岸田文雄首相は12月6日午後、衆議院本会議で所信表明演説を行った。
岸田首相は演説で新たな変異ウイルス・オミクロンへ備えるための水際対策強化に理解を求め、「ご批判は私がすべて負う覚悟」と決意を語った。
今後のコロナ対策はどうなるのか。55.7兆円の経済対策の中身はどのようなものか。岸田首相が語ったことをまとめた。
「ご批判は私がすべて負う覚悟」
岸田首相がまず言及したのが、オミクロンの登場で警戒が続く新型コロナ対策に関してだ。
欧州では過去最多の感染者数を記録する国もあることに言及し、「大事なのは最悪の事態を想定すること」と語った。
「オミクロン株のリスクに対応するため、外国人の入国について全世界を対象に停止することを決断いたしました。まだ状況が十分にわからない中で慎重すぎるのではないかとのご批判は私がすべて負う覚悟です。国民からの付託はこうした覚悟で仕事を進めていくためにいただいたと理解をし、全力で取り組みます」
コロナ対応のポイントとして、次の3点を掲げた。
(1)病床確保や病床利用の見える化、新型コロナ専用病床確保など次の感染拡大を見据えた医療提供体制の整備
(2)ワクチン・検査・治療薬などによる予防・発見・早期治療までの流れの抜本的強化
(3)感染症危機管理の体制整備
注目が集まる3回目のワクチン接種(ブースター接種)に関しては、次のように述べた。
「2回目の接種から8ヶ月以降の方々に順次接種することを原則としておりましたが、感染防止に万全を期す観点から、既存ワクチンのオミクロン株への効果等を一定程度見極めた上で、優先度に応じて追加承認されるモデルナを活用して、8ヶ月を待たずに、できる限り前倒しをします」
検査に関しては、健康上の理由でワクチン接種を受けられない人などを対象に、感染拡大時に無症状でも無料で検査を受けられる体制を整えると説明。
経口治療薬については、「年内の薬事承認を目指します」とした。
総額55.7兆円規模、その内訳は?
「今回の総額55.7兆円の大規模な対策をコロナ克服・新時代開拓のための経済対策と命名いたしました」
過去最大規模の経済対策の内訳は次のとおりだ。
・感染拡大への備え(13兆円規模)
・コロナによって厳しい状況にある人々、事業者への手厚い支援(17兆円規模)
・デジタルや気候変動など新たな時代を切り拓くための財政出動(20兆円規模)
「危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します」
「経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。経済をしっかりと立て直します。そして、財政健全化に向けて取り組みます」
給付金だけでなく「Go To 事業」の再開も
「通常に近い経済社会活動を取り戻すには、もう少し時間がかかります。それまでの間は断固たる決意で新型コロナでお困りの方の生活を支え、事業の継続と雇用を守り抜きます」
・経済的に困窮している世帯、厳しい経済状況にある学生や子育て世帯への給付金
・生活に困窮している人への生活困窮者自立支援金の拡充
など総額7兆円規模の対策を行うとした。
事業者に対しては、2.8兆円規模の給付金によって事業復活に向けた取り組みを後押しする。
昨年秋から一時的に行われた「Go To 事業」も再開する方針だ。
「ワクチン・検査パッケージを活用した行動制限緩和の方針に基づき、通常に近い経済社会活動の再開に取り組みます。安全安心な形で新たなGo To 事業などの消費喚起策を行う準備も進めます」
なお、感染再拡大の際には行動制限の強化などを機動的に進めるとしている。
注目の賃上げ、その仕組みは?
コロナ対応の先に岸田首相が見据えるのが「新しい資本主義」の実現だ。
そのための成長戦略として、科学技術によるイノベーション推進、スタートアップエコシステムの強化、10兆円の大学ファンド創設、大学初ベンチャーの創出などに取り組むという。
「新しい資本主義」を実現する上で、注目が集まるのが賃上げだ。
政府は民間に先駆け看護や介護、保育などの分野での給与引き上げを行う。
介護、保育、幼稚教育の現場で働く人々については来年2月から3%の給与引き上げを、看護職で働く人々については新型コロナ対応など一定条件を満たす人を対象に段階的に3%の給与引き上げを行う。
民間企業に対しても税額控除率引き上げなどで賃上げを後押しする環境整備を行う。
「世界の物価が上昇し、我が国に波及する懸念が強まる中、我が国の経済を守るためにも賃上げに向け全力で取り組みます」
また、非正規雇用の人々の学び直しや職業訓練の支援強化や再就職、正社員化などのステップアップも後押ししていくとした。
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