業務量に見合わない「人件費」の単価 

例えば、武蔵野の森総合スポーツプラザで運営にあたるスタッフの人件費は総額で6億2300万円となっている。

オリンピック会場への派遣スタッフを集めるよう依頼された人材派遣会社がある。

ーー鈴木さんのところにもこういった話が?

ファンファーレ・エージェンシー 鈴木泰和 社長「うちの方にも人を出してほしいという話は来ていました」

だが、それは会場運営を請け負った広告代理店ではなく別の会社からの依頼だったという。

ーー御社に来るまでにだいたい何社ぐらい入っている?

ファンファーレ・エージェンシー 鈴木泰和 社長「6社、6番目かそれ以下じゃないか。オリンピックに関してはベースとなる金額がよくわからない。間に何社入っていて、どのくらい抜いているのかというのはあくまでも予測でしかない」

多くの会場で組織委員会から委託を受けた広告代理店は再委託を繰り返し、必要な数のスタッフを確保することが行われた。関わった会社のすべてが「手数料」を得るため、元の人件費が高額になってしまうというのだ。

電通出身のA氏は・・・。

電通出身 組織委元職員A氏「結局一番下に払う金額を決めておいて、それにその会社に利益を足した合計になる。結果としては個人がもらえるギャランティーと、設定されているギャランティー(人件費)の間には5倍とか6倍にならざるを得ないという仕組み」

報道特集が入手した、会場ごとの人件費などが記された組織委員会の内部資料。委託業者の欄には今回、談合に関わったとされる広告代理店などの名前が並ぶ。

電通出身 組織委元職員A氏「中抜きの証拠であることは間違いない。(内部資料の)金額を見ればわかるように」

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一覧表には、それぞれの役職にかかる人件費の単価が書かれている。例えば「運営統括」の単価は東京スタジアムが日当30万円、国技館が日当18万7000円となっている。

電通出身 組織委元職員A氏「1つの大会にも関わらず、金額がバラバラなんですよね。一番問題なのは多分そこ。組織委員会側にノウハウが全くない。だから結局、委託業者に委託するしかないし、言いなりにならざるを得ない」

番組が新たに入手した、ある会場の運営費の見積書。この会場を担当していたC氏が取材に応じた。

組織委元職員C氏「会場運営をするために業者(広告代理店)からいただいた見積書。あくまで無観客になる前の見積書」

人件費の日当を示す欄には「チーフディレクター:単価12万円」「リーダー:単価10万円」などと書かれている。だが無観客が決定した後も、この単価が変更されることはなかった。

組織委元職員C氏「単価というものは我々が関知できない部分。当然我々としても業務量が少なくなっているので、単価を減らしていただきたいという思いはありつつも、それが既定路線という形で進んでいた。本当にやるせない思い。上司に相談してさらに上につなげていただいたとしても『金額を精査しましょうか』という回答がなかった。我々現場から声を上げても変わらなかった」

人件費の問題はその価格だけではない。組織委員会に社員を出向させた広告代理店に、準備の段階から支払われていたことが新たに分かった。