【出演者】
栗山:栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
聞き手:星川幸 キャスター
5人に1人、高齢者は3人に1人が睡眠について悩んでいる
――睡眠について悩んでいる人は多いんでしょうか。
栗山: | はい。厚生労働省の調査によると、日本人の5人に1人が「睡眠で休養がとれていない」、「何らかの不眠症状がある」と回答しています。 特に高齢者の場合は、従来健康な人であっても寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、途中で目覚める回数が増える人が増加します。60歳以上の方では、3人に1人の方が、睡眠の問題で悩んでいるといわれています。 年齢とともに体力が落ち、老眼になり、白髪が増える。それと同じように、睡眠にも加齢性の変化が生じるのは自然なことといわれていますので、日中も元気で過ごすことができていれば、心配は基本的にはありません。ただし、日中の体調不良が長く続くようであれば、治療が必要になる方もいらっしゃいます。 |
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睡眠について誤解している人は多い
――日本人の5人に1人、特に高齢者に、悩んでいる人が多いんですね。睡眠については、誤解というのも多いんですか。
栗山: | 睡眠について誤解している人は、多くいらっしゃいます。そのことが、不眠の原因になっていることもあります。多いのは、“眠くはないけれども、体を休めるために横になる”、“あしたの朝、早く起きる必要があるから早めに寝る”、“睡眠時間は8時間でないといけない”などが代表的な「睡眠の誤解」です。 |
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――えっ、眠くないけど体を休めるためしばらく横になる、とか、あすの朝早く起きるから早く寝る、というのはそのとおりだと思っていたんですけれど、間違ってるんですか。
栗山: | そうなんです。まだ眠いと感じていない状態で寝床に入ると、体が眠る態勢ができていませんので、寝つきが悪くなります。考え事などで脳が活動を続けていても、目が覚めてしまっていてうまく寝つけません。さらに、早く眠りにつくために寝床に早く入るとか、朝も寝床にいることでまた眠れるのかもしれないと期待する、など、寝床で長く過ごす習慣がついてしまうと、それらがさらに眠れない時間を増やして、不眠症状を悪化させていきます。 |
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不眠症状の改善には?
――では、どうすればいいんでしょうか。
栗山: | 眠れないことへの恐怖感から、眠ろうと努力すればするほど、不眠症状はかえって悪化する傾向があります。まず、不適切な睡眠習慣や、対処法を見直すことから始めましょう。 うまく寝つけない場合には、いったん寝床を離れて、緊張をほぐして、眠気が訪れてから寝床に入りなおす方法も効果的です。眠りが不十分であっても決まった時刻に目を覚ますこと、起床することによって、翌日は体が休もうとする力が高まり、眠りが促されます。 不眠症状が続いてしまったら、床の上にいる時間をふだんよりもむしろ短くすることで、眠りが濃縮されて、寝つきや眠りの維持が容易になります。 |
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「何時間寝ないといけない」わけではない?
――私は、睡眠時間は6時間くらいのことが多いんですが、例えばよく言われている8時間とか、何時間寝ないといけないと決まってるわけではないんですか。
栗山: | 睡眠時間には個人差がありますし、日によっても変わります。大人の場合、1日、6~8時間程度が目安とされていますが、多少ここから外れても、日中の不調がなければ問題ありません。 |
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どんな睡眠を心がけるとよい?
――私たちはどんな睡眠を心がけるといいでしょうか。
栗山: | 睡眠時間の長さだけではなく、床の上で過ごす時間の長さ、そして、これに伴う睡眠の休養感、体が休まった感覚、これにも注目していただきたいです。また、世代によって、健康によい睡眠は異なります。 働き盛り世代の方は、仕事や家庭などいろいろ忙しいと思いますが、まず睡眠時間をしっかり確保することが大切です。 他方で、高齢者の方は、長く布団の中に居過ぎることには注意が必要です。定年後は長く眠ろうとする傾向が出てきますが、それがかえって睡眠の質を低下させます。無理に睡眠時間を長くしようとするのではなく、睡眠の質を高めることにも注目してください。 |
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――睡眠の質を高めたいとか、眠りに悩んでいて病院に行く前に、自分でできる対策はありますか。
栗山: | はい。不眠は、ふだんの何気ない行動の中に、睡眠のサイクルを妨げる原因が隠れていることで生じることがあります。生活の中のちょっとした心掛けや、生活習慣の見直しで改善する場合も多くあります。 |
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――その改善法は、次回以降詳しくお伝えします。では、最後にきょうのポイントをお願いします。
栗山: | 不適切な睡眠習慣に、注意しましょう。 |
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【放送】
2022/11/22 マイあさ! 「健康ライフ」 栗山健一さん(国立精神・神経医療研究センター 部長)
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