80歳の高校生 上田市のさくら国際高校を卒業 長年の夢「幸せな自分見つけた」

卒業証書を手に笑顔を浮かべる山本さん

 上田市古里の山本菊子さん(80)が3日、市内の広域通信制高校さくら国際高校を卒業した。登校と自宅学習を組み合わせて3年間学んできた。戦後の貧しさから進学できなかったが、いつか時間とお金ができたら学びたい―との長年の夢をかなえ、迎えた晴れの日。同校で開かれた卒業式で「少女に戻ったような時間を味わい、幸せな自分を見つけました」と語った。

 山本さんは京都府何鹿郡(現綾部市)出身。中学卒業後、すぐ働きに出た。魚屋の下働きや縫製工場などさまざまな仕事を経験し、24歳で結婚。その後も子育てや介護に追われ、学ぶ時間をつくるのは難しかった。上田市には妹が住んでいたこともあり、15年ほど前に移住した。

 70代を迎えても「学問を受けた人の揺るぎない雰囲気に比べ、自分はフラフラしているよう」と感じていた山本さん。「高校への思いを拭わなければ、これから先ずっと暗い気持ちになってしまう」。孫を世話する必要もなくなったため、進学を決意した。

 同高校は見学に訪れた際、明るい雰囲気に引かれて受験。入学した「集中スクーリング型」コースは卒業に75単位以上が必要で、年4回3日間ずつの授業に出席し、リポートを提出する。5教科に加え家庭科や保健などがあり、リポートは年5回、10~20枚ずつ提出を求められた。

 市内のスーパーで早朝に清掃の仕事を続けており、午前9時に勤務を終えてから図書館で勉強。数式を書いた紙を自宅のトイレに貼るといった工夫もした。「決して楽ではないけれど、学ぶってこんなに楽しく、自分を豊かにするのかと感じた」

 同級生は10~20代の10人。教職員や同級生からは「菊ちゃん」と親しまれた。体育の授業でバレーボールなどに取り組んだ際、山本さんは「みんな走るのが速く、私はバタバタとようやく付いていく。それでも嫌みを言う人は誰もいなかった」。共に学んだ仲間に感謝する。

 担任の矮松湧雲(わいまつゆくも)教諭(25)は「勉強への熱意を保ち続けられたのは、真っすぐな人柄があったから」とねぎらう。「(若い同級生に)変な遠慮をせず、すっと入って楽しそうに話していた。こんな年の取り方ができるのはすごい」

 卒業証書を手にした山本さんは「先生たちから愛情をたっぷりもらい、ふくよかな気持ち。これで心はすがすがしく、何の迷いもなく構えられる。やっと一人前になったかな」。たくさんの思い出と感謝を胸に校舎を後にした。

(浜田朝子)