H3ロケットを支えるナット 緩みにくい構造に 坂城の企業が開発、初採用
6日の発射が発表された宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新型主力機H3ロケット1号機には、金属部品加工のヤマザキアクティブ(埴科郡坂城町、山崎忠承社長)が開発した緩みにくいボルトやナットなどが採用されている。衝撃が大きい建機などで使われてきたが、宇宙分野でも初めて採用された。宇宙分野は各国で開発競争が活発化し、市場としても成長が期待されており、同社は関連需要を取り込んで事業の拡大を図りたい考えだ。
採用されたのは、展開する製品シリーズ「アクティブクロス」のボルトやナット、座金(ワッシャー)。固定する部品と接するナットなどの下部(フランジ)がスカート状に広がっているのが特長だ。振動や衝撃があった場合、フランジがたわむことで力を吸収して緩ませないようにした=イラスト。2005年から信州大工学部(長野市)と共同開発するなどし、製品化した。
H3ロケットへの部品採用は、県内最大規模の工業展「諏訪圏工業メッセ」への出展がきっかけという。17年の開催時に、JAXAとH3ロケットを開発する三菱重工業の担当者が会場のヤマザキアクティブのブースを訪れ、商談が始まった。米国規格への変更や、ロケットに応じた固定方法の提案などを重ね、アクティブクロスをH3に納入する契約を18年に三菱重工と結んだ。
ヤマザキアクティブはロケット向けには22年、7500個の製品を納めた。特に振動が激しいという推進系の部分などに採用されているという。
アクティブクロスは現在、バックホーやブルドーザーなどの振動が激しい建機向けを中心に出荷。ラリーカーのドライブシャフトを固定する部分に採用された実績もある。さらに今回、H3ロケットに使われたことで、山崎一樹専務は「高い技術力を持っていることの裏付けにもなる」と力を込める。
宇宙関連は、ロケット以外にも人工衛星や月探査関連の開発などが活発化している。ヤマザキアクティブの22年7月期の売上高は約3億5千万円。山崎専務は「宇宙関連市場にさらにつながることで会社の成長につなげたい」と話した。
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