渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ドラマ西部劇『ホアキン・ムリエタの首』(2023)

2023年03月08日 | open


1852年。西部開拓時代。
まだ南北戦争の遥か前。
アメリカとの戦争に敗れた元
メキシコ軍将校は、戦争後に
部下の遺族を訪ねる購いの旅
にいた。訳ありで育てる中国
人少女と共に。
二人はいつの間にか、横暴な
合衆国では手配書付き賞金首
のおたずね者になっていた。

展開が面白いので観ていたら、
あれ?と。
少女ガンマンがダブルアクション
のS&Wを使ってる。
をひ、まてよ、と。
で、悪の米軍将校はパーカッシ
ョンのコルトネービー(.36口径
がネービー、.44口径がアーミー)
に何やら金属カートを詰め替え
る仕草をしている。
待てよ、おい、となった。

決定打。悪い奴らにインディアン
の妻と子を虐殺された男の復讐の
銃撃戦。
悪の米軍兵士が使う銃。

これね、絶対にあかんやつ。
このシーンは1852年ですからね。
絶対にあかんて。
こういう出鱈目は絶対に!
タイムスリップ物ならともかく、
時代劇でこれは駄目。やっては
だめ。
日本の戦国時代の合戦で、テッポ
ならなんでもいーじゃん、と製作
が戦国時代の鉄砲隊に89式
小銃を持たせるようなもの。
「え?何か?だって同じ鉄砲だよ」
というくっそ出鱈目で無責任な仕
事ぶりが本作ドラマには存在する。
どんなにストーリーが良くとも、
この銃の扱いの表現一つでこの
作品はクソ以下になっている。
製作者の姿勢がクソ以下なのだ。
駄目、これ。
そのうち1852年の撃ち合いで
UZIサブマシンガンとか出て来
そうだ。
時代物を描きながら、その時代
に存在しない事物を映像で描く
のは、それは時代的背景や人間
たちの姿さえも蔑ろにしている
のであり、やってはいけない。
何を描こうが自由じゃないか、
というものではない。
邦画『スキヤキウエスタン 
ジャンゴ』のようなパロディ
ストーリーならともかく。
『日本以外全部沈没』とか。
シリアスな映像作品で、しかも
時代劇が時代を尊重しない映像
は、すべて出鱈目な作となる。
何がダメって、それは製作者の
姿勢と創作思想だ。
時代への敬意も何も無い。
上っ面のアクションと薄っぺら
な人間物語だけで時代を生きた
生の人たちの葛藤や悲しみや
喜びを描ける筈がない。
外してはならないボーダーライン
というものが映像製作にはある。
本作、スカである。
久しぶりに、まともそうに見え
実は作り手がスカという作品
観た。

来るだろうなーと思っていたら、
やはりピースメーカーまで出て
来た。作品が描く時代は1852年
です。やめろって。

主人公が使う銃はスペインの
デニックス社のモデルガンだ。
日本のを真似して作ったが、
リアルさに欠けるやつ。
シリンダーに変なスリットが
入ってるでしょ?これがデニ
の特徴。
しかも、この役者、パーカッ
ション銃なのに雷管を被せて
いのに撃とうとしている。
このテレビ映画、何もかも❌


また出て来る。
助っ人になるインディアン戦士
が渡した拳銃はコルトのパーカ
ッションだったが、撃つ時はこれ。
全てがテケトン。


ダブルアクション、スイング
アウトシリンダーのニッケル
メッキモデル。


銃撃戦で青服の米兵が使うのは
ピースメーカー。1852年で。


そして、やはりダブルアクション。
スイングアウト式。
繰り返すが1852年設定である。
勝海舟が江戸城から電話かけてる
ようなもん。


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