと彼は言う。ボクは、じゃあ信用なんてできないじゃないかと返す。

 そしたら彼は笑う。その調子だと、いつものネスキスだと、ボクのことなんてお見通しって顔で言う。

 そうだよ。君だけなんだ。君だけが、ボクを分かってくれる。君だけにしか、ボクのこんな顔は見せてあげたくない。

 ……なのにどうして、一緒に行けないなんて言うの? いやだよ……無理だよ……

 

 君のぬくもりを、もう知ってしまっているのに。一人で生きていくなんて……そんなの絶対、できないよ……

 

 ……………………

 

 泣き止んだボクは、彼に尋ねた。これからどうするのって。

 そしたら彼は、逃げるって言った。あいつらから、ボクから逃げて、どこかで勝手に死ぬんだって。

 勝手だよ。本当に、勝手だ。けれどそれが、本当の君だって言うのなら、ボクは…………

 

 ボクは彼に、報酬を要求した。最後の思い出を、ボクに刻みつけてほしいと言った。

 そうしてくれたら、諦められるから。そしたらもう、君を追いかけないから。

 そう、嘘をついて。ボクは彼の了解を勝ち取った。

 

 ごめんね? 君を失ってから、もう二度と失わないために、ボクは良い子になろうとしたよ?

 でも君は、悪い人だった。とってもとっても悪い人で、ボクを傷つけて、怒らせて、それで気持ちよくなろうとしてた。

 良いよ。許すよ。君がそんな人でも、ボクは好きだから。大好きだから。……愛しているから。

 だから……ごめんね? ボクは、悪い子になるよ。

 もう二度と、君を失わないために。

 

 彼の膝に座って、優しく服を脱がして貰いながら。ボクは彼に悟られないよう、その様子を世界へと見せつけた。

 

 

 

 

 彼に優しく愛して貰ったあと、ボクはわざと侵入させたあいつらに向き合った。

 トカゲおばさん。【煌天女帝】ヴァルガリエ・ディエラ・ドゥン・リエンジスカ。

 勘違い女。【覇界聖王】エウラリア・カリエントゥス。

 どっちもボクの敵。彼にとってボクより上の、ボクより好きな女たち。

 

 でも、負けないよ。絶対負けない。今は三番目でも、絶対にボクが一番になってやる。

 ボクだけが、彼の『特別』になる。そう決意して、あいつらと戦おうとした、その時。

 

 彼がまた、ボクを呼んだ。

 

 ボクはすぐに笑顔を向けた。だって彼に呼ばれたんだ。そんなの嬉しいに決まってる。

 飼い犬のように駆け寄ったボクを、彼は優しく抱きしめてくれた。そしてこっちに来ようとするあいつらを止めた。

 ボクだけを呼んだのは嬉しいけど、あいつらも愛おしそうに見る彼は嫌だった。思わずむくれると、彼は優しくボクの頭を撫でる。

 そして、そして……

 

『なんだよ、むくれるなって。今の俺にはお前しか見えてねえよ』

『だからさ、悪いんだけど……あと十回くらい付き合ってくれ』

 

 ……え? えっ?

 あと、十回? そんなに? 一回だけでもあんなに気持ちよくて、意識が飛びそうだったのに?

 ねえ、どうしてそんな目でボクを見てるの……?♡ まるで、ケダモノだよ?♡ 今にもボクに覆い被さって、貪りそうな顔、してるよ?♡

 さっきは優しく抱きしめてくれたのに、今はもう、絶対に逃がさないって意志を感じる……♡ 片手でがっちりボクの腰を掴んで、でもボクの頭を撫でるのは続けてくれてる♡

 ダメ♡ ダメだよ♡ そんなことされたら、何も考えられなくなっちゃう♡ 君の言うことを全部受け入れて、なんでも言うことを聞いちゃうボクになっちゃう♡

 ねぇ……♡ ボクが悪い子だから、こんなことするの♡ だったら、謝るから♡ ごめんなさい、するから♡

 だから、また悪い子になったら、叱ってくれるよね?♡ そんな風に聞いたら、嬉しそうにするなって言われた♡

 バレてる♡ 君にバレてる♡ 嬉しい♡ 幸せ♡ ボクのこと分かってくれてる♡

 彼は、辛かったら言えよとボクに言った♡ そしたら少しだけ、優しくしてくれるって♡

 あぁ……逃がす気は、ないんだね♡ ボクをこれから食べちゃうのは、絶対にやめてくれないんだね♡

 それが嬉しくて、嬉しくて、幸せで♡ ボクは、彼に抱き上げられてベッドに優しく寝かされて♡

 

 そのまま、覆い被さる彼を見上げて♡ 彼に全てを任せたんだ……♡♡♡

 

 

 

 

 いつの間にか、ボクは寝ていた。頭を撫でる彼に起こされて、ボクはボーッと辺りを見回す。

 そしたら、あいつらもなぜか一緒に寝ていた。彼に起こされて、ボクと同じような顔をしている。

 …………ふーん。そうか。君はそうしたんだね。ボクを好き勝手食べたあと、あいつらにも手を出したんだ。

 そう思うとムカムカした。思わず口から罵倒が飛び出た。

 

「へぇ、君たちも彼に抱かれたんだ。でも、ボクが一番だよ? 一番最初に彼に選ばれたのは、このボクだよ?

 君たちはただの添え物なんだ。メインディッシュはこのボク、それを忘れないで欲しいな。

 ……ボクが一番回数が少なかった? だからなんなの? 三番目のくせに、これだから勘違い女はさ。

 妾が一番激しかった? ふぅん、安売りしか誇れないんだ? 体もおっきいから、彼にとってそんなに価値がないんだね。ボクと違ってさ。

 …………なんだよ。やるって言うの? ボクに勝てるとでも思ってる? はぁー……ほんと情けないよね、君たちって。

 おばさん。脳筋。頭わるわる。威張ることしかできない。勘違い女。頭プリン。ちやほやされるのだけが好き。良い格好したがり。

 

 ねえ、君からもなにか言ってよ。こいつら、本当に…………どうして笑ってるの?」

 

 彼に話を振ったボクは、思わず目を見開いた。

 彼は、笑っていた。言い争うボクたちを見て、心底愉しそうに。

 心の底から、愛おしそうに。

 それに、ゾクゾクとした感覚が駆け抜けて。ボクの、彼に愛された一番大切なところが、きゅうんっ♡ ってするのが、はっきり分かった……♡

 

 これからボクは、どうなってしまうんだろう。それはきっと、彼にしか分からない。

 でも、絶対に、ボクが一番になってみせるから。だから、ずっと一緒にいてね――ダーリン♡♡♡




こんなんでええのか? 正直拘りだすとと切りがないから適当に投稿するやで。
次は聖王視点。まあ今日は書けたが明日は分からん。ワイの気分に翻弄されてや。
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