本書『高等科修身 男子用』は国民学校高等科１、２年生（今の中１、中２）男子を対象とした教科書である。大戦末期の戦局が悪化した時期の、つまり国家非常時の教科書であり、しかも兵役の義務のある男子用であるという点で、これまで復刊された修身教科書とはその趣を異にしている。

本書の内容は、帝国憲法や教育勅語、軍人勅諭などに込められた精神を、実例をもってわかりやすく説明するとともに、国家の非常時における国民の心構えを説いた、戦時色の濃いものとなっている。その理解の助けとなる箴言も多数収録され、本文中で引用される「軍人勅諭」「教育に関する勅語」「青少年学徒に賜わりたる勅語」「米国及英国に対する宣戦の詔書」はその現代語訳も掲載されている。

終戦後、『高等科修身』の教科書は他の修身教科書と同様、ＧＨＱの指示によって回収され、修身の授業そのものも廃止された。以後、日本の子供が学校で「修身」を学ぶ機会は失われたままである。

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この一冊に僕の精神の全てが凝縮されています。

教育は子孫に残せる最も大きな財産です。

今こそ子供たちに伝えたい一冊。

お読みください。

高須クリニック院長　高須克弥

解説「教育が全ての根幹」より抜粋　高須克弥（高須クリニック院長）

僕は昭和二十年一月生まれなので、当然国民学校には通っていませんし、国民学校で使用されたこの教科書で勉強したわけではありません。しかし、この教科書に書かれていることは、子供のころから習っていたし、今も自分の心の支えになっています。だからこの『復刻版　高等科修身　男子用』の解説を依頼されたときに、「ああ、これは僕が家庭教師から習ったことと同じ内容だ」と真っ先に思ったのです。

ある日のこと、いつものように祖母と母に「今日は小学校でどんなことを習ったの？」と聞かれたので、「天皇はこんな悪いことをした、日本は他国を侵略した悪い国なので、我々は償いをしなければならないといったことをいろいろ教わった」と言ったところ、二人とも血相を変え、「それはとんでもないことだ」と言うのです。それで、「その先生はどんな人なの？」と聞くので、「シベリアに抑留されていたけれど、早く解放されて帰ってきた先生で、師範学校在学中に学徒動員された人だよ」と答えると、祖母と母はこう言いました。

「その先生は共産主義者です。その先生の言っていることは全部嘘だから、もういっぺん正しいことを教え直します！」

そこからの祖母と母の動きは早かったです。まず、親戚に師範学校をいい成績で卒業したベテランの教師がいたので、その人を家庭教師につけてくれました。母は、それではまだ足りないからと言って、母の恩師で地元では有名な教育者の方も家庭教師につけてくれたのです。その二人から習った内容が、本書『復刻版　高等科修身　男子用』をはじめとする国民学校の授業内容だったのです。

この教科書をはじめとする戦前戦中の教科書と、今の日本の教科書を世界中の国の人に見せてみて、どちらが筋が通っているか聞いてみるとわかります。例えば、今のウクライナの人にどちらの教科書が正しいか聞けば、昔の教科書の方が絶対正しいと言うと思います。「武器を取って戦うことを放棄する」とか、「みんなの善意で守ってもらうことを期待する」とか、現在戦禍にあるウクライナに限らず、どの国の人もまともなことだとは思わないのではないでしょうか。

その一方で、親孝行や先祖を敬うというようなことを、今の日本の教科書は全く無視しています。今の子供たちは「忠」も「孝」も知りません。そういう点でもこの『復刻版　高等科修身　男子用』の方がグローバルスタンダードだと思います。

もちろん時代的なものもあるので多少アナクロになっている箇所はありますが、この教科書の基本的な精神はどこの国の人でも理解できるものです。

戦後教育ですっかりやられてしまったせいで多くの国民が洗脳されています。日本は戦後教育によってうまく骨抜きにされて、今、立ち回りが世界一下手な国になっています。だから、教育が重要なんです。

主な登場人物

神武天皇、大伴家持、和気清麻呂、藤原隆家、後一条天皇、後鳥羽上皇、道元、菊池能隆、宗助国、平景隆、菊池武房、亀山上皇、北条時宗、後醍醐天皇、菊池武時、北畠親房、楠木正成、菊池武光、楠木正行、菊池武政、菊池武朝、鍋島直茂、熊沢蕃山、伊達政宗、山本常朝、平田正輔、関孝和、竹内式部、本居宣長、伊能忠敬、伴信友、橘守部、会沢正志斎、広瀬淡窓、二宮尊徳、大原幽学、徳川斉昭、仁孝天皇、加納諸平、藤田東湖、横井小楠、緒方洪庵、春日潜庵、佐久間象山、橘曙覧、真木和泉、勝海舟、吉田松陰、孝明天皇、橋本左内、永山武四郎、黒田清隆、品川弥二郎、東郷平八郎、乃木希典、明治天皇、小村寿太郎、杉浦重剛、清沢満之、大正天皇、山本五十六、古賀峯一、山崎保代中将、杉本五郎、昭和天皇、若林東一大尉、古野繁実少佐

内容の理解を深める箴言多数収録

倹約の仕方は、不自由なるを忍ぶにあり。（伊達政宗「伊達政宗壁書」）

学道勤労して他事を忘るれば、病も起るまじきかと覚ゆるなり。（道元「正法眼蔵随聞記」）

懈怠怯弱の百歳は、勇猛努力堅固の一日に如かず。（「法句経」）

身の楽しむ時、謹むべし。心の驕る時、恣にすべからず。（「曾我物語」）

農は万業の大本なり。（二宮尊徳「二宮翁夜話」）

穀無きにあらず、耕さざるが故なり。（二宮尊徳「二宮尊徳全集」）

いかに強敵かさなるとも、ゆめゆめ退する心なかれ、恐るる心なかれ（日蓮「如説修行抄」）

我一歩を退くれば彼一歩を進め、我一日優遊すれば彼一日精熟す。（真木和泉「魁殿物語」）

事なさば十年も千年、なさざらば千年なにせん。（加納諸平「柿園詠草」）

附録・女子用について

『高等科修身 女子用』については２年生用が残っていないため、１年生用の中の、男子用と重複しない「しゅうと」「貞操」などの章を附録に収録してあり、戦時中の女子教育の一端を垣間見ることができる。

「貞操」より一部抜粋

男女が結婚して、嫁が夫の家に入った上は、夫婦として相愛するとともに、互に敬意を失わず、喜びも悲しみも共にして、一生変らない心がけがなくてはなりません。妻となっては、夫が病弱や貧困におちいったりしたからと言って、それを捨て去るようでは、日本古来の尊い婦徳をそこなうことになります。貞操は、実に女子の生命であります。それ故、私どもは死を賭しても、貞操を守らなければなりません。たとえ、どのように才能がすぐれ、容色が秀でていても、この根本に欠けるところがあっては、女子としてのねうちがないのです。心の美は、形の美の比ではありません。女子の身を誤るのは、安逸を願い虚栄を求めることに起る場合が少くありません。随って、私どもは、常に自重して誘惑に打ちかち、貞操を全うする覚悟が大切であります。