デイリースポーツ評論家・狩野氏(左)の前で4番として飛躍を誓う大山(撮影・西岡正)

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 阪神・大山悠輔内野手(28)がデイリースポーツ評論家・狩野恵輔氏(40)と対談した。岡田新監督から「4番・一塁」での起用を明言されて臨む7年目。主砲は18年ぶりのリーグ優勝へリーダーとしての自覚を明かし、狩野氏はプレーと姿勢で“ミスタータイガース級”の活躍を期待した。さらに鳥谷臨時コーチから学んだこと、勝利打点へのこだわり、一塁守備への意識など考えを語り尽くした。

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 狩野恵輔氏(以下、狩野)「岡田監督が『4番ファーストは大山でいく』と言って、どっしりキャンプを過ごせたかな?」

 大山悠輔(以下、大山)「また違ったプレッシャーというか緊張感はありますけど。自分のことをしっかり考えてやれるので、そこはすごくやりやすい部分ではあります」

 狩野「『今年、何をする?』って聞かれた時に一番考えることは何?」

 大山「自分の一番の持ち味は積極的なスイングだと思うので。そこは配球も考える中で変えたくない部分ではあるので。まずはそこを意識して。と言っても、何でも振るっていうのはよくないので」

 狩野「飛びつくんじゃなくてね」

 大山「その時の自分の状態と相手の配球だったり。キャッチャーによっても変わってくるので。ピッチャーというよりもキャッチャーというのを考えていきたいと思います」

 狩野「そういう中で岡田監督は打点を一番取ってほしいと言っている。ランナーが出た時にどうしていこうかと考えているかな?」

 大山「打点というのは一番こだわっているところなので。打点の引き出しというか、そういうのは多くしたいなとずっと思っていて。ホームランやきれいなヒットで(打点を挙げる)っていうのが一番理想ではあるんですけど難しいことなので。セカンドゴロでも1点は入りますし。犠牲フライだったり、そういった引き出しを持つことで打席での余裕も生まれると思うので」

 -以前、勝利打点にこだわりたいという話があった。いつ頃からこだわりが強くなってきたのか。

 大山「3年目ぐらいからですかね。3年目で4番ってなった時に、そこをこだわってやっていました。数が多ければ多い方がチームが勝ったことになるので。点差は開いた中で打点が悪いというわけではないですけど、ここというところの打点にはこだわりたいです。それがホームランであってもセカンドゴロであっても、その数字にはこだわりたいと思いますね。(チャンスでの)失敗を少なくしたいですね」

 狩野「言い方は悪いけど、100打点どうでもいいところで打つよりは、50打点でいいからここという時に打ちたいよね」

 大山「そうですね。あとは誰も打てない時に打つとかは大事だと思うので。そういう集中力というか。今岡コーチの(2005年の)147打点ってあり得ないじゃないですか。得点圏での集中力だったり、そういうところがすごく大事になってくると思うので。どうでもいいところってないですけど」

 狩野「言い方が難しいよね。悪いわけじゃないけど、できたらいいところで」

 大山「得点圏で仕事ができればなと思っていますね」

 狩野「あんまり打ち過ぎると、佐藤輝選手にめっちゃ負担がかかるやろうなあ。前の人がよう打つとめっちゃ言われるしなあ。(大山は)そういう経験もしているから言いやすいしね」

 大山「普段から接し方というか、そういう時間を大事にして。性格的に気にしなさそうな雰囲気ではあるんですけど。1年目とか結構しんどそうな顔をしていたので。僕が助けられたらと思います」

 狩野「岡田監督から去年の秋季キャンプで打つポイントを変えてみたら?という話があったけど、変えてみてどうかな?」

 大山「秋のキャンプは本当に打球の質が違ってすごく良い感じはあったんですけど、秋のキャンプ(で打ったの)は打撃投手の方のボールのみだったので。真っすぐだけ(を打つ)というところでやっていたので良かったんですけど、実戦が入ってくる中で変化球だったり、ピッチャーのタイミングも違いますし、追い込まれてからも違ってくるので。工夫は必要になりますけど、ポイントを前っていうのを軸に。そこからカウントによって考えていく必要があるのかなと思うので。ポイントは1年間、意識してやっていきたいと思っています」

 狩野「ここ何年間かいろんな経験して引き出しも増えたと思うけど、おととしぐらいからものすごく変わったという中で一番変わったものってなんだったの?配球を読んだとか、構えを変えたとか」

 大山「ある程度、配球を考えるようになりましたし、1打席で見るのではなくて4打席で見たり、3連戦で見たり。考え方も『3打席目にこういう打席にしたいから1打席目はこういうふうにいこうか』とか先のことを考えて、去年一年は少しできたのかなと思います。そういう部分が出塁率やフォアボールの数に表れたのかなと思うので、そこは続けていきたい部分ですね」

 狩野「いつも思うけど、大山選手って守備への意識が高いよね。みんながバッティングって言うけど守備を大切にしているよね」

 大山「そうですね。今年は特にファーストになって(練習の)比率というのはすごく高くしてますね」

 狩野「どうしてもみんな『バッター大山』って見ているけど、『守備の大山』よね。岡田監督ってディフェンス重視で(守備の)優先順位が高いから、その辺はハマるよね」

 大山「そうですね。ノックにしても変わっているので。(今年は外野から内野への送球は)オールカットということで、今までだったらほとんどノーカットで、一塁でも三塁でも外野からの返球に関わることがほとんどなかったんですけど、今年は必ず関わることになるので。その辺でのキレだったり、握り替えもそうですし。緊張感っていうのが自分の中であります」

 狩野「岡田監督ってシンプル?アウトは1つ取りなさいって」

 大山「そうですね」

 狩野「1つ、2つのアウトをパパンって取るんじゃなくて、1つをしっかりと。ゲッツーはめちゃくちゃこだわっているでしょ」

 大山「そうですね。3-6-3(の併殺)。取れるか取れないかってすごく変わってくるので。去年を見てもゲッツー(崩れ)で一塁に走者が残ってホームランで2点取られたり。あと一個(のアウトの必要性)というところがすごく守っていて感じていたので。そこをなんとか取れるようにと思っています」

 狩野「本当みんなに見てもらいたい。バットマンじゃなく、『守備の大山』を。佐藤輝がサードに回って、ショートもだし、セカンドの中野も初めてみたいな感じだし。(守備の)軸やね、完全に。守ってあげないと、捕ってあげないとって気持ちがあるでしょ?」

 大山「ショートバウンドの送球の捕球という部分は一番こだわりたいところなので。ショートバウンドを捕る、捕らないで1年間の失策数って本当に変わりますし。カバーしてもらえるっていう安心感があるだけで、内野手の送球って変わってくると思いますし。流れも良くなると思うので。そこは全部捕る。そこだけはこだわりたいですね。僕がはじいてエラーがつくわけじゃないですけど」

 狩野「自分の中でエラーって思うよね」

 大山「そうですね。捕れなかった僕のエラーというぐらいの気持ちはあるので」

 狩野「さすがやね、相変わらず。普通なら投げたやつのエラーやんけっていうところを。さすが大山選手は全部守ってあげようと。責任を持っているね」

 大山「高いのは捕れませんがショートバウンドは捕れるので。そこは何とかしたいなというのはありますね」

 -ドラフト1位・森下は長距離砲として期待されている。新人時代の自身と似ているのでは。

 大山「全然違いますよ、僕は(指名時の)悲鳴から入ってますから(笑)」

 狩野「大山選手ほどいいやついないけどね。今まで会ったドラ1で一番性格がいいと思う」

 大山「(チームメートになって)そんなに時間がたっていないので本当の性格を理解していないですけど、僕が入った時なんかより全然力はあるので。バッティングを見ても本当にすごいですし」

 狩野「そんなことないって。大山選手もすごかったって。ただ、(育成)計画があったから。3年後にこうしようとか。カネさん(元監督の金本氏)が『大山選手は体を作ってからシーズン後半から使おう』みたいなことを決めていたみたい。和製クリーンアップを見たいよね、ドラ1の。近本選手もドラ1だし。タイガースに上位で入った選手には頑張ってほしいですね」

 大山「そうですね、頑張りたいですね」

 ◆大山 悠輔(おおやま・ゆうすけ)1994年12月19日生まれ、28歳。茨城県出身。181センチ、92キロ。右投げ右打ち。内野手。背番号3。今季推定年俸1億3000万円。つくば秀英から白鷗大を経て、16年度ドラフト1位で阪神入団。プロ1年目の17年6月23日・広島戦(マツダ)でプロ初出場(代打)。

 ◆狩野 恵輔(かのう・けいすけ)1982年12月17日生まれ、40歳。群馬県出身。現役時代は右投げ右打ちの捕手・外野手。前橋工から2000年度ドラフト3位で阪神入団。04年9月22日・広島戦(広島)でプロ初出場(代打)。07年4月20日・巨人戦(甲子園)でプロ初安打がサヨナラ安打。17年現役引退。通算成績は402試合、200安打、18本塁打、91打点、打率.255。18年からデイリースポーツ評論家。