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中小企業の「賃上げしない」宣言 “踏み切らない”のには2つのワケがあった

ITmedia ビジネスオンライン / 2023年2月27日 11時30分

 一般的に中小企業から大企業への転職は給料が上がりますが、その逆は下がる傾向があります。この統計から、45歳以上のビジネスパーソンが中小企業から大企業へ転職するのは難しいことが推定できます。

 また中小企業の社員の中には、優秀でも転職回数が多い人がいます。転職回数が多いと日系大企業の中途採用試験では不利になる傾向が多いので、それだけで弾かれてしまう人もいます。転職が多いというのは中小企業ならではの独特な事情があります。日本は解雇規制が強いので、人材の流動性が低いという言説を主張する人は多いですが、これは大企業での実態であり、中小企業社員には当てはまらないこともあります。仕事で実績を上げていても、経営者の意にそぐわないと「明日から来なくていいよ」と言われることもあるからです。

 もちろん、裁判で争えば不当解雇として勝てますが、弁護士費用も発生します。結論がでるまで時間もかかることから、次の職場を探す人もいるのです。この例は極端かもしれませんが、「残業代が支払われない」「育児休業を取得できない」といった理由により、会社を渡り歩く人がでてくるのです。

 こうした状況を踏まえ、中小企業の経営者の中には、「より条件がいい大企業への転職はしにくいし、かといって条件がいい中小企業に転職できても長く働けるかは社長の意向に左右される可能性が高い。であれば昇給させなくても転職しないであろう」と値踏みする人もいるかもしれません。

●大企業と中小企業の給料格差の是正も必要

 現在の日本では、正規と非正規、男女間の賃金格差が問題として取り上げられています。それに加えて大企業と中小企業の賃金格差も深刻な問題です。諸外国でもこの傾向はあるようですが、米国などでは転職市場が開かれており、ある程度の年齢に達していても大学院への進学などより高い学歴を得られれば、条件のよい企業への門戸も開かれております。

 残念ながら、日本はまだそのような状況にありません。能力は変わらなくても、属している会社の規模だけで収入差がついてしまいます。この格差が固定化すると、働く期間に比例して給与差がどんどん開いていくので中小企業に勤める社員のモチベーションは低下します。

 国が労働市場に介入するのは、資本主義の原理にのっとれば好ましいことではないのでしょうが、大企業に対して中途採用の促進や採用試験における年齢制限の撤廃などを求めることは人材の流動性を高め、経済を発展させるきっかけになるのではないかと期待しています。

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