元東京都職員 鈴木知幸 国士舘大学客員教授「経費について『どういうふうにして委託業務を作っていくか』と言ったら(上司から)『ダメダメ、もう電通1本』独占みたいになっている。交渉がほとんどできない状態。競争入札できる状態ではないから(費用が)言い値になってしまう」

今回事件となった談合では、組織委員会の元次長・森泰夫被告と電通など7社の間で総額437億円の業務を対象に不正な受注調整が行われたとされる。

電通で20年以上勤め、組織委員会の職員だったA氏は、大会をめぐる“いびつな構図”をこう説明する。

電通出身 組織委元職員A氏「(組織委の)森次長の下には何名か部長がいますけど、電通から出向している部長が当然いますので、受注者側(電通)が人を送り込んで、発注者側(組織委)として調整している」

会場運営を受注した電通が発注者側の組織委員会に社員を出向させ、調整を行ったというのだ。

関係者への取材では、組織委員会に出向していた電通社員が社内向けに作成した資料には 「電通の利益を最大化するよう、組織委員会に社員を派遣すべき」という内容が記載されていたという。

電通出身 組織委元職員A氏「電通の利益を最大化にするというのはもちろんあると思うが、特定の会社に会場ごとに委託して本番まで実施させるというスキームを考えたのは(電通社員)だろうし、それを承認したのは森(泰夫被告)だと思う」

さらに契約の形態にも偏りがみられたという。談合があったとされる2018年度から2021年度までに組織委員会が結んだ契約のうち、特命随意契約の件数が競争契約の約1.5倍に及んでいた。

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特命随意契約は、1社のみからの見積額を基準に金額を決めるため、相場より高くなる傾向があるという。

組織委元職員B氏「一般競争契約が基本で、随契が例外。逆なんですよね。組織委員会の場合は競争契約が例外で、随契が基本というような考え。(組織委の上司は)『我々は公益財団法人で、今回は契約の内容とかを公表する義務がありません』と。これは(当時の五輪担当の丸川)大臣が国会で答弁しています」

当時、丸川大臣はこんな答弁をしていた。

丸川珠代 五輪担当大臣(当時)「東京都及び組織委員会が出しておられる経費、チェックを入れるわけですけれども、中には守秘義務がかかっていて、私どもも見せていただけない経費があることをご理解いただければと思います」

組織委元職員B氏「(組織委の上司は)『また過去の長野(五輪)の事例を見ても、会計検査院による検査等々には該当しないので、絶対に外部からの監査の目が入ることがないので大丈夫です』という回答が常にありました」

B氏が契約形態への疑問を上司にぶつけても、 その手法が変更されることはなかったという。

経費がふくらむ“からくり”は、これだけではなかった。会場運営費のほとんどを占める「人件費」だ。