スーパー薩摩人 IN 兄世代   作:充椎十四

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・作中の鹿児島弁は方言変換サイトを利用したものであり、誤用があるだろうと思われます。鹿児島県民の皆様におかれましては、誤っている部分は教えていただけると助かります。
・鹿児島弁が難しすぎて他の地方の者には理解が困難なため、特に理解しづらいであろうセリフの後には()内で意訳をつけています。
・ツイッターの薩摩ホグワーツにテンションがブチ上がって書いたので、どこか矛盾しているかもしれません。
・ハッフルパフ以外全て貶しているうえ、一番貶したのはスリザリンですが、私はスリザリン寮を一番愛しています。愛じゃよハリー。
・翻訳魔法のセリフは読みやすさと「翻訳されているから」という理由でデスマス調。
・猿叫に矢印つけましたが、見づらかったら消します。


スーパー薩摩人 IN 兄世代

 ときは戦国――間違えた、世紀末に手が届かんとする1989年。イギリスの名門魔法学校ホグワーツ魔法魔術学校に入学する東洋系の少年が二人、在校生が待つ大広間の扉をくぐった。

 

 一人の名は東郷松平、もう一人は岩谷龍平。母方の血を同じくする従兄弟である。

 

「イワヤ! イワヤ・リューヘェイ!」

 

 新入生の組分けを主導するマクゴナガル副校長が龍平の名前を呼ぶ。

 

「おいか……マツ、先に行って待っちょい」(先行くわ)

「ああ」

 

 そう言ってずんずんと人混みを掻き分けた骨太の少年――龍平の組分けは一瞬で終わった。彼の頭に組み分け帽子が触れるか触れないか、帽子の切れ目が「スリザリィン!」と声を張り上げたからだ。

 

「すいざん……翠山? どこよ?」

「スリザリンです。ローブのフードが緑色の席へ行ってください。緑です。緑」

「グリーン、緑か」

 

 英会話能力が不十分な龍平にマクゴナガル教授はゆっくりと単語を繰り返す。

 東洋にも魔法学校はある――なのにわざわざイギリスに来た、それも会話すら怪しい様子の留学生にどう対処したものか。スリザリンのテーブルはざわめく。

 

 龍平は肩にかけた長い布袋と同じくぴしっと背筋を伸ばし、スリザリン寮の長椅子に腰掛けた。龍平と向かい合う位置にいた困り眉の女子新入生はもぞもぞと尻を動かし龍平の視界から外れようと逃げる。

 

 そしてまた何人もの組分けがなされ、呼ばれたのは「トーゴー・マツヘイ」――マクゴナガル教授の発音は「トーゴー・マッ! ヘェイ!」だったが。もう一人の東洋人だ。龍平と同じく胴長ぎみの体格に、顎元は丸くエラの張った輪郭、黄味がかった肌と濃く太い黒髪。東洋人を見慣れぬホグワーツ生たちには、リュウヘイとマツヘイの二人は双子であるように見えた。

 

「スリザリンッ!」

「よしッ」

 

 やはり松平も組分けが即座に決まった。帽子が頭に触れた瞬間の組分けであったから、人種や母語はともかく、二人ともスリザリンに相応しい者だということは明確だった。

 

「マツぅ、こけけ!」(こっちこっち)

「おう」

 

 松平は龍平が呼ぶまま彼の隣――言葉が通じないため隣に座りたがる新入生がいなかった――に腰掛けると、少し離れた逆隣の少年に声をかける。

 

「初めまして、おいは東郷松平で、こっちは従兄弟の岩谷龍平。よろしく。おい龍、びんた下げやんせ。同い年ど」(とりあえず頭下げておけ、同い年だから)

「よろしゅ……あー、ハロー」

 

 なまりはあるが流暢な英語を口にした松平に、少しウェーブのかかった短髪の少年が目を丸くする。

 

「エイドリアン・ピュシー。お前たち英語を話せるんだな、話せないのかと思った」

「話せるのはおいだけだ。おいはニシサツマ島出身でな」

 

 ニシサツマ島、それは国際魔法使い連盟において公式に認められる「日本の飛び地」だ。島民は全員日本国籍を持っており、内訳は九割の鹿児島県民と一割の九州内の他県民、わずかに都民その他もいる。温暖な地中海に浮かび、なんと面積は3200キロ平米もある――マグルの認識する『鹿児島県』の面積はおよそ9200キロ平米である。

 凶悪な固有種や魔法生物が跋扈していたためかつては人の住めぬ悪魔の島と呼ばれたが、16世紀末に入植した薩摩人が開拓に成功しニシサツマ島と名付けた。初めに旗を立てた者がその島の主だ……ニシサツマ島は日本の領土となった。

 

 日本の領土とはいえ立地が立地だ、ニシサツマ島の島民は複数言語を操る。松平が英語を堪能に操るのも不思議な話ではない。

 

 しかし松平が出身を語った瞬間、彼の周囲にいた寮生らがどよめく。

 

「ニシサツマ島だと……!?」

「あのニシサツマ島の出身ですって」

「まさか本当に、あそこの?」

 

 ニシサツマ島の名前を聞いたことのない魔法族は、ことヨーロッパにおいては存在しないと言って良いだろう。なんせ魔法界でも指折りの景勝地、それがかの島――ニシサツマ。

 大陸に囲まれて安定した気候の地中海にあり、ブリテン島はもちろんドイツフランスより南方にあるため年間を通じて温暖。豊かな海の幸、柑橘類、サツマイモ、温泉とその熱を利用した熱帯植物園……まさに楽園と言って良いだろう。ホリデーに行きたい避寒地ランキング欧州編では必ず金か銀どちらかのラベルが付く。

 しかし……しかしだ。それは「観光地」としての評価であり、住みたい土地であるかはまた別である。

 

「ここに住んでからは息をするように死の呪文を撃てるようになったね。昔の闇の魔法使いに感謝」

「やらねばやられる、だからやる」

「物音がするとアバダる癖がついちまったから、もう余所には住めないと思う。余所に行ったら二時間後には殺人犯になってるだろうよ、ハハハ! え、そのジョーク面白くない? 私はジョークなんて言ってないよ」

「禁忌なんてさ、自分の命の危険の前では無意味ではないかな?」

「アバダケダブラだけは禁忌の呪文から外すべきだと思うね。殺傷能力の高い魔法はいくらでもある……一発の魔法で相手が即死するか即死しないかって違いしかないんだ」

 

 以上、ニシサツマ島に移住した者たちの発言の一部である。

 これほど評価の明暗がはっきりと分かれている土地は他にあるまい。

 

 松平は「ニシサツマ島の出身だ」と言った。あの島に住んでいるのだ。

 スリザリン寮生と、テーブルが近いため聞こえてしまったレイブンクロー寮生らは揃って顔色を悪くした。

 

「なんじゃわいら、ないしちょっとよ……マツに喧嘩売っちょるんけ? おい」(なんだお前らマツに喧嘩売ってんの?)

「どうどう。あいどんはニシサツマ島を恐れちょっとよ」(こいつらうちの島を怖がってんのよ)

「やっせんぼか」(ビビリかよ)

「龍……」

 

 ぽんぽんと交わされるニシサツマ島の言葉は分からないが、ピューシーらの態度に機嫌を損ねた龍平を松平が宥めているらしいことは分かる。

 ピューシーは、「ニシサツマ島民はクソ爆弾より危ないから近づくな」という両親の助言より、目の前で弟を宥める兄の姿を信じたいと思った。言葉は通じるのだ――同じスリザリン生として机を並べる相手と仲良くしたいと考えるのは、ごく当たり前のことだろう。

 

「ぼくのことはエイディーと呼んでもいい。ミスター・ヘイ、お前の愛称は?」

 

 年若い少年の勘違い――龍平の名をイワヤ・リュー・ヘイ、松平の名をトーゴー・マッ・ヘイと思い込んだピューシーは、哀れ、ホグワーツの長く短い7年を薩摩原人二人の騒動に巻き込まれて過ごすこととなる。

 

++++

 

 入学式の翌日は土曜で、授業割の配布などのオリエンテーションに当てられた。日曜はそれぞれ荷ほどきしたり校内を探検したりと過ごし、月曜。一限目の授業の魔法薬学はスリザリンとグリフィンドールの合同だった。寮監の担当する授業だからと時間に余裕をもって教室に入ったスリザリン生らの呼気は白い。まだ9月のはじめだというのに、地下にある教室は底冷えする寒さだ。

 授業開始時間が近づくと教室内の人数は増え、人の熱気で寒さも少しはマシになった。

 

 見れば、入り口から見て右手にグリフィンドール、左手にスリザリンが固まって座っている。整列のせの字も知らない手前勝手な十一歳児らがこうもきれいに分かれて座る姿はいっそ不自然なほどだし、境界で隣り合ってしまった2寮の生徒たちはお互いに嫌そうな顔で相手を睨んでいる。

 彼らがこうなったのには理由がある――その一番の理由は、強硬なマグル排斥主義を掲げた『例のあの人』やそのシンパらがスリザリン出身であり、今も彼の思想に親和する者が多いこと。そしてグリフィンドールには融和主義者とマグル出身者が多いことだ。

 

「あーあ、どうしてスリザリンなんかと合同授業なんだろうな。なぁ兄弟?」

「そうとも兄弟。ハッフルパフかレイブンクローとの合同なら良かったのに」

 

 グリフィンドールの双子フレッドとジョージが声を張り上げてスリザリンを当て擦る。直情径行な気のあるスリザリン寮生がいきり立ち椅子を蹴ったが、隣の少年に腕を掴まれて床に座らされた。

 

「相手にするな、馬鹿が伝染る」

「従兄から聞いたが、あそこの一家は無駄に子沢山だという噂だよ。躾が追いついていないんだろう」

「やはり育ちがものをいうんだよ、血が一番大事だとはいえね」

 

 スリザリンは冷静沈着、と言えば聞こえはいいが、陰険で陰湿な質の者が多い。溜め込んで煮詰めるのが得意なのだ――魔法薬のように。大声ではないがはっきりと聞こえやすく嘲ったスリザリン寮生らの性根は流石ブリティッシュ、ジェントルの極みと言って良いだろう。倍返しどころのレベルではない。

 親の顔を見てみたいと鼻で嗤われたウィーズリーの双子はその赤毛ほどに顔を赤く染めて椅子を蹴倒し、机を拳で殴った。

 

「ぼくたちの親を馬鹿にするな!」

「うちの良さを知りもしないくせに!」

 

 ――椅子を三脚も蹴倒(ノック)し、机も殴り(ノック)つけたせいだろう、しつこいノックは寝ている隣人を起こすし、教授を呼び出すこともできる。教室の扉が勢い良く開かれた。

 

「全員着席……は、出来ていないようですな。君たちには他の生徒の座っている姿が見えないのかね? まさか授業の受け方から指導する必要があるとは……グリフィンドール、5点減点」

 

 現れたのはグリフィンドール嫌いの筆頭と名高い男、セブルス・スネイプ。「スネイプ教授はグリフィンドール生をいびり倒すことを生き甲斐にしている」というネガティブな噂は、まだ入学して数日の生徒らの耳にも届いており……授業が始まる前に事実と証明された。

 早速減点されたバカをくすくすと嘲笑うスリザリン生に対し、グリフィンドール生は唇をかみしめ般若の面を向ける。どちらの寮生も若く元気に溢れているらしい、境界に溝を掘るのが得意だ。そのうち掘り慣れて塹壕を作り始めることだろう。

 

 さて、ニシサツマ島民含む日本人二人はというと、寮同士の戦いには不参加だった。松平も龍平も教壇に近い前の机に座り、スネイプ教授が現れるまでずっと、太腿に握り拳を置き瞑想していたのだ。

 エゲレス人がエゲレス人とエゲつない口論をしていようがいまいがどうでも良いという態度だ。首を突っ込む気はさらさらないのだろう。

 

「さて――この授業では、ミスター・イワヤは翻訳が必要だったな? ミスター・トーゴー。ミスター・イワヤに魔法アイテムの使用を許可すると伝え給え」

「はい教授。……おい、龍。翻訳の腕輪使うてよか」

「よし、やっとか」

 

 松平はニシサツマ島生まれの鹿児島県民だが、龍平は違う。桜島の火山灰を浴びて育った鹿児島県民だ。日本で日常的に使われている英単語しか分からない。

 

「ポチッとな」

 

 ホグワーツは名門魔法学校であり、古い魔法アイテムも所持している。歴代校長の肖像画はある種の魔法アイテムであるし組み分け帽子も魔法アイテムだ。よって、翻訳の魔法がかかった魔法アイテムも当然所有しており、必要があれば貸し出しされる。

 

 腕輪型のそれはツマミを内側に押し込めば作動する。龍平の耳に「意味の通じる言葉」が届いた。

 

「さて、吾輩の言葉が理解できるかね、ミスター・イワヤ。理解できているのならそのレベルを説明し給え……君には吾輩の発言がどのように聞こえているのか。慇懃だ、もったいぶっている、など、な」

 

 スネイプ教授はわざとらしく自分を貶したが、それで笑う者は一人もいない。笑えば減点されることは明らかだ。

 

「はい。えー、スネイプ先生の口調は、おいには回りくどいと感じます。おいはペンより剣の方が得意なので、もっと直截的に言っていただいたら助かります」

「そうかね」

 

 龍平の口から出た流暢なクイーンズ・イングリッシュにスネイプ教授は鷹揚な態度で頷いた。

 

「……このようにミスター・イワヤは魔法アイテムによって我々と会話することができるが、このアイテムは貴重なものであり、原則として授業中のみの使用が認められている。彼からこれを取り上げたり、使えないようにしたり、そのほか彼の受講を妨げる行為は全て減点及び罰則を課す。分かったかね?」

 

 この教室内にいるほとんどの純朴な生徒らはスネイプ教授の言葉の裏の意味を捉えられなかったが、ごく一部の生徒はスネイプ教授の素晴らしく陰険もとい狡猾な手口に舌を巻いた。

 これからスネイプ教授やスリザリン寮の監督生は、ありとあらゆる場面で――主にグリフィンドール生を対象として――「岩谷龍平が勉強するのを邪魔した」と因縁をつければ、相手に減点と罰則を課すことができるのだ。

 

 見よ、スネイプ教授の頬は健康的な色をしている。

 

「では、出欠を取る。……エイミー・ヨーク」

「はい」

 

 名を呼ばれた者が手を挙げるというだけの時間がおよそ五分。

 極めてスリリングな授業――「前方の板書きをメモしない11歳児の魔法薬づくり」が始まった。

 

 魔法薬学には決まりが多いが、魅力的な学問だ。

 たとえば、角ナメクジは煮すぎても生煮えでもいけない――魔法薬学に精通すれば好みの固さのゆで卵を毎朝食べられる。朝が嫌なら晩でもいい。

 ニガヨモギはきっかり同じ幅に刻まねばならない――もし退学処分を受けたり職を失ったりしても中華料理屋に行けば「千切り大臣」として屋根裏部屋に住まわせてもらえる。向き合うのが薬草から薬味に変わるだけだ、慣れたものだろう。

 右に3回撹拌した次は左に7回撹拌せねばならない――南に3歩進んでから北に7歩進むことと、北に4歩進むことの違いを答えられる者だけが魔法薬学を理解できるのだ。つまり詐欺師の適性もある。

 

 魔法薬学は難解な学問だ。細かい決まりを守りさえすれば目的の薬を作れるとはいえ、その細かい決まりが多すぎて覚えきらない。

 だからこそ「ノートに書くこと」は大事で不可欠なのだ……が、魔法薬学初学者である少年少女らがそんなことを理解しているわけもない。分からなくなったら前の板書きを見ればいいと考え真っ白なノートを閉じてカバンに仕舞い、生徒たちは錫製の鍋と向き合った。

 

 スネイプ教授はグリフィンドール生らの机をじっとりと回り、スリザリン生らの机は一言二言のアドバイスを与えながら回る。ぐるりと一周して教壇に戻ってきたスネイプ教授は、悲痛な表情で材料を刻む龍平の顔にぎょっと足を止めた。

 

「どうしたのだ、イワヤ。そんな顔をして……なにか問題でもあったのか?」

「教授、お願いがあります。今日の授業が終わったらコイツを……ナイフをおいどんに研がせてください」

「ナイフを」

「親っどんにはまだまだ劣るんですが、マツもおいも刃物には慣れてます。このままではあんまりにコイツが不憫で」

「ナイフが不憫」

 

 「ナイフが不憫」、スネイプ教授は龍平の言葉を繰り返した。ナイフに対して不憫という表現を使う人間と出会ったのは初めてだった。

 

「はあ、そうか……。まあ……そうだな……吾輩には理解できんが、君がそう感じるのならそうなのであろう。二人とも、放課後にこの教室へ来ると良い」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます、教授」

 

 1年生から7年生までの生徒が毎日酷使するのだ、魔法薬学用のナイフはすぐに鈍る。それを砥ぐほど教員も用務員も暇ではないし、授業用ナイフに愛着もない。

 愛用のティーセットでもあるまいに、今日初めて触れたナイフにそれほど入れ込むとは。

 

 スネイプ教授は龍平と松平の背負う布袋にちらりと目をやって、すぐに伏せた。

 

 板書きをノートに書き写さず失敗した大多数と、書き写さずにまともなものを作った稀有な数人と、書き写して成功した数人がぞろぞろと魔法薬学室を出て――スリザリン寮のニ限目は呪文学だ。まだ校内のどこに何の教室があるのか分かっていない彼らは地図を見ながら集団で移動し、同じ寮の先輩に案内されて呪文学の教室に着いた。

 

 呪文学の教授はレイブンクローの寮監フィリウス・フリットウィック。一般的な成人の半分ほどの背丈しかないために本を足場にした彼に、龍平たちは唖然として腰を浮かせた。エイドリアンはそんな二人にぎょっと目を丸くする。

 

「二人ともどうした、これから授ぎょ――」

「おいこらおめ、きっさね足でない踏んたくっちょる!」(おまえその汚い足で何踏んでんだ)

「先祖に顔向けできんぞ!」

 

 肩から斜めがけした布袋に手を伸ばすと滑らかに抜刀、そう、二人は何らのためらいもなく抜刀した。

 突然剥き身の刃物を晒した彼らに教室のあちこちから悲鳴が上がる。あいつらを止めろ、という声もあったが「どうやって!?」の問いに答えられる者はいない。何人かは腰が抜けてなお逃げようと這いずり、扉に近い席にいた生徒は廊下へまろび出て周囲に救いを求めようとし――他の学年がどこで授業をしているのか、教官室はどこなのか、それすら知らない絶望的状況に彼女は細い息を吐き出して気絶した。

 フリットウィック教授は場を収めようと声を張り上げる。

 

「一体どうしたんですか、二人とも! その杖を仕舞いなさい!」

「本を踏みつけるモンから教わることはなか!」

「生き恥晒すな!」

 

 コロッセオ状の教室を良いことに、スーパーサツマ人二匹は天狗もかくやという俊敏さで教壇へ飛び下りながら刀――柄に魔法生物の素材を使っているため対外的には杖である――を真っ直ぐ振り下ろす。

 

「キ↑ェ↑ェ↑ェ↑ェ↑ェ↑ェ↑イ↑!!」

「――キョ↑エ↓エ↓エ↑エ↑エ↑エ↑!」

 

 呪文学の授業は延期になった。




一巻で一番受け入れ難かったシーン
「本を踏み台にしている教授」

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