ロシア軍の人員・兵器の損耗は大きい

 ロシア軍がこの戦争で被った人員と兵器の大量損耗は、今後の戦況に大きな影響を与えることになる。

 英国防省によると、2月末の時点におけるロシア軍の死傷者は20万人で、死者数は6万人に上る可能性があるという。

 この6万人という数字は、第2次世界大戦以降の戦争で死亡したロシア兵士の数よりも多い。

 戦略国際問題研究所(CSIS)のリポートは次のように分析している。

「ウクライナ戦争でのロシア軍の死者数は6万から7万人だ。ロシア軍の毎月の死者数は、チェチェン戦争での死者数の少なくとも25倍、アフガニスタン戦争での死者数の35倍である」

 ロシア軍の兵器の損耗であるが、オープンソースの情報を分析している組織「Oryx」の分析によると「ロシア軍はウクライナで毎月約150台の戦車を失い、2022年2月以降、合計1779台の戦車を失っている」という。

 一方、エコノミスト誌によると、ソ連は1940年代、月に1000台の戦車を生産することができた。

 現在、ロシアには戦車会社がウラルバゴンザボード(UralVagonZavod)1社しかなく、毎月20台前後の新型戦車を生産することができるが、1つの会社がウクライナ戦争における膨大な需要に追いつくのは困難である。

 ウラルバゴンザボードはまた、毎月8両の古い戦車を改修しており、ロシアの他の3つの修理工場は毎月17両ほどを改修している。

 ロシアは近い将来、新たに製造される毎月20両の戦車に加えて、毎月約90両の戦車を復活させることができる可能性はある。

 しかし、ロシアはウクライナで毎月約150台の戦車を失っており、再生可能数は損失数には及ばないだろう。

 つまり、経済制裁下における兵器生産の限界により、戦車以外の兵器においてもその損耗を穴埋めできない状況だ。

 その結果、ミサイルや弾薬は不足し、戦車等の主要兵器が不足する状況である。

 ロシアは、イランや北朝鮮から弾薬や兵器を入手する努力をしているが、それでは不足を賄えない状況だ。

 そこで注目されるのが、中国からの弾薬や兵器の入手である。

 もしも中国が武器や弾薬を大量にロシアに提供すると、露宇戦争に根本的な影響を与えることになる。

 そのため、ジョー・バイデン政権は何が何でも中国の武器等の提供を阻止しようとして、その帰趨が注目される。

 いずれにしても、中国がロシアの戦争遂行能力に大きな影響を与える可能性があり、中国がロシアの運命を左右する存在であることは確かだ。