ロシア軍にダメ出しする『解放軍報』
解放軍は、露宇戦争におけるロシア軍の動向に注視し、その教訓を将来の台湾統一作戦に生かそうとしている。
解放軍の『解放軍報』は2023年1月12日付の記事で、苦戦するロシア軍に対してダメ出しを行っている。
その記事は、露宇戦争におけるロシア軍の問題点を率直に指摘した興味深い内容であるので紹介する。
●ロシア核戦力の統合
・『解放軍報』の記述内容
通常戦力が立ち遅れるロシア軍にとって、核戦力は米国やNATO(北大西洋条約機構)との戦略的に対等な立場を維持するために不可欠な戦力になっている。
ロシア軍は、戦略核戦力の「3本柱」へのコミットメントを維持し、2022年に核兵器の近代化率を91.3%に高めた。
この年、最初の戦略爆撃機「Tu-160M」が航空宇宙軍に引き渡され、955A(ボレイ)型戦略原子力潜水艦「スヴォーロフ」が北方艦隊に編入され、大陸間弾道ミサイル(ICBM)サルマトが戦闘任務に就いた。
また、ロシアは核封じ込めを効果的に補完するものとして、極超音速兵器に代表される非核兵器の封じ込め戦力を拡充し、「核と通常戦力」による2重封じ込め戦略効果を狙ってきた。
また、核演習によって核戦力を誇示し、核戦力の運用能力の向上を図り、「第3次世界大戦は核戦争になる」と西側諸国に警告を発した。
一方、実戦では戦略爆撃機による巡航ミサイルの発射、極超音速ミサイル「キンジャール」の反復使用などで決意を示し、NATOの直接軍事介入を抑止した。
ロシアはNATOに対する効果的な戦略的抑止力を確保するために、主権と領土保全、国際戦略バランスの重要な保証として、戦略核戦力の「3本柱」を維持し続けるであろう。
・筆者の解説
プーチン大統領が戦争の終始を通じて多用しているのが「核のカード」である。ロシアは、通常兵力ではNATOに劣っており、NATOとの均衡を保つために核抑止力に依存している。
ロシアは、「核演習を行い、核戦力の戦闘態勢を高め、第3次世界大戦は核戦争になると警告する」ことで西側諸国のウクライナへの支援を抑止している。
つまり、プーチンの核の脅しにより、バイデン政権は「F-16」や「ATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)」のウクライナへの供与を拒否している。
私はこの状況を「プーチンの核の脅しによる認知戦がバイデン政権に対して効果を発揮している状況だ」と表現している。
『解放軍報』の記事では、ロシアが通常弾頭の極超音速ミサイルを使用することで、「NATOの直接軍事介入を抑止した」と記述しているが、私はこの記述に反対する。
私は、ロシアの極超音速ミサイルの効果は限定的だったと思っている。やはり、非核ではなく核ミサイルの抑止効果の方が圧倒的に大きいのだ。